CNET Japan Live 2013

広告媒体の効果測定にDMPが不可欠になる--アタラCOO有園氏講演

 朝日インタラクティブが12月10日に開催した、マーケティングを軸にしたビジネスイベント「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」の講演レポートをお送りする。ここでは、「DMPとアトリビューションの最新動向 ~メディアからオーディエンスのアトリビューションへ」と題して行われたアタラの有園雄一氏の講演を紹介する。

 企業のマーケティング活動におけるDMP(Data Management Platform)活用のヒントと、それに適した広告の効果測定の新しい手法について、実例を交えながら解説した。

DMPで、無数に枝分かれするセグメントに対応できる


アタラ合同会社の取締役COO 有園雄一氏

 DMPとは、広告配信の最適化やマーケティング戦略の基礎を支えるデータ管理の仕組み。ユーザーのインターネットにおける閲覧履歴や行動履歴といった「オーディエンスデータ」を管理するもので、冒頭で有園氏が「DMPはデータを入れた箱」と表現したように、そのままでは使えず「使い方をよく考えなければならない」点が重要だ。

 DMPがどういうものか、有園氏は初めにPlatform IDの「Xrost DMP」というプライベートDMPのソリューションを例に取って解説した。外部のポータルサイトやSNS、ECサイト、検索サイトなどでのユーザーの行動データと、広告主(企業)内部のウェブサイトにおけるユーザーの閲覧・検索履歴、登録情報といったデータを組み合わせて分析することで「最近特定の商品を購入した女性」や「特定の検索ワードでウェブサイトを訪れた30代の会社員」のようなターゲットの抽出が可能になるのが、Xrost DMPにおけるDMPの基本的な仕組み。この抽出したターゲットに対し、どのようなアクションを取っていくべきかを考えてマーケティング活動ができるようになっている。

 Xrost DMPのほかに、「AudienceOne」や「MOTHER」といったDMPソリューションが知られており、有園氏の推測によれば、すでに国内でも「1000社くらいは導入しているかもしれない」状況にある。

 ただ、導入したものの「自社サイトのユーザー属性はわかったが、そこから先には進んでいない」企業が多い印象を受けると同氏。広告配信時にセグメントを仮定し、その結果に応じて再セグメント、リターゲティングをし、成果をさらに高めるといった活動に本格的に取り組んでいる企業はまだ少ないようだ。

 DMPを活用することで何ができるのかメリットが見えにくいことも、活用が進まない要因の1つかもしれない。有園氏はDMPによって変わることとして、「メディアプランニングがオーディエンスプランニングになる」ことを第1に挙げた。あらかじめ想定される媒体ごとの属性に応じて、広告を出稿していたものが、DMPの活用で個人(オーディエンス)の属性に最適化された広告をプランニングできるようになるという。

 すでに従来のリターゲティング手法でも、自社サイトを訪れた人がどのページまで見ているかは把握できるが、DMPでは自社サイトに訪れたことがなくても、他サイトでの行動履歴や属性を抽出でき、潜在的な顧客へのアプローチができる。

 例えば女性向けの化粧品でも「敏感肌に悩む中年男性が興味を持っているかもしれない。そういった新しいセグメントを発見した時は、どうコミュニケーションを取っていくかを考える必要がある」(有園氏)。

 新しいセグメントも、想定済みのセグメントも、1つの中からさらに細分化される。なぜならセグメントには、顧客の性別や居住地、興味や関心といった属性のほか、商品やサービスに対する認知から購入、リピートに至るまでの“フェーズ”の違いが含まれるからだ。例えばメールを開封しない人にはバナーを表示する。バナーをクリックしない時は、住所情報を取得していればDMを送付し、逆にバナーをクリックした場合は過去の行動履歴から適切なコンテンツに誘導する、といったように、セグメント(フェーズ)によって適切な広告施策、コミュニケーション方法は無数に枝分かれしていく。

  • Platform IDの「Xrost DMP」の概念図を用いてDMPの仕組みについて説明

  • DMPによりターゲッティングの細かさ、分析の手法、マーケティング施策の考え方が変化すると考えられる

  • 顧客のフェーズによって取るべきマーケティング施策は異なる

 すなわち高い効果を得るには、セグメントに合わせて異なるキャンペーンを密接に連携させることが重要になってくる。施策の元となるデータには広告出稿、アクセス解析、CRM(顧客関係管理)、販売、商品などが存在しており、これら膨大なデータを管理し、無数に枝分かれするセグメントに対応するのに、DMPが中心的な役割を果たすわけだ。

