3月25~26日に開催されているウェアラブルテクノロジのカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo 2014」。ヘッドマウントやスマートウォッチをはじめとした、国内外のウェアラブル業界のキープレーヤーが登壇。最新技術や動向、展望を2日間にわたって語るイベントとなっている。
ウェアラブル端末への注目を高めるきっかけとなった、グーグルのメガネ型端末「Google Glass」。内蔵されているカメラは“自分目線”の映像が撮影できるとして、すでに世界中でさまざまな映像作品に関する試みが行われているという。Google Glassが映し出す映像は、どのような作品になりうるのか。それを検証する実験的な企画が「ウェアラブルは、映画制作を変えるか?」と題したセッションで披露された。
このセッションに参加したのは、博報堂DYメディアパートナーズの上路健介氏、人気ドラマ「踊る大捜査線」などでメガホンを取った映画監督の本広克行氏、劇団「ヨーロッパ企画」主宰の上田誠氏の3人。上路氏がモデレーターとなり、実際にGoogle Glassで撮影された映像作品を視聴しながら、撮影機器としてのGoogle Glassの可能性について議論した。
今回の企画では、上田氏が主宰するヨーロッパ企画の劇団員がGoogle Glassを触りながら映像作品の企画を立案し、“ある女性とデートを楽しみ告白に至るまでの1日”を主人公である男性の目線で映し出すというドキュメンタリー仕立ての作品を制作。最後のシーンには、女性に迫る男性が平手打ちを受けて、飛ばされてしまったGoogle Glassが情けない主人公を映し出すというオチまでつけられ、会場は大きな笑いに包まれた。
作品を見終わった本広氏は「Google Glassを着用していても、女性のリアクションがカメラではなく人に対するものなので、カメラを構えたときには見られない“素の表情”が見られる点が興味深い」と感想を語る。撮影者自身が両手を使える点にも興味を示し、これまでにないドキュメンタリー作品に挑戦できるのではないかと期待を示した。
また、本広氏は映画制作の際に導入する「メイキングカメラ」を引き合いに出し、映画の撮影現場を写すカメラとしてGoogle Glassを活用できるのではないかと提案。「メイキングカメラは、相手に“撮影しています”という意思表示をしっかりしないと嫌われてしまう。そういう意味で、Google Glassは相手に撮影しているという主張をしつつ、その人の“素の表情”に迫れる手段として活用できるのではないか」と語った。カメラの存在を意識させないが、撮影されているという緊張感を与えられる点が撮影機材として興味深いと話す。
一方、映像の制作に関わった上田氏は、視聴者が主人公と同じ目線に立って映像を楽しめる点に関心を示し、「主人公の言動に対する周囲の反応にリアリティがあり面白い。また、普段は気づかないその人だけの視点から発見できることがある」とコメント。演劇の舞台でも、登場人物がGoogle Glassを着用して撮影した映像を映し出すことで、登場人物の視点(主観)と観客の視点(客観)を同時に楽しめるような体験を提供できるのではないかと期待を寄せた。
ただし、制作において長時間撮影した際に生じる発熱や、映像のコマ落ち、バッテリの持ちなどいくつかの課題も見つかったという。また、本広氏は映画制作のセオリーとして、場面に応じたレンズの使い分けや構図の工夫などを例に挙げ、Google Glassは映画制作よりもドキュメンタリー映像の制作に向いていると語った。「ドキュメンタリータッチの映像作品や特定の人物に密着した作品などには向いているだろう。いずれは作品作りに取り入れてみたい」(本広氏)。
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