CNET Japan Live 2013

ユーザーありきの文脈作りでヒットコンテンツを一緒に育てる--ニワンゴ杉本社長

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 朝日インタラクティブが12月10日に開催した、マーケティングを軸にしたビジネスイベント「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」の講演レポートをお送りする。

 ここではPremier Trackより、動画共有サイト「ニコニコ動画」の企画・開発・運営などを行うニワンゴの代表取締役社長である杉本誠司氏による「ニコニコ動画でファンを巻き込む訴求力とその秘訣」を取り上げる。講演の冒頭で杉本氏は「マーケティングの視点からすると、ニコニコ動画の事例はやや特殊なのでまねはできないかもしれないが、視点やポイントは参考にしていただけるのではないか」とし、最近のヒット事例などや今後のサービスの展開について、運営側がどのように分析しているのかといった話が進められた。

他の人たちと共有する場にしていくことが存在意義

  • ニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏

 ニワンゴではニコニコ動画のサービスの位置付けについて、「見る人にとっては普通に感動したり、感情のはけ口となる場であり、動画を配信する人にとっては、そうした場を提供したという満足感を味わえる場である」と分析。そのためにあえて動画にコメントを重ねるという方法で、自分の中にある気持ちを時間の流れに沿って増幅させ、同時に他の人たちと共有する場にしていくことが存在意義につながっているという。「自らをプラットフォーマーと位置付け、競合相手はユーザーであると想定しているので、対外的なマーケティング戦略はとっていない」とも。ユーザーの動向やトレンド、炎上などを常に分析し、感度を高めることがマーケティングのコアの部分を占めているとしている。よく聞かれるYouTubeやGyaO! との違いについては、競合関係にはない全く別のサービスであり、お互いに同じ意識を持っているのではないかという。講演中に杉本氏はニコ動という呼び名を使わずniconicoとし、動画という限られたカテゴリーにとらわれず、大きなサービスの枠で戦略を進めて行こうとしていることが感じられた。

  • プラットフォーム構造の概要

 サービスに関しては、無料ユーザー数は3626万人で月間35万人ベースで増加、有料ユーザー数は211万人で月間3万人ベースで増加しており、男性と女性の比率は67%対33%といった内訳も紹介された。ただし、これだけのユーザー数があってもマスマーケティングとしては通用しないと見ている。その理由として、12あるセグメント同士のユーザーがバラバラで重ならない点や、専門的なものに対する感度は高く、深ければ深いほどバイラルされる一方で、それ以外の人には関心が低く、浅い情報はスルーされる傾向にあるといった点をあげている。

 ニコニコ超会議をはじめとしたリアルなイベントも、事業目的ではなく、インターネットサービスに関わる人たちのロイヤリティを上げるものと位置付けている。「通常はネットでやっていることを、リアルに顔を合わせて行うオフ会であり、お祭となっている。ユーザーにとってはこちらが非日常空間」であるという。サービスを大事にしようという感覚を持ってもらうのが目的なので、運営の文脈にもかなり気を使っており、たとえば、4月のニコニコ超会議2では安倍総理大臣の来場が話題になったが、首相に会いに行くではなく、首相があいさつに来たという文脈にする必要があったという。

  • ダイオウグソクムシの中継による反響

 最近の人気コンテンツも、こうした文脈作りを大事にした結果、ヒットにつながったと分析している。その1つ、ダイオウグソクムシの生放送は10万人を超える視聴者を集めたが、通常は1000mの深海にいる生物であること、5年間エサを食べてないがその瞬間が見られるかもしれない、という非日常の時間をみんなで共有し、見守り続けるという機会をデザインをしたことで成功した。だが、全てが計画通りではなく「もともとスターになる必要条件は備えていたが、中継サーバーがダウンしたり、関連グッズが売り切れたり、仕込めない部分もうまく話題につながった」と見ている。

  • 将棋中継による反響

 プロ棋士がコンピュータと対戦する将棋電王戦も最近、大きく話題になった。ユーザーにコンピュータやゲーム好きが多いこと、試合時間が長く連帯感が持てるといった点で、もともと相性が良いコンテンツではあるが、ここでも丁寧な文脈作りを行っている。仮想敵を作ったり、有明コロシアムや小田城にわざわざ舞台を作り、新しい時代の将棋戦を演出。最後まで試合を見守ることで時代の生き証人になれる、という文脈を作り、それがが人を語らせ、他の人たちを巻き込む効果をもたらした。

  • コンテンツ訴求の秘訣として挙げた3つのキーワード

 こうしたヒットを分析して大事な要因として見えてきたのが継続性で、バズベースなので配信から知られるまでタイムラグがあり、記憶に留められるようにするには、2週間ペースでアップデートを繰り返すといった必要があるという。隙のあるコンテンツ、一緒に育むといった要素はある程度あるものの、基本的にノウハウは存在せず、ユーザーをモニタリングして感覚的に対応するしかない。「概念的なものだけに、マーケティングを行うのはかなり手間がかかるが、サービスの中心は誰なのかという本質を考えるいい機会にはつなげられるかもしれない」という杉本氏のコメントで、講演は締めくくられた。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加