朝日インタラクティブが12月10日に開催した、マーケティングを軸にしたビジネスイベント「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」の講演レポートをお送りする。ここでは「ビッグデータを活用したリアルタイムマーケティング」と題し行われた、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション代表取締役社長の塚本良江氏の講演を紹介する。
ビッグデータをリアルタイムに解析し、その結果を活かし、売上や顧客満足度の向上に貢献させる取り組みを支援する、同社やNTTコミュニケーションズのテクノロジーとソリューションについて成功事例などを交え、解説した。
塚本氏は企業のマーケティングに変革を迫る重大な要素として、スマートフォン、ソーシャルメディア、ビッグデータの3つを挙げる。スマートフォンユーザーは、その79.6%が毎日1回以上インターネットを利用しているとのこと。1人平均のメディア接触時間は約350分で、そのうち約3分の1をインターネットに費やしている。さらに10~20代の女性は2分の1をインターネットに接触しているとの調査結果を引用し「ネットを介して買い物をすれば、その履歴はすべて残り、これをうまく活用すれば宝の山になる」と指摘する。
スマートフォンユーザーはインターネット利用時間のうち、およそ半分をSNSに利用している。SNSでやり取りされる情報は多岐に渡るが、企業に関連する事柄をSNSで情報発信した経験があるユーザーは、Facebookで28.8%、LINEでは28.3%、mixiで28.5%、Twitterで37.8%になる。「これらの会話は企業側からすると顧客の声であり、これを聞かない手はない。スマートフォンとSNSにはビッグデータが渦巻いている。SNSのコミュニティの特徴は興味や関心を大勢で共有でき、エンドユーザーの本音がわかること。自社だけでなく他社への評価も知ることができる」と塚本氏は話す。
では、SNSに寄せられる声をどのように分析すればマーケティングに活かせるのか。NTTコミュニケーションズグループのSNS分析ツール「BuzzFinder」は、同社と米Twitterの契約により、すべてのツイートデータにアクセス可能なAPIを用い、ブログの90%を捕捉しているという。「自由なキーワードで検索ができ、書き込みがネガティブかポジティブかの判別が可能で、炎上や企業のブランド価値の毀損防止につなげられる」(塚本氏)。
同社ではソーシャルリスニングセンターを設置し、24時間365日体制でSNS上の「顧客の声」を“リアルタイム”に収集。レポーティング、リスク監視からSNS上の情報発信・アクティブサポートなどを代行している。
ある企業の広報室では、プレスリリースの反応を視聴率や掲載面積などから計測していた。ソーシャルリスニングセンターを活用したところ、メディアの論調とともに、それに対する顧客の反応も把握できたという。また、さまざまな話題を成分分析した上で作成されたレポートから、メディアの報道不足により、顧客のネガティブな反応があることがわかった。その企業ではメディアに対し、再度レクチャーを実施し「早い段階で、反応はポジティブに好転した」(同)という。
ソーシャルリスニングセンターは、インターネットプロバイダ「OCN」やIP電話アプリ「050 plus」などのサービスを手掛けているNTTコミュニケーションズ自体も活用している。Twitterなどに書き込まれる、生の声を一元的に把握し、有用と判断される声を各部門に振り分ける。カスタマーサポート部門はこれらの声を障害やリスクの検知に活かすことで、迅速な対応が可能だ。SNSは障害などに対する反応を最も早く知ることができるツールだからだ。また情報サービス開発部門であれば、サービスの改善に役立つとともに、新たなニーズの発見にもつながる。無論これらの声は経営層も読んでいる。
NTTドコモでは一般的な感想や質問、不満まで、1日で5万件のツイートがあるという。これをBuzzFinderを通じて取り込み、ビッグデータ解析とフィルタリングして分類。例えば「携帯電話のメールアドレス変更はどうすれば良いか?」などの質問をSNS上で発見すると、ドコモが能動的に支援する、アクティブサポートを実行している。
「このようなサポートができれば、ドコモは良い対応をしているとの評価がまたSNSに寄せられ、好感度が向上する。さらにオペレータ要員などのモチベーションも上がる」(同)といった効果がある。実際SNS活用の効果が上がっていると考える企業は増加しており、57.9%が「ウェブサイトまたはメールでの問い合わせ件数が増加した」、57%が「自社サイト・ブログへのアクセス数が増加した」としている。
ビッグデータ解析とO2O(オンライン・ツー・オフライン/オフライン・ツー・オンライン)の活用で、売り上げが大幅増につながった例として、塚本氏は「ビッグエコー」の取り組みを挙げた。ビッグエコーは第一興商が運営する業界最大手のカラオケボックスチェーンであり、全国で320店舗を擁する。ビッグエコーでは従来プラスティックカード型の会員証を発行していたが、ユーザーはカードを常に携帯しているとは限らないため、突発的なニーズに応えられず、キャンペーン施策を打つのが困難などの弱点を抱えていた。そこで会員証をソフトウェア化し、携帯電話上で使えるモバイル会員証を導入した。突発的な事象にも対応できるほか、ターゲティングメールやクーポンの配信、キャンペーンなどがしやすくなったという。
第一興商はモバイル会員証の採用にあたり、NTTcomのクラウド型O2Oサービスを導入した。スマートフォン向けのウェブサイトを構築して店舗への誘導を図り、来店客には会員になることを勧める。会員にはメールマガジンやクーポンを配布することで、さらなる誘導をする。この結果、ビッグエコーの会員数は100万人を突破し、売り上げは月間7000万円に達したという。
成功のポイントは、会員獲得施策を本部主導で展開したこと。全国の店舗でメルマガ会員獲得数を競わせたほか、成功事例を各店舗で共有した。また、データ分析から、メルマガなどの配信時間を開封率が高い13~14時に調整したことも寄与しているという。塚本氏は「顧客の声、足跡といったビッグデータが積み上げられている、ソーシャルリスニングやビッグデータ解析を用い、リアルタイムで顧客の実態、実像を理解し、それに即した対応をすることで成果を上げることが可能な時代になった」と述べ、ビッグデータを活用したマーケティングの検討、利用を呼び掛けた。
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