高橋氏によると、移動式ICTユニットの一部機能を切り出し、アタッシュケースサイズに収める「ICT-BOX」の開発も進めているとのこと。これは超小型のパソコンを用いて構築されたPBXとバッテリ、Wi-Fiルータを用い、通話など移動式ICTユニットの一部を実現するもの。現在はWi-Fiルータ側がボトルネックになっているそうだが、PBX自体は5000台の電話番号の収容が実現できるという。
移動式ICTユニットを用いた実証実験は、2013年10月に開催された会津大学の学園祭で、300人を対象に通話機能の実験が実施されている。また同年8月にも、同大学で開催された電気通信学会東北支部連合会において、被災者データ収集システムの実証実験を実施。いずれもアンケートやヒアリングでは有効との評価を得たという。2014年2月には、高知県南国市と黒潮町でICTカーを用いた実証実験が予定されているとしており、今後も検証を重ね実用化を目指す。
ただしICTカー単体で実現できるのは、あくまでWi-Fiが届く範囲内のローカルなネットワークに対する対応にとどまるため、外部回線との接続ができない限り、安否確認に役立てられない弱みもある。このことについて、NTTみらいねっと研究所の主幹研究員である坂野寿和氏は「全国の通話トラフィックのうち6割は、市内及び近隣との通話。安否確認は震災の初動時に重要となるが、それ以降は、実は近くにいる人同士のコミュニケーションが求められる」と話す。衛星回線の搭載についてはコストとのトレードオフになるため、まずはローカルに向けた対応を優先したとのことだ。
また、ICT機器を被災地での運用をする場合、電源の途絶が大きく影響してくることから、電源をどうやって確保するかも大きな課題となってくる。このことについて坂野氏は、「ICTカーでは被災地内でやり繰りすることを考慮し、発動発電機も搭載しているのでガソリンがある限り発電はできる。また電力消費の大きな要因となっている空調をほとんど使わず、蓄熱材を使うことで電力を抑える工夫もしている」と答えている。
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