テレビ事業の分社化とPC事業の売却--ソニーの決断を読む - (page 2)

 売却先となるのは、日本産業パートナーズ。3月末までに正式契約し、7月1日をめどに実行。日本産業パートナーズは新会社を設立して、ソニーのPC事業を引き継ぐことになる。VAIOブランドは新会社に移行することから、たぶん新会社には「VAIO」の名前がつくことになるのだろう。

 新会社は、ソニーでVAIO事業を担当するVAIO&Mobile事業本部本部長の赤羽良介氏が中心となり経営を担当。約1100人のVAIO事業部のうち、250~300人が新会社へ移行する。

 現在ソニーのPC事業の拠点である、長野県安曇野市の長野テクノロジーサイトを拠点に独立した事業会社として設立。VAIOブランドのPC事業の企画、設計、開発から製造、販売などに至る事業全体を運営する。設立当初は、商品構成を見直した上で日本を中心に個人向けと法人向けのPCを適切な販路を通じて販売することになるとしている。

 立ち上げと円滑な事業移行をサポートするため、設立当初はソニーから5%出資する。事業の売却金額などは、3月末までの正式契約の中で決定することになりそうである。

事業売却がプラスになる可能性も

 問題は、VAIOがかつての輝きを取り戻せるのかどうかという点だ。しかし、それには気になる点がいくつかある。

 ひとつは、自由闊達なソニーの社風を維持したまま、VAIO事業が存続できるのかという点だ。

 もちろん、新会社はVAIO事業部の人員で形成される。だが、日本産業パートナーズは投資ファンドであり、永続的にVAIO事業を持ち続けるということは考えにくい。次に売却しやすい形へと会社の姿を変える可能性は高いと言っていいだろう。輝いたVAIOの復活に、それがプラスと出るのかマイナスとなって表れるのかは気になるところだ。

 もうひとつは、事業規模を追わない体制がVAIOらしい製品創出にどう影響するかだ。


 ガートナージャパンによると、ソニーは2011年に829万台の年間出荷を記録していた。2013年も602万台の事業規模だ。だが、今後、新会社では日本市場をターゲットにするため事業規模は一気に縮小することになる。

 2013年の日本国内でのソニーの出荷台数は約76万台。ピーク時の11分の1程度にまで事業が縮小する。ざっくりと言えば、パナソニックのLet's noteの事業規模と同等といっていいだろう。その規模では、大量購入を背景にした調達メリットは打ち出せず、付加価値路線を追求するしか方法はなくなる。

 むしろ、これはVAIOの特徴を生かしやすい環境に追い込まれると言っていいだろう。新興国市場を中心にして低価格路線を追求し、これがPC事業の収益性を悪化させた元凶であったことを考えると、ここまで事業を縮小するという判断は、プラスに働くものと想定される。

 いずれにしろ、これからどんなVAIOに生まれ変わるのか。その変化は前向きにとらえたい。

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