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デジタル発の“ディズニー”になるか--「Angry Birds」のRovioが目指すエンタメ企業の姿

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 スマートフォンの登場によりゲーム業界は大きく変わった。開発者が参入する敷居が低くなり、モバイルゲームというカテゴリがすっかり定着した。この状況に対して「iPhoneがなければ、我々の成功はなかった」と臆さずに認めるのが大ヒットゲーム「Angry Birds」の開発会社Rovio Entertainment(Rovio)だ。

 一方でトレンドの移り変わりは早く、モバイルゲームの代名詞だったAngry Birdsも激しい競争にさらされている。この点について同社は「我々はゲームではなく、エンターテイメント企業を目指している」と説明する。1月末、フィンランドにあるRovio本社でゲーム担当上級バイスプレジデントのJami Laes氏に、その言葉の真意を聞いた。


Rovio ゲーム担当上級バイスプレジデントのJami Laes氏。「Angry Birds」に出てくるパチンコを模した椅子に座っている

売上の約半数が「ゲーム」以外

 Rovioのオフィスは、フィンランドの首都ヘルシンキから車で15分のエスポー市にある。エスポーといえばNokiaの本拠地として有名だが、Rovioのあるオタニエミ地区はそこからすぐのところにあり、ヘルシンキ工科大学があることから、Nokiaが絶頂を極める以前からベンチャーが集まる地区として知られている。

 Rovioは2005年に創業、2009年末に最初のAngry Birdsをリリースした。それ以来、社員は急増しており、現在800人いる社員のうち95%がこのオフィスで勤務する。フィンランドにはタンペレにゲームスタジオがあり、フィンランド以外では隣国スウェーデン、中国上海、韓国、英国、米国、そして日本にオフィスを持つ。

 本社のあるオフィスビルは他のベンチャーとスペースを分け合うが、入ってすぐに「ショールーム」として、Angry Birdsなどのキャラクタ商品や本を展示したスペースが目に入ってくる。Rovioは2011年に発売したぬいぐるみを契機に、ゲーム以外の事業を拡大させており、2012年には売上高の45%を占めるに至っている。

  • フィンランドのRovio本社

  • Rovioのショールーム

  • ゲーム事業以外が売上げの45%を占める

 なお、同社が公開している最新の財務データでは、2012年の売上高は1億5220万ユーロ、営業利益は7680万ユーロにのぼっており、2011年の売上高7540万ユーロ、営業利益4800万ユーロから大幅に増加している。ちなみにAngry Birdsは全プラットフォームの累計ダウンロード数が20億回を超える大ヒットゲームだが、Rovioにとって実は52作目のゲームである。

100年後も愛されるエンタメ企業へ

――ゲーム企業ではなくエンターテインメント企業を標榜している。Rovioが目指すエンターテインメント企業とは。

 2009年12月にリリースした「Angry Birds」という小さなゲームが、現在の我々の土台だ。それ以来、少しずつ拡大してきた。Angry Birdsが大ヒットした時、単に(52作目のAngry Birdsに続く)53作目、54作目とゲームのリリースにフォーカスするのではなく、ゲームが生み出したブランド、ストーリー、キャラクタをゲームの外の世界に持ち出す、他の媒体に拡大するという方向性を定めた。Angry Birdsはゲーム界のブランドになったが、エンターテインメント業界のブランドになるチャンスだと思ったからだ。

 エンターテインメント、ビデオ、おもちゃ、映画、コンシューマ製品、物理的なアクティビティパークなど、人々が物理とデジタルの両方の世界でストーリーやキャラクタを楽しむことができないか、ゲームにとどまらず持ち歩いたり見ることができないか。その方向性を元に、社内で組織を立ち上げ、キャラクタをさまざまな形状、媒体に取り出している。我々の強みは、キャラクタを通じて物語を伝えること。100日ではなく100年単位の息の長い企業を目指している。


「Angry Birds Rio」のプレイイメージ

――ゲーム以外の事業はぬいぐるみからスタートした。売上げの45%を占めているとのことだが、他にどのような製品があるのか。

 キャラクタライセンスではぬいぐるみのほか、Hasbroとパズルや玩具でコラボレーションした。文具、洋服、香水もあるし、キャンディや飲料が販売されている国もある。また、卵料理やお菓子などの料理本も出ている。

 NASA(米航空宇宙局)やNational Geographicと提携して自然や宇宙など教育的な本も作成している。フィンランドの公共教育のレベルの高さは世界的に知られているが、これに基づいた教育コンテンツをヘルシンキ大学などと共同開発し「Angry Birds Playground」として展開している。教育は特に中国から高い関心を得ている。

  • 自然や宇宙などの教育本も製作

 中国、そしてブラジルではショッピングモールをオープンした。アクティビティパークは中国と英国にあり、NASAのケネディ宇宙センターにAngry Birds Spaceをもうけた。このように、(Angry Birdsのゲームに出てくるキャラクタ)バードやピギーは小さなモバイルの画面から物理世界のさまざまな領域に飛び出している。

――ディズニーを目指しているのか。

 ある意味ではそういえる。ディズニーは長期にわたって続くブランドを構築したという点ですばらしい企業だし、尊敬している。世界に愛されるブランドとキャラクタの構築、そして維持という点では見習うべきことは多い。一方で、我々はディズニーよりももっと広いと思っている。ディズニーは1928年に創業した20世紀の企業だが、我々は21世紀に生まれた企業。デジタルプラットフォームからスタートしたという点も異なる。

――中核はやはりゲームになると考えているのか。

 ゲームはRovioのスタートであり中核。ストーリーを伝えて、キャラクタを生む場所だ。エンターテインメント企業として事業が多角化したが、ゲームは我々の真髄。これは今後も変わらないだろう。

――ゲームは盛衰が激しく、フィンランドだけでも「Clash of Clans」を提供するSupercellがいるなど競争が熾烈だ。Angry Birdsで得た勢いをどのように維持するのか。

 モバイルゲーム市場は大きく、複数の企業が展開できる規模は十分にあると思っている。Angry Birdsの勢いを維持するために、バランスのあるポートフォリオを展開していく。それは、新しいものと慣れ親しんだもののミックスだ。

 ロイヤリティの高い既存のファンには頻繁にアップデートすることで新しくより良い体験を提供する。ストーリーを継続して深めていったり、新しいコンテンツを作成したりする。その例が2013年3月にスタートした「Angry Birds Toons」だ。TV番組とアプリ内配信の形式をとり、バードとピギーの物語を明かしていくもので、3月まで展開する予定だ。

 まったく新しいものとしては、「Angry Birds Go!」を2013年末にリリースした。これまでのゲームプレイパターンとは異なり、3Dのダウンヒルレースゲームだ。ビジネスモデルも工夫し、無料で公開した。将来的には、Angry Birdsのバードとピギーの世界とは異なる全く新しい体験も提供していきたい。

「Angry Birds Go!」

――Angry Birds以外のゲームでは「Amazing Alex」を2012年7月にリリースしている。経過を教えてほしい。

 Facebookのファンは20万人に達しており、独自のファンがついている。もちろん、Angry BirdsのFacebookファン数(2500万人)とは比較できないが。

――RovioというとAngry Birdsのイメージが強い。Angry Birdsの次のヒット作を生むために、ユーザーのマインドセットをどうやって変えていくのか。

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