「7」「390.53」「100万」--3つの数字で振り返る2013年のアップル(後編) - (page 2)

ハイエンドのiPhone 5sとミドルレンジのiPhone 5c

 2013年9月には、iPhone 5cを発売し、これまでハイエンドのみだったiPhoneに、100ドル安いモデルを加えることで、ミドルレンジの市場を狙おうとしている。もちろんiPhone 5sとターゲットは異なるが、前述のように「iPhone 5cが売れれば売れるほど、利益が圧縮される」可能性は高い。

 しかし、発売直後にフタを開けてみると、世界各国ではハイエンドのiPhone 5sを中心に好調な販売が続いている。特にiPhone 5cがターゲットにしていると見られていた中国市場でも、iPhone 5sが販売の8割を超えるなど、予想と異なる動きを見せている。

 また、Appleは製造原価の圧縮にも努めている。例えば、2013年に発売したiPhone 5s、iPad Air、iPad mini Retinaディスプレイモデルでは、いずれもA7チップを共通して搭載するなど、部品の共通化もより推し進めており、iPad Airは、初めてRetinaディスプレイを搭載した第3世代iPadよりも製造原価を42ドルも下げることができた(IHS iSuppli調べ)。

 製造メーカーとしてのAppleは、「1億台生産する体制」と「驚くべきデザイン」を両立させ、他の製品よりも「ちょっと高い」価格に収める形でブランドを構築してきた。またしばしば、業界で最も早く最新テクノロジを搭載することによる魅力を作り出している。

 成熟市場になればなるほど、一端は魅力が弱まっているAppleの製品の優位性がより高まっていくものと見られる。その鍵は、次の数字に関係ある。

「100万」--プラットホームのパワーをいかにブランド化するか

 Appleは新型iPadを発表した2013年10月のイベントの際、App Storeに掲出されたアプリが100万本を超えたことを発表した。同年7月にGoogleは先にGoogle Playのアプリが100万本に達したことを発表しており、3カ月遅れでの達成となった。前述の通り、iPhone 3Gが登場した2008年に開設されたApp Storeでは、6月のWWDC時に、500億ダウンロードを突破しており開発者に100億ドルを支払っているとも発表していた。

 より多くのユーザーが存在するAndroidプラットホームでアプリを公開した方が、より多くのユーザーにダウンロードしてもらえる可能性が高まるはずだが、App Storeは有料アプリの販売に強い。例えばゲームタイトルの中には、iPhone向けは100円で販売するが、Android向けは広告付きで無料配信、という展開をしているものもある。

 またスタートアップ企業の間では、開発費や動作検証の費用の削減から、iPhoneから先にアプリを開発する「iPhoneファースト」は依然として健在だ。Instagramが長らくiPhone版だけで人気を博しFacebookに買収されたことは有名だが、今年も、長い行列を作った斬新な操作性のメールアプリ「Mailbox」はiPhone向けにリリースしてDropboxに買収されるなど、iPhoneファーストを効果的に活用している企業が目立つ。

 しかしこの潮目も変わってきている。iPhoneファーストの状況から、人気タイトルがiPhone向けにしかリリースされていない状況下で、同様のアプリをAndroid向けに用意して人気を得る、といった手法もゲーム業界などで目立つようになってきた。ユーザー数獲得などでAndroidの母数を生かす意味で、有効な策とも言える。

 アプリ数で追い抜かれ、優良なアプリが揃っているとのブランドも薄れ始めるであろうApp Storeは、今後、iOSデバイスやクラウドサービスなどを活用しながら、新たな魅力作りに取り組んでいかなければならない。

 iPhone 5cが廉価版としてではなく、ミドルレンジのスマートフォンとしてリリースされたこと、小売担当の新たな役員としてバーバリーの元CEOであるAngela Ahrendts氏が就いたことから、Appleはより強固なハイブランドとしての道を選択したと見ている。良質なアプリを見つけやすくすることは、アプリが氾濫するストアの中での急務であり、今後も取り組んでいくべき課題だ。

 また、Appleがかねてから熱心に取り組んでいる教育向け、子ども向けの環境作りという点で選ばれるストアとして整備する施策も行っている。これまでも、年齢のターゲットがわかりやすいようレートを表示してきたが、App Storeに新たに「子ども向け」カテゴリを新設し、「5歳以下向けベスト」「6歳から8歳向けベスト」「9歳から11歳向けベスト」といったランキングも用意するなど、親が子ども向けのアプリを簡単に探せるようにした。

 その他、位置情報に即したアプリや、イベントなどに合わせたアプリなど、アプリストアのメディア化とライフスタイルやライフイベントに即した活用を進める仕掛けに取り組んでいくことになるだろう。とにかく自力で良いアプリを発見するのは、至難の業になったからだ。

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