放送現場で生まれた技術を広く一般に紹介する「第43回NHK番組技術展」(番組技術展)が1月26~28日の3日間、東京・渋谷のNHK放送センターで開催された。
番組技術展は、日々の番組制作を行う現場が必要に応じて独自開発したアイディア機器やノウハウを一堂に集める展示会。今回は全国NHK放送局から27の出展があり、高い評価を受けた内容については賞が贈られる。
優秀賞を受賞した「カメラ構図自動調整システム」(新潟放送局)は、地域の報道室から記者が出演して情報を伝える顔出しリポートをワンマンで運用できるシステム。ローカル局の地域報道室は通常1~2人しか配置されておらず、顔出しリポートをする際は出演する記者自らがカメラの構図を調整しなければならないことが多い。
今回開発されたシステムは、顔認識と雲台制御技術を用いて基本ショットを自動調整できるようにしたもの。作業の省力化と迅速化を実現していること、簡単なユーザーインターフェース(UI)で誰にでも使いやすく仕上げていることなどが評価されたようだ。
緊急災害対策や減災の視点から評価されたのが、アイディア賞に選出された「映像から発災位置推定&時空間マッピング」(仙台放送局・福島放送局)。「移動しながら撮影」した「移動する被写体」の位置と速度をピンポイントで特定できるアルゴリズムを開発し、システム化したものだ。
具体的には、移動中のヘリから津波を撮影している際、ヘリの位置とカメラの角度などから被写体である津波の最新状況を地図情報とリアルタイムにリンクさせ、より正確に状況が把握できるようになる。これにより、放送局はより詳細な情報を地域住民に提供できるほか、映像のないラジオにおいても細かい情報伝達が可能となる。
同じくアイディア賞の「三脚アタッチメント『ぐるピタ』」は、生中継のロケ散歩番組などで活用が期待できる機器。カメラマンがカメラを肩にかついだ状態で出演者と一緒に動き回る番組(ワンカメ中継)では、常に臨場感のある映像が送れる反面、風景撮影を差し込む際などに安定した映像で被写体をとらえるのが難しい。
「ぐるピタ」はカメラを肩に担いだままで三脚に固定、着脱可能なアタッチメントで、自由な動きと安定した撮影を生放送中でもシームレスに切り替えられる。三脚との接合部分は円錐状にするなど、カメラマンが下を見なくても固定、着脱ができる点も評価を受けた。
ここで紹介していない展示も含め、ほとんどの展示内容は普通にテレビ番組を見ている分には気が付かないであろうものばかり。もちろん、視聴者が知らずとも困ることはない内容だが、こうした「画面に映らない放送制作側の努力」に触れてみることで、これまでとは違ったテレビ放送の見方ができるようになるかもしれない。
入場無料なので、ご興味のある方はぜひ次回のイベントに足を運んでみてほしい。
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