効果測定はDMPに最適な「アトリビューション分析」の時代へ

 一方、効果測定の手法も従来の“媒体ごと”から大きく変わる。かつてはレーンで区切られたスイミングプールで泳ぐことに例え「スイムレーン」と呼ばれ、テレビ、新聞、バナーそれぞれの広告効果を測定する形だったが、どの媒体の広告がどれだけ貢献したのかを調査する「アトリビューション(分析)」が、DMP時代には不可欠になってくる。

 テレビCMで商品を知り、ウェブで検索し、店頭に訪れて購入する、あるいはバナー広告をクリックしてSNSやウェブサイトなど複数の媒体を経由し、通販で購入するといったように、行動パターンは複雑になりがちだ。複数媒体の相互の影響を考慮して評価しなければ、その後のマーケティングに活かすことは難しくなるだろう。

  • 実施した施策の内容によっても無数に枝分かれしていく

  • 複数の広告キャンペーン・チャネルそれぞれの貢献度を計測するのが「アトリビューション分析」

  • 以前は媒体ごとに効果測定を行う「スイムレーン」方式だった

  • これからは複数の媒体の相互の影響を考慮した分析が必要になってくる

  • 媒体ごとに計測するのが「メディアアトリビューション」

  • 顧客のセグメントごとに計測するのが「オーディエンスアトリビューション」

 有園氏は「DMPとアトリビューションは“複数の媒体、施策を連携する”という点で共通している」とし、この2つを実際に組み合わせて活用している例を挙げた。

 その企業は、新規会員や顧客の獲得に伸び悩んでいるが、獲得するための具体的なKPI(重要業績評価指標)がなく、広告出稿に適した媒体が不明で、具体的なプランもない状態。しかし、KPIを既存会員のコンバージョン、新規サイト訪問者のコンバージョン、新規会員獲得数や獲得率、休眠会員の復活など、13個に分けて設定し分析した結果、いくつかの事実が明らかになった。1つはリスティング広告経由の新規獲得率が低いこと、もう1つはリスティング広告の出稿を少なくすると自然検索からのコンバージョン率が上がることだ。

 つまり、リスティング広告を続けていても新規の獲得にはあまり効果がないと言える。こうした分析から「ブランド指名系ワードのリスティングをやめ、自然検索で対応する」のが最善と判断。そうすると年間1億円ほどの予算を節約できるため、その予算を新規獲得率の高いバナー広告、セグメントやシナリオを発見し、そこへ投下する方向性が見い出せたという。

  • とあるクライアントでは、新規顧客獲得のためにKPIを13個も設定して分析を行った

 このようにDMPとアトリビューションの組み合わせによって、「KPIを新規と既存(の顧客)で細かく分類して設定できる」、「セグメント別、シナリオ別に評価し新しいセグメントを発見できる」、「既存だけでなく、新規のコンバージョン数・率も確実に作り出せる」など、さまざまなメリットを生み出すことが可能だとした。

 ただしアトリビューションにあたっては、「(購入における)ラストクリックだけを見て予算を効率化していくと、最終的にはリスティングとアフィリエイトしかCPA(Cost Per Acquisition)に見合わないことになる」と有園氏。「新規獲得ができている媒体からの顧客は、既存顧客に比べるとコンバージョンは低いし、CPAも高くつくもの。新規をどうしても獲得したいなら、そこにはお金をかけるべき」と、戦略に合わせて投資のやり方も変えるべきだとアドバイスした。

 さらに、テレビのように多くの人に向けて同じ広告を見せるのではなく「個々の生活者のニーズに合わせ、役立つ情報を送ってあげれば、広告に反応してくれる率は上がる」と言い、それがDMPを使って広告配信する場合にしっかり考慮しておくべきことだと助言。「すぐにコンバージョンにはつながらなくても、ブランドの好意度は上がる。『個々の生活者のためにコミュニケーションする』ことにDMPを使えば、大きく踏み外すことはないのではないか」と語った。

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