Internet of Things

マイクロソフトが考えるInternet of Things:前編--量が質を凌駕

エースラッシュ 別井貴志 (編集部)2014年01月10日 13時59分
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 「Internet of Things(IoT、モノのインターネット)」は、英国生まれの技術先駆者で、P&Gのアシスタントブランドマネージャーやマサチューセッツ工科大学(MIT)のオートIDセンターのエグゼクティブディレクターを務めた経験があり、RFIDの専門家としても知られたKevin Ashton(ケビン・アシュトン)氏が1999年に初めて使った言葉とされてる。

 同時期には、いつでもどこでもネットワークが利用できる「ユビキタスネットワーク(コンピューティング)」という言葉もあったが、いずれにしても新しい言葉ではない。IoTも当時は技術提唱や概念を指す意味合いが強かったが、ここへ来て注目キーワードとされているのは、それらが現実になり、どんどん広がっているからだ。

 つまり、PCやスマートフォン、タブレットといったIT機器だけではなく、自動車や家電、アクセサリーなどこれまでネットワークとは無縁だったモノが次々とインターネットにつながり、活用されているわけだ。2013年にGoogle Glassをはじめとしたメガネや時計の形をした「ウエアラブル端末」と呼ばれるモノたちもIoTの1つと言えよう。

 IoTは医療や農業、気象などなど、あらゆる産業や業種に影響を与えるとされ、2020年におけるIoTの世界市場規模は8兆9000億ドル(約900兆円)との予測もある。こうした中で、IT業界としてもこれまでのクラウドコンピューティング、ビッグデータ、データサイエンス、リアルタイム、センサ、M2Mなどの注目技術がすべて関わってくるため、大きな期待を寄せている。

 IoTがどのように新たなイノベーションをおこし、ライフスタイルやワークスタイルが変貌していくかを注目する中で、今回は日本マイクロソフトの執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長である伊藤かつら氏、デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クラウドテクノロジー推進部 業務執行役員である平野和順氏の2人に聞いた。

マイクロソフトの夢見る世界

別井:Internet of Thingsということで、マイクロソフトは小型の端末でも利用できるようなテクノロジーを提供していますが、それらを活用するものとしてどのようなものが考えられるでしょうか。他社から出た2013年のトピックスは時計やメガネといったウエアラブル端末やヘルスケア端末に偏った感がありましたが。

日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クラウドテクノロジー推進部 業務執行役員である平野和順氏日本マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 クラウドテクノロジー推進部 業務執行役員である平野和順氏

平野: 数十Kで稼働する小さなOSと呼べるのかわからないような制御プログラムや開発キットは用意しているので、パートナーさんがそれを何に組み込むかというところで、いろいろな形が考えられると思います。それが結果として、時計でも、メガネでもいいでしょうね。

伊藤: もっとおもしろいものとして、髪留めのようなものを作ったパートナーさんはいらっしゃいます。それを身につけて走って帰ってくると、今日何歩歩いたのかというような情報が得られたり、健康管理ができるような。将来的には血圧計のような機能がついたり、いろいろできるようになるでしょうね。人と接点があって動くものがいいですよね。

平野: ヘルスケアの事例だと、弊社の Envisioning Center で公開されているいろいろなビデオの中に、ヘルスケアのものもありますね。糖尿病を患っている女性がホームドクターと会話する、というストーリーが私はおもしろいと思いました。さらに未来的なのはWALLでしょうね。壁全体がモニターになっていて、ガラスのモニターごしにアフリカとヨーロッパの子供がリアルタイム翻訳を活用しながらコミュニケーションします。これらは空想を描いているわけではなくて、マイクロソフトリサーチ(マイクロソフトの研究所)が研究しているものをフィーチャーして出しています。実際にデモもあって、一部はもう実装できていたりもしますよ。

別井: 以前、レドモンド(マイクロソフトの本社がある場所)を尋ねた時に、ネットワークや音声認識技術、ジェスチャー認識技術などがふんだんに盛り込まれた近未来のオフィスや家庭をイメージし、実際に体験できる施設がありましたが、とても感動しました。あれは今でもあるのですか?

日本マイクロソフトの執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長である伊藤かつら氏日本マイクロソフトの執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長である伊藤かつら氏

伊藤: ありますよ。ちょうど2013年の初めに全面リニューアルしたところで、以前は「at Works」と「at Home」に分かれていたのですが、これが一本化されました。今はキッチンに行くとその人のダイエタリーに合わせて冷蔵庫の中身を見ながら、お抱えシェフのホログラムがメニューやレシピをアドバイスしてくれて、材料を入れた鍋をコンロにかけるとレシピ通りに加熱してくれる、みたいなこともやっています。

別井: かなり変わりましたね!以前もネットワークにつながった冷蔵庫などはありましたが、かなりバージョンアップしたという印象です。

伊藤: ソフトウェア的な更新は半年に1度くらいやっているのですが、今回はハードウェアごと変えたので大きいですね。実はこの品川のオフィス(日本マイクロソフトのオフィス)もあのイメージを引き継いでいます。米国の本社は省エネルギーやCO2削減などにもいろいろ工夫をしていて、それは「Microsoft 88acers」という形でまとめてあるんですよ。

品川オフィスが実現するワークスタイル変革

別井: オフィスに入ったところがリビングになっていますね。

伊藤: 世界中が同じようなコンセプトで作られています。この品川オフィスができて累計で39万人ほどお客様を迎えているのですが、その中にはワークスタイル変革のために参考にしたいというエグゼクティブのお客様がかなり含まれています。働き方の改革ってどの会社でもすごく問題になっているんですよね。ただ日本の場合は海外のように簡単に人を変えるというわけにはいかないので、働き方を変えようということになるわけです。

別井: 日本マイクロソフトはフレキシブルシーティングや柔軟な在宅勤務への対応など、新しい働き方を取り入れていることが話題になりました。

平野: 現在は40%の社員が在宅勤務を経験し、さらに、その内に56%は月に数回程度の在宅勤務を行っています。家庭の事情だったり、単純に通勤時間がもったいないという考えだったりするのですが、特に理由を問わず在宅勤務が可能です。会社に来なくてもVPNで接続すれば会社と同じ環境で仕事ができますから。

伊藤: フレキシブルシーティングを実現できた大きなポイントは固定電話を廃止したことですね。Lyncを使ってどこでも電話ができる、ということをみんなが実感したことで、フレキシブルシーティングで働くということに文句が出なくなりました。ただ、それだけではダメなんです。

平野: 例えば、評価モデルが何時間働いたから偉い、みたいなものだとダメですよね。評価モデルとワークスタイルと。ビルの設計もそうです。

別井: このオフィスには何百という会議室があると聞きました。

伊藤: 1人用や2人用というのもありますし、ちょっとした話が出来るオープンスペースもあります。会議室は決まった時間までしか使えないけれど、話が長引くこともあるわけです。そういう時はオープンスペースでちょっと話してね、という感じです。働き方を変えればいいというわけではないですよね。全てが紐付いていますから。ですから、エグゼクティブの皆様には我々なりの評価制度やビジネスマネジメントの話までします。

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