「データで透明化する医療」がグランプリ--データジャーナリズム・ハッカソン

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  • ハッカソンはアイデアソンから約1週間後に開催というタイトなスケジュ-ル

  • 8チームがでそれぞれのテーマにそって開発に取り組んだ

 朝日新聞主催によるデータジャーナリズム・ハッカソンが開催され、3月1、2日にかけて開発作業と成果発表が行われた。2月20日に開催された「データジャーナリズム・アイデアソン」を元に、8つのグループが災害、医療、少子高齢化、スポーツなど8つのテーマで開発に取り組み、それぞれの課題を提案した朝日新聞の記者たち11名を含む計74名が作業に参加した。

 アイデアソンから作業まで約1週間、実作業も12時間というかなり限られた時間内で、どれだけの内容が発表できるかは、主催者にとってもチャレンジだったであろう。最終発表のプレゼンテーションは、各チーム5分という短い時間内で行なわれたが、その内容はかなりバラつきがあったように見えた。それは、データジャーナリズムに明確な定義がないことや、テーマによって元になるデータの扱いやすさが異なる点も影響しているだろう。また、データジャーナリズムというより、オープンデータを利用したアプリやサービス開発ではないかと思えるものもあったが、今回は初めての開催ということもあり、そうした内容も含めることにしたようだ。

  • 少子高齢化をテーマにしたチームは、人口の変異データの可視化というオーソドックスな手法を他のデータでも応用できるようにするといった工夫をしていた

  • 開発したアプリの画面を審査員に直接見せるなど、プレゼンを工夫しているチームも多かった

 たとえば、「少子高齢化」をテーマにした「限界ニッポン」という作品は、すでに見慣れている地域別の人口変化をヒートマップにして表現している。それだけであれば動的なインフォグラフィックスにすぎないが、人口以外のデータも使えるテンプレートにもなっており、さらに、人口に関連する記事についてアンケートを実施できるツールにもなっていた。

 「開発途上国」をテーマにしたチームは、自撮りした写真から自分と似た人たちを世界から探し出せるアプリを使い、世界へより関心をもってもらうきかっけにするというアイデアを発表。同じく「防災」をテーマにしたチームもアプリを成果物として発表しており、平時は子どもがカードゲームを楽しみながら災害について学べるアプリを提案。非常時は気象警報を発信し、大人や離れた所に住む祖父母らにも避難の大切さを発信してもらおうという内容で、メディアラボ賞を受賞した。

  • グランプリを受賞した「データで透明化する医療」

  • 「データで透明化する医療」はアイデアから発表まで完成度が高く、会場の拍手の多さで決まるアプローズ賞にも選ばれていた

  • 審査は、Googleのシニアエンジニアリングマネジャーでさまざまなハッカソンの運営に関わっている及川卓也氏ら6名で行った。今回の開催は実験的なものであり、ジャーナリズムの次の可能性を拡げる機会になったのではないかといったコメントが寄せられた

 凖グランプリに選ばれた「報道空白域を探せ!」は、地域発信のニュース不足などを可視化し、SNSとの連携で補完していくという内容であった。グランプリに選ばれた「データで透明化する医療」は、脳卒中の治療とリハビリにかかる日数をランキングで可視化し、最寄りの病院も探せる、デザインや仕組みでも完成度の高いものになっていた。このチームはアイデアソンの段階から、公開されているが探しにくく、わかりにくいと指摘されている医療データをビジュアライズし、病院選択の参考にしてもらうおうという、目的もストーリーも明確なものであった。また、ランキング上位の病院にインタビューしたところ、数年前から脳卒中ケアユニットを導入していた事実をつかむなど、本来の取材活動にも結びつくものであった。

 審査は、東北大学大学院情報科学研究科教授の乾健太郎氏をはじめ、Googleのシニアエンジニアリングマネジャーでさまざまなハッカソンの運営に関わっている及川卓也氏ら、計6名によって行われた。講評では、全体にクオリティが高かったため評価がわかれ、審査に時間がかかったようだ。

 政治情報サイトのポリタスのエンジニアである立薗理彦氏は「純粋にジャーナリズムの視点で考えれば、アプリやゲームは邪道ではないかのとの声があるかもしれないが、そうした枠組みを超えるのがこれからのデータジャーナリズムなのかもしれない」とコメント。見せ方はエクストリームにし、アプリとして実際に完成できればもっとおもしろくなるだろうと、開発に取り組んだチームを励ました。

  • グランプリに選ばれた「データで透明化する医療」

  • 全員で記念撮影

 また、インフォメーション・デザイナーでインフォグラフィックスなどの情報を発信するビジュアルシンキングを運営する櫻田潤氏も、「記者が集めたデータだけでなく、ユーザーが自分の視点で集めたデータを扱えるという提案は、今後の可能性を拡げるだろう」とコメントしている。及川氏も、今回の開催はデータジャーナリズムの実験であり、こんなデータがオープンであればもっと新しいことができる、といった意見を出してほしいと参加者へメッセージを送った。

 コミュニケーション・ディレクターでブロガーでもある佐藤尚之氏からは、最終成果物を発表するハッカソンとは異なるので、もう少しプレゼンの時間を長くし、ストーリーを紹介できればよかったのではないかとの意見が出た。乾氏からも、今後は記者と編集者と専門家のコラボが重要で、今回のようなイベントで出会うだけでなく、日頃からの関係作りが必要ではないかと提案。

 審査員長を務めた朝日新聞社デジタル編集長の高田圭子氏からは、今回の経験を次回につなげ、データジャーナリズムの発展に貢献したいとしている。大手メディアが率先して取り組みを続けることで、日本から新しいアイデアが次々と発信されるような環境ができることを期待したい。

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