目指すはドリームキャストの夢の続きとマニアの理想郷--セガ竹崎氏に聞く「it-tells」 - (page 3)

数ではなく熱量あるユーザーと、マニアックな知識が凝縮されることが重要

--かつてセガでは、SEGA LINKiAというコミュニケーションサービスを立ち上げたこともありましたが、軌道にのらないまま閉じてしまった印象があります。

 それはit-tellsの企画を社内にプレゼンして回った際にもたくさんの方から指摘されました。ただ、僕が言えることとしては、僕がやる限りは違うものである。そこを信じてほしいと。ちなみに、一般的にSNSというと集めた人の数の勝負になりがちです。もちろんそれ自体を否定するつもりはないのですが、「集めた人の数」と「熱意ある人の数」は違うと考えています。

 たとえ話ですけど、ゲームを買おうと思ってゲーム専門店にくる人に「こんなゲームありますよ」と勧めるのと、ショッピングモールにふらっと来ている人に対してゲームを勧めるのは、全然違うことだと思います。ゲームを買う目的でゲーム専門店に来ている人に対して、ゲームをどうぞと言える環境を作りたいんです。ゲームでもアニメでもラーメンでも専門店に来る方同士だと、お話してて楽しいですよね。専門店というのは、決してお客様の数で勝負するものではない。熱意あるファンをどれだけ持っているかが勝負なんだと、それがit-tellsの根本的な思想であり、差別化のポイントです。

--it-tellsの概要を見たとき、かつてインターネット黎明(れいめい)期に、セガBBSを設置していたことを思い出しました。時期によっては他社ゲームハードやタイトルの話題も可能だったという珍しい運用をしてましたけど、熱量は高かった記憶があります。

 そういう意見もたくさんいただきましたし、社内でも「もしかして、もう一度セガBBSをやろうとしてるの?」と言われました(笑)。セガBBSをやっていたころは、ヤフーかセガぐらいしかBBSを持っていなかった状態で、必然的にそこには人は集まるし、荒れることやけんかもありましたけど、熱量がある人が言い合う感じが楽しかったですね。でもネット上の交流が一般化して場所もツールも増えていくにしたがって、あちこちに語る場所が拡散してしまっています。

 セガってもともと僕みたいなファンというか、マニアがいっぱいいる歴史がある会社じゃないですか。そんな会社が旗振り役になって、世の中のマニアという人たちが集まってくれば、とても面白いサイトになるし、そこに入り浸るのは楽しいと思うんです。

 今はセガマニアのみんなも、それぞれバラバラなところで自分の想いを発信しています。そんな中、セガマニアの方にもう一度ここに集まってよって旗を立てることでみんなが集まることができたら、薄まっている情報が凝縮され、もっと大きなパワーになる。それが実現するかどうかはわからないですし、簡単だとは思わないですけど、僕は旗を立てたいんです。たとえでセガマニアにしましたけど、アイドルの推しメンでもなんでもいいです。「○○が好きな人集まれ」って集まることができると、ネット上にあるいろんな知識や面白い人が集まって面白い場になる。こういう状況になるのが僕のit-tellsにおける成功イメージです。

it-tells内の竹崎氏のページ(クローズドベータテスト時のもの)
it-tells内の竹崎氏のページ。カバー画像には竹崎氏所有のメガドライブソフトがずらり(クローズドベータテスト時のもの)

--数ではなく、サイトとしての熱量が大事であるということですね。

 結局ウェブサイト自体は機能でしかありません。でもそこに何を集めたいのかが思想であって、それを実現するためにどうすればいいのかが大事なことだととらえています。

 ベータ版では最低限の機能しか実装していませんが、今後は特に集合知とかマニアの熱量をためやすいシステムに改良していきたいです。ある意味オタクウィキペディアみたいなイメージでもいいんです。攻略でも知識でもバラバラになっているものを集めて、ここが一番マニアックですと誇りを持って言えるようにしたい。そうなると利用する人にも喜んでいただけると思います。それが理想ですね。

 簡単な道のりではないと思っていますが、大事なのは「何がしたいか」なんです。運営をしている人間が何をしたくて運営するかが大事。僕が話しているのは、確かに妄想や理想論に近いです。その妄想のなかでもやりたいことを強い意思を持ってやっていかないと、場当たり的にやろうとするとその時点で崩れてしまうはずです。理想に向けて何をすべきかをぶれずにやっていくことがすごく大切だと思っています。

--熱量の維持となるマニアックなコンテンツを、旗振りだけで待っているだけではなく、どのように用意するかも大事なように思います。

 確かに黙っていても集まらないと思うので、あえてこちら側から探しにいってマニアックなネタを公式で投下していくこともやりたいと考えています。たとえばレトロゲーマーがマイコンBASICマガジンを読んでいて楽しかった記事というのは、いつまでも残しておくべきだと思いますし。大事なのはウェブ上に歴史観や知識がちゃんとアーカイブしていくことです。散らばっている宝石をit-tellsに集めていきたいと考えています。

 状況が落ち着いてきたら、普段見ているサイトで面白いことを書いている方に、it-tellsでも書いてほしいとお願いしたいと考えています。ゲームに限らず、この知識だったら誰にも負けないというぐらいの第一人者が語り続ける内容ってわくわくすると思うんです。それは、メガドライブが好きすぎて「自分がもっと売ってやる」と思っていた昔の僕と同じ気持ちですね。

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