手書き用途に特化し、既存のユーザーインターフェースを排したユニークな日本発のタブレットとして2013年7月に発売され話題になった「enchantMOON」。ユビキタスエンターテインメント(UEI)は3月14日に、そのアップデート版であるenchantMOON S-IIを発表した。
enchantMOON S-IIのハードウェアは前モデルと全く変わらないが、ソースコードは2カ月半かけてリファクタリングし、処理速度を大幅に向上させているという。手書き入力のレイテンシが、112msから81msになり、ページの遷移やウェブブラウザも高速化されている。なおS-IIは、アポロ計画のサターンロケットの第2段であるSequence IIに由来している。文字通りenchantMOONの2段目の打ち上げというわけだ。
enchantMOON S-IIの価格は、いずれも税込みで16Gバイトモデルが4万9800円、32Gバイトが5万9800円だ。消費税の増税の影響もあるが、既存モデルの3万9800円、4万9800円から値上げして4月に発売される。また既存モデルのユーザーは、このS-IIにプリインストールされている新OSへの無料アップグレードの対象となっている。
既存のenchantMOONについてはすでにレビュー記事も多く出ているが、まだenchantMOONを使用したことのないユーザーとS-IIの改善点に興味があるであろう既存ユーザー向けにアップデート版のS-IIを使用した感想を紹介していく。
enchantMOONは8インチのディスプレイの本体に大型のハンドルが付いているのが大きな特徴だ。また文字入力には専用デジタイザーペンが必要となる。重量が699g、本体寸法がハンドルを伸ばした状態で高さ28.0cm、幅18.0cm、厚みが1.3cmとなる。
製品の電源を入れて操作してみようとしたところ、画面が点いているのかどうかわからない。よく見てみると小さな白い点が幾つか画面に表示されているので起動できているようだと認識できた。早速画面の上に文字を書いてみるが、表示されている文字がとても細く良く見えない。遠目からだと何も書けていないように見える。
しばらく使ってみて、これは液晶の視野角の狭さに起因するものだと分かった。enchantMOONがハンドル付であることと、ペン操作をする手書き端末であるということから、 紙のノートと同じような感覚で本体を机の上に置いて操作をしていたのだが、それでは視野角が画面に対して浅くなってしまうため、表示がほとんど見えなかったのだ。
真上から覗き込むようにしてみると実際にははっきりと線が描かれていたことが分かった。本体に付いているハンドルは机の上に置くのに具合がいいものの、使うときは膝の上において本体を覗き込むように見たり、ハンドルを持って手に抱えたりしながら操作をするのがよさそうだ。
S-IIの発表会でUEI社長の清水氏が、「ユーザーが想定よりも文字の重ね書きをしているケースが多かった(重ね書きをすることによりデータが重くなり、文字認識もしづらくなる)」と語っていたが、デフォルトの筆圧検知設定が弱めなのと、視野角が浅いと線が良く見えないため、文字が見やすくなるように重ね書きをしてしまう人が多くなってしまうのかもしれない。
本体を見やすいように持ち直して、文字をはっきりと見ることができるようになったので、手書きで気ままに文字や線を書いていく。レイテンシはほとんど感じられない。知人がenchantMOONを所有していたので、比較してみたところ、既存モデルでは少しレイテンシが感じられるが、S-IIではほとんど感じられない。
ユビキタスエンターテイメントによるとS-IIの手書き入力のレイテンシは112msから81ms(フラットペンの場合)へ40%ほど高速化されている。また同社の計測によるとGalaxy Note 3では手書き入力のレイテンシは平均118ms、東芝レグザタブレットでは平均95msだったということだ。
既存のモデルでは、全ての手書きデータをベクター形式で保持していたが、新OSでは文字認識の必要がないと判断された手書きデータをラスター形式で保持しているため、処理速度が遅くなっていくことがなく、ページの切り替えもスムーズになっている。
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