最初のお題に対する回答を踏まえての答えになりますが、2013年はモバイル業界が大きく変わる前兆が現れ始めた年だったのかなと思います。たとえば、端末の販売方法にしても、割賦で24回に分割し、割引をつける仕組みのゆがみが目立ってきました。特に在庫処分の方法としてキャッシュバックが常套手段になっており、端末を買っているのかお金をもらっているのか、分からない状況です。既存ユーザーからするとフラストレーション以外の何物でもないと感じています。
こうした中で、キャリアからは端末を買わないという選択肢が出てきました。SIMフリー端末が注目を集めたのは、ある意味自然の成り行きだったのかなと思います。そうなると、次のステップとして、端末を利用するためのSIMカードが必要になります。MVNOの格安SIMの情報をテレビや雑誌など、一般の媒体でも見かけるようになりましたが、SIMフリー端末の登場とともに、今後はさらに露出が増えるのではと思います。
これらの事例からは、従来のキャリアが端末と回線をまとめてコントロールするエコシステムが変わろうとしているという印象を強く受けました。ただ、すべてが取って変わるわけではなく、2013年はあくまで“前兆”と言えるような状況だったと思います。ほかにも、ソフトバンクのSprint買収しかり、第3のOSしかり、まだ具体的な成果は世に出ていません。ただ、2014年以降に何らかの変化が起こることは確かで、そのような種まきをした1年だったのかなと個人的には総括しています。
「iPhone 6(仮)」は大ヒットします、と書いておけば、ほぼ間違いなく当たるのですが、それだとおもしろくないので、もう少し踏み込んで回答します。
2013年の総括からの流れで言うと、MVNOのサービスは今後より注目を集めると思います。ただし、MVNOの価格競争自体は、そろそろ限界を迎えつつあります。現状だと1Gバイトあたり980円程度になっていますが、さすがにこれ以上安くするのは厳しいでしょう。そうなると、競争軸が価格以外に変わってきます。たとえば、格安の端末とセットにして、従来とは異なる層に販売するといったことが考えられます。BIGLOBEのように、Wi-Fiという異なるネットワークとセットにした販売をしていくのも、その1つだと思います。
端末に関しては、ファブレット(5インチ以上7インチ未満のスマートフォン)の潮流が日本でどうなるのか、慎重に見極めたいところです。アジア圏ではブームになっていますが、日本ではGALAXY Noteシリーズがいまいちパッとしないように、やや大画面端末の普及が遅れています。多くのAndroidスマートフォンに比べて画面の小さいiPhoneが主流であることも、欧州やアジアと事情が異なる点でしょう。
ただ、KDDIがファブレットを押していたり、少なくとも5インチ端末は「HTC J butterfly」「GALAXY S4」「Xperia Z1」のようなヒット端末があったりと、いま以上の普及を予感させる動きもあります。日本では高い人気を誇るXperiaのファブレット版「Xperia Z Ultra」やその後継機が出れば、状況は少し変わってくるのではないでしょうか。
タブレットについては、8インチ前後のWindowsタブレットが登場し、ヒットモデルも出たことで、風向きが少し変わってきました。高級なiPadシリーズと、低価格モデルが人気のAndroidという対立構図の中に、1つ新しい風が吹き込まれたと感じています。この8インチ台のWindowsタブレットにも、たとえばソニーや富士通などが加われば、日本市場での盛り上がりがより加速するのではないかと感じています。
石野純也(いしの じゅんや)
宝島社で編集としてケータイ関連誌に携わったあと、フリーランスのライター/ジャーナリストとして独立。ケータイ業界の取材を続ける。業界解説本や、端末解説本など、著書も多数。近著には、ウェブでの連載をまとめた電子書籍「ソーシャルゲーム市場の最新トレンド」(KADOKAWA)がある。
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