東レとNTTは1月30日、着衣するだけで心拍数や心電波形といった生体情報を取得できる機能素材「hitoe」を開発し、量産化に成功したと発表した。またNTTドコモは2014年中を目途として、hitoeを用いた生体測定用ウェアと、スマートフォンなどを活用したサービスを提供するとしている。
hitoeは「PEDOT-PSS」という導電性高分子を用いて繊維を導電化するNTTの技術を用い、東レが開発した700nmという細さのナノファイバーに導電性高分子を浸透させることで実現したもの。
東レのテキスタイル・機能資材開発センター所長である桑原厚司氏によると、hitoeは「材料的な特徴と、ウェアとしての特徴の2つを融合し、自然な感覚で着用できるのが大きな特徴」と説明する。通常の加工と比べ導電性高分子が取れにくいことから、耐久性も高いという。具体的には洗濯機で30回、手洗いであれば50回くらい洗っても性能は維持できるとしている。
またhitoeは、高い着用性を実現している点にも特徴がある。人の肌に密着する導電性素材は、一般的に硬く伸縮性がないため、ずれてしまったり、肌を強く締め付けてしまったりすることも多い。だがhitoeはナノファイバーを用いたことで、肌に密着しやすく伸縮性も生まれ、電極の位置がずれることなく信号をしっかり検出できるという。
そうしたhitoeの特徴を活かして作られたのが「生体情報測定用ウェア」である。これは生体インターフェースとなるhitoeを服の裏側に貼り付け、さらにシルバーを織り込んだ糸で配線することにより、着ているだけで心拍数や心電情報などを計測できるもの。実際に計測するには、ウェアに専用の小型端末を取り付ける必要があり、この端末と、スマートフォンをBluetoothで接続することで、心電波形などをリアルタイムに確認できるようになる。
NTT先端技術総合研究所 所長の村瀬淳氏は、hitoeの特徴をフルに活かしたウェアを開発する上では、保湿性を保ちつつ発汗による配線のショートを防ぐという矛盾する要素を実現する必要があったと話している。他にもノイズの影響を抑えるよう生体インターフェースを配置することや、専用端末の着脱が簡単なコネクタの装備などが、開発する上では求められたとのことだ。
生体測定用ウェアを用いた事業展開は2014年中を目指す。NTTドコモの執行役員 ライフサポートビジネス推進部長である中山俊樹氏は、「特にサービスを検討しているのはスポーツの分野。スポーツに応じて適切な心拍運動量があるが、hitoeを使えば従来より一層こまめなデータ測定が可能となるので、データに基づいたアドバイスもしやすくなるのでは」と話している。
中山氏によると、NTTドコモでは既にフィットネス事業者やスポーツメーカーなどと事業化に向けた話をしているほか、介護など医療の分野への導入に向けた検討も進めているとのこと。BtoBだけでなく、オムロンとの合弁会社であるドコモ・ヘルスケアの健康管理プラットフォーム「WM(わたしムーヴ)」との連携などにより、BtoCに向けた取り組みも進めていくとのことだ。
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