基地局を連携させて電波干渉を抑制-ソフトバンクがデモを披露

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 ソフトバンクモバイルは3月13日、次世代のネットワークである「LTE-Advanced」を対象とした、「ネットワーク連携三次元空間セル構成」の実証実験の様子を公開した。この技術は、三次元空間に配置された複数の基地局をネットワークで連携することで、基地局のセル間の干渉を抑えるもの。

 今回の研究の背景について、同社の研究本部 本部長である藤井輝也氏は「東京で五輪が開催される2020年頃には、通信量は現在の200倍以上になる」と話す。そうした状況に対処するには、LTE-Advancedなど新しい通信方式の導入や周波数帯の追加だけでなく、極小のセルを高密度に配置するための技術開発が必要になると説明する。

 携帯キャリア各社は現在、スマートフォンの普及により増大するトラフィックを対処するため、広範囲をカバーするマクロセル基地局に加えて、利用者の多い場所や建物の中など狭い範囲をカバーする、小型の極小セル基地局の設置を急いでいる。ただ、極小セルを増やすことで基地局の配置が非正則となり、三次元空間においてマクロセルと極小セル、あるいは極小セル同士が電波干渉を起こすようになってきているという。

  • ソフトバンクモバイル研究本部 本部長の藤井輝也氏

  • 2020年には、トラフィックが2013年の200倍にも達することから、それに対応するための新たなセル構成技術が必要とされている

  • 三次元空間セル構成では、セル間の干渉が大きな問題となってくる

 そうした複雑なセル配置においても、干渉を抑えて速度の低下を防ぐには、基地局単体で対処するには限界がある。そこでソフトバンクモバイルでは、基地局同士をネットワークで連携させて制御する「ネットワーク連携干渉技術」を開発してこれに対処すると藤井氏は説明する。

電波干渉を抑えるさまざまな新技術

 ソフトバンクモバイルの研究本部 無線アクセス制御研究科 課長である長手厚史氏によると、ネットワーク連携干渉技術では大きく分けて、マクロセルと極小セル間、そして極小セル同士とで、それぞれ干渉を抑える仕組みを設けているという。

 マクロセルと極小セル間では、まずLTE-Advancedの要素技術である干渉軽減技術「eICIC(enhanced Inter-Cell Interference Coordination)」を用いて、周波数を時間軸に分割。これをネットワークで連携したマクロセルと極小セルによって共用する「ネットワーク連携eICIC」を用いることで、干渉を抑えるという。

 この際、データチャネルなど送信を停止するABS(Almost Blank Subframe)パターンを、ネットワーク経由で集中管理し、トラフィックに応じて動的に変えることが重要だと長手氏は話す。通常より短い間隔で変更しながらトラフィックを制限できることが、同社の技術の大きな特徴となっているとのことだ。

 また極小セル内でマクロセルからの強い電波を受けて干渉を起こしている場合は、端末側でマクロセルの干渉信号を複製し、受信した信号からマクロセルの信号を取り除く「連携セル間干渉キャンセラ」を用いることで、干渉を抑えるとしている。こうした場合は電波の強いマクロセルにハンドオーバーするのが一般的だが、この技術を用いることで可能な限りユーザーを極小セルに配置し、マクロセルにトラフィックが集中することを避ける狙いがあるのだという。

 一方、極小セル同士の干渉対策としては、eICICを用いてセル間の干渉を抑えるのに加え、ネットワーク連携により基地局の電波を射出する方向を変える「ビームフォーミング技術」を活用する。これにより各基地局に接続している端末同士のスループットを維持しつつ、干渉を抑えることができるのだそうだ。

  • ソフトバンクモバイル研究本部 無線アクセス制御研究科 課長の長手厚史氏

  • 「ネットワーク連携eICIC」によってABSパターンを動的に変更し、セル境界でも干渉の影響を抑える

  • 極小セル間では、ネットワーク連携で干渉のある基地局のビーム方向を制御し、干渉を抑える

 しかし、eICICをはじめとして、各セルをネットワークで連携して集中制御し、干渉を抑えるには同期の精度を高めることが求められる。そこでソフトバンクモバイル研究本部 モビリティネットワーク研究課 課長の岡廻隆生氏によって、同期に関する技術が語られた。

 基地局間の同期には2つの方法を用いていると岡廻氏は話す。1つはGPSの電波を受信し、その時間情報を各基地局を制御するパケットに乗せることで同期をとる「GPS・タイムスタンプ方式」。ただこの方法では、GPSの電波を受信できる屋外基地局でしか同期がとれない。そこで屋内の極小セルなどでは、屋外のマクロ基地局から送られるダウンリンク信号に、同期信号を含めることで同期をとる「リスニング方式」を用いているという。これらの方式を取り入れることで、1マイクロ秒以下という高い同期精度を実現しているとのことだ。

  • ソフトバンクモバイル研究本部 モビリティネットワーク研究課 課長の岡廻隆生氏

  • GPSの電波が届かない屋内の基地局は、屋外のマクロ基地局からのダウンリンク信号を用いて同期する「リスニング方式」を採用

  • 1マイクロ秒以下の高精度な同期を実現したことで、ネットワーク連携eICICなどの技術活用が可能になった

屋内外の実証実験を披露

 同日は、屋内の実証実験用の設備で、同期技術や干渉低減技術のデモが披露され、ネットワーク連携eICICや連携セル間干渉キャンセラ、ビームフォーミングによる干渉低減の効果を確認することができた。さらに東京・お台場周辺に設置された実験設備を用いた、屋外での実証実験の様子も公開。屋外でもネットワーク連携eICICによって動的にABSパターンを変更し、基地局間の干渉を低減できることを証明していた。

 ちなみに今回の研究の一部は、総務省委託研究「屋外マクロセルと屋内極小セルが混在した三次元空間セル構成におけるネットワーク連携干渉制御技術の研究開発」の助成により実施されているとのこと。今後もLTE-Advancedの導入に向け、実用化に向けた実験を進めていくとしている。

  • 屋内での三次元セル構成の実証実験に用いられている機器

  • ネットワーク連携eICICの検証。セル端まで移動しても赤のグラフは安定した速度を実現しているのが分かる

  • 動的なABSパターンの変更実験。指定したパターンに瞬時に変更できるのを確認できた

  • 屋外でのフィールド実験構成図。お台場周辺にマクロセルと極小セルの基地局を設置し、車に乗せた移動機でそのエリアを走ることで、ネットワーク連携eICICを検証する

  • 移動機を乗せた車の様子。速度などが確認できる

  • 50:50のABSパターンによるネットワーク連携eICICの検証。オレンジ色のスループットを示すグラフが、干渉がある場合とない場合の中間に位置しているのが分かる

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