日本発タブレット「enchantMoon S-II」レビュー--OSバージョンアップで快適操作に - (page 2)

指とペンで分かれた操作体系が面倒

 enchantMOONの大きな特徴は「No UI」と呼ばれている画面上にメニューもアイコンも何もないユーザーインターフェースだ。コマンドを入力するときは、指で画面の上に丸や四角などの図形を描き、ペンで手書きによりコマンドの単語を入力する。カメラを起動するには、指で丸を描いて、「カメラ」とペンで丸の中に書けばよい。

画面が文字や図形で埋め尽くされていると、コマンド入力のために図形を描くスペースがなくなってしまう。指で描いた図形に線が書かれているので、オブジェクト操作用のメニューが表示されている
画面が文字や図形で埋め尽くされていると、コマンド入力のために図形を描くスペースがなくなってしまう。指で描いた図形に線が書かれているので、オブジェクト操作用のメニューが表示されている

 ペンで図形を描くとそのまま図形として認識されてしまうのでコマンド入力をする場合は、必ず指で図形を描かなければいけない。そのため指で図形を書いたあと、ペンに持ち替える必要があり、面倒に感じる。

 ペンには上下のボタンが付いており、下のボタンを押しながら操作すると「消しゴム」として使え、上のボタンを使ってスクリーンショットを撮れるようになっている。しかし、ペンだけでコマンド入力用の図形を描けるように、こうしたボタンがアサインできると嬉しい。

 またコマンドを入力しようとして描いた図形が文字や描画されている線にかかってしまうと、コマンド入力の代わりに文字や線がオブジェクトとして選択され、そのオブジェクトの操作メニューが表示されてしまう。そのため画面に表示しているページが文字や線で埋め尽くされていると、コマンドの入力がしづらくなるという欠点がある。

 一方でNo UIというコンセプトは面白く、UIを考えることが多い人にとっては使っていて刺激となることも多いだろう。今回の新OSでは、指で描画した図形が自動的に形状補正されるようになっているが、主な改善は高速化が中心であるためUIの機能追加や使い勝手の改善は今後に期待したい。

ブラウザは高速化されているがブラウジングメインの利用は厳しい

Wi-Fi設定画面
Wi-Fi設定画面

 次に高速化されたブラウザを使ってみようと、Wi-Fiの設定をしようとしたところここでまたつまずいてしまう。図形を描いて、「ネット」または「network」と文字を書き込むと、Wi-Fiの設定画面に移動できる。丸い図形として画面の中に浮かんでいるSSIDをタッチし、パスワードを入力する。

 しかしパスワードを入力しても元の画面には戻らない。Wi-Fi設定の画面のままだ。バックするためのコマンドがあるかと探してみても見つからない。指で画面をピンチインしたり、スワイプしたりしてみるがそれでも何も起こらない。やむを得ず、シャットダウンしてから電源を入れなおして使ってみる。

 のちに、画面上を3本の指でスワイプすればいいことが分かった。本体内のヘルプに説明が記載されていたのだが、紙のマニュアルには記載はなく、ブラウジング時に、同じように3本の指でスワイプをすればブラウザを閉じることができるとのみ記載されていた。画面を閉じる操作として3本指でのスワイプが全体的に使われているようだ。この設定だけで随分と時間を費やしてしまう。

 ブラウザを操作してみると、特にストレスがなく普通に操作ができる。ブラウザのページ上で図形を描くだけでその部分がノート上にクリッピングされるのも快感で楽しい。クリップされた図をタッチすれば、またその図があったウェブページに戻ることができる。現モデルのenchantMoonでブラウザの動作を確認してみると、明らかにレスポンスが遅く、描画にもとても時間がかかるが、S-IIでは全く問題なく使用することができる。

 enchantMoonでブラウザを立ち上げるには、文字を記入し、それを指で囲んで表示されるコマンドの中から、「Web」をタップして選択する必要がある。ブラウザを立ち上げるための専用コマンドはデフォルトでは用意されていない。

 そのため通常は文字検索からしかブラウザが起動できない。MoonBlockという本体内蔵のプログラミング用のツールを使えば、シールと呼ばれる任意の図形をタップすることによって特定のウェブページが開かれるようにプログラミングすることは可能である。しかし、単にブラウジングしたいと考えている場合もノートに文字を書く必要があるので、ノートの作成が目的ではない場合でも、ブラウザを利用した後のノートには手書きの文字が残されることになる。

 検索キーワードのログを手書きで残すにはいいかもしれないが、そうでない人にとっては毎回検索の度に不要な書き込みをノートにする必要があるので、ブラウザ立ち上げ用のコマンドも用意して欲しいところだ。

 また文字検索からしかブラウザが起動できないので、ブラウザを閉じてしまうと、前に閲覧していたウェブページには戻れず、次にブラウザを立ち上げたときは別の文字検索の結果の画面が表示されることになる。ウェブページからクリッピングされた図をタップすることでも、その図の元のウェブページに飛ぶことができるが、ブラウジングをメインの目的としてenchantMOONを利用するのは少々厳しい。

情報を消化するためではなく、創造力を高めるためのタブレット

イベントでは、嘉山楓氏がenchantMOONを使って手書きで作成した(スクリーンに投影されている)コンテンツを発表していた
イベントでは、嘉山楓氏がenchantMOONを使って手書きで作成した(スクリーンに投影されている)コンテンツを発表していた

 以上、enchantMOON S-IIを初めてじっくりと使用してみたこともあり、厳しいことも書いているが、手書きをメインの用途として使う端末としては高速化によりストレスがなく快適に利用することができ、他の商品にはない良さを持った端末となっている。

 情報を消化するためのタブレットではなく、創造力を高めるためのツールと考えれば、enchantMOONは他のタブレットにはない魅力を持つを端末と考えられる。自主的なコンテンツ作成、情報作成を促すツールなので教育用途に向いており、簡単なプログラミングの知識がある人には子供用に購入するのも良いかもしれない。また個人的には、Wi-Fiもブラウザ機能も省き、手書きに特化した廉価版があっても面白いかもしれないと感じた。

 まだまだ課題が残る商品ではあるが、今回のアップデートで手書きをメインとして利用したいというユーザーには十分その要望に応えるものになっている。4月のS-IIの発売前に、新OSへの無償アップデートが提供される割安な現行モデルのオンライン・店頭在庫を買い求めるには良いタイミングでもある。

 今後の展開として、次期OSアップデートであるenchantMOON S-IVBを2014年第4四半期に、次期ハードウェアであるenchantMOON MkIIを2015年に発表をすることを目指しているとのこと。一方でもう少し今後の改善を望む人は、そこでの改善を期待しながら待つのも良いかもしれない。

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