スマートフォンの普及や通信技術の発展によって、ITは音楽や映像などのデジタルコンテンツを楽しむためのものから、より多くの消費者の生活を便利に、そして豊かにするツールとして進化を遂げつつある。この連載では企業のウェブでの取り組みを通じて、それぞれの領域におけるテクノロジの持つ可能性について考える。
今回のテーマは“食品”。いまではスーパーマーケットを展開する小売各社がネットスーパー事業にも参入し、食品や日用品をネット経由で買う人も徐々に増えてきているが、実は日本で初めてネットスーパーを開始したのは西友であることをご存知だろうか。
大手スーパーマーケットの西友は、実店舗から近隣エリアへ生鮮食品などを配送する日本初のネットスーパー「SEIYUネットスーパー」を2000年に開設。本やCDと比べるとネットで食品を買うことに抵抗を持つ人もいるかもしれないが、SEIYUネットスーパーでは日ごろ通っているスーパーから直接食品が送られてくるという安心感があり、顧客からの評価も高かったという。
この一方で、近くに実店舗がある人にしか西友の商品を届けられないという課題があった。そこで、実店舗から近隣エリアへ生鮮食品などを配送する従来の「ネットスーパー便」に加えて、新たに配送センターから常温の食品や日用品などを全国へ配送する「配送センター便」の提供を開始。2013年6月にネットスーパーとECサイトを兼ね備えた「SEIYUドットコム」としてリニューアルした。
2008年に米ウォールマートの子会社となった西友は、EDLP(Every Day Low Price)戦略を軸にした低価格路線を推進しており、SEIYUドットコムでも店舗と同様に低価格な商品を購入できるのが特長だ。また店舗では取り扱っていないウォールマートからの直輸入商品を集めた「アメリカンコーナー」や、西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」など、競合他社との差別化商品も多数揃えた。商品数は現在3万品目を超えるという。
ネットスーパー便は注文から最短5時間で商品が届き、15時までに注文すれば当日配送にも対応する。配送センター便は注文から1~3日以内に届くという。配送料は315円で、ネットスーパー便と配送センター便で合計5000円以上買い物すると無料になる。また2月から配送センター便のみを利用した場合の配送無料額を1980円に値下げする。
リニューアルに先駆け、2012年11月に大きく見直したのがサイトのユーザーインターフェースだ。ほしいものを1点買いすることが多い一般的な通販サイトと比べて、ネットスーパーでは10点以上の商品をまとめて買う人も少なくない。そのため、いかに実店舗で買い物カゴに入れているような感覚で、サクサクと商品を選べるかがキモになるが、「従来のSEIYUネットスーパーは使いづらいという声が寄せられていた」と、西友 ドットコム事業本部 ディマンド・クリエーションダイレクターの井上謙氏は振り返る。
そこで、SEIYUドットコムでは、サイト上に常に商品数と合計金額を表示するユーザーインターフェース(UI)を採用。ほしい商品をクリックしていくだけで、商品一覧ページから遷移することなく、複数の商品を短時間に注文できるようにした。また、スマートフォンにも最適化し、PCサイトと同じ操作感で買い物をできるようにした。カートの状態を保持したまま買い物を中断できる機能も備えているため、帰宅中にスマートフォンでカートに入れた商品を、自宅のPCで購入するといったことも可能だ。
これらのUIやシステムを開発したのが、2012年に西友と提携し、SEIYUドットコムを共同で運営するディー・エヌ・エー(DeNA)だ。今でこそモバイルゲームのイメージが強い同社だが、10年以上前からショッピングサイト「ビッターズ」(現・DeNAショッピング)や携帯電話向けオークションサービス「モバオク」を手がけており、近年参入が相次ぐモバイルEC領域においてすでに多くのノウハウを蓄積している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力