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わずか1年で紙媒体を電撃復帰させるニューズウィークの思惑

小笠原亮(ドコモ・ドットコム)2013年12月16日 11時39分
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 米国の大手誌「ニューズウィーク」が、紙媒体として復活することが先日発表された。2012年10月18日に、紙媒体としての発行を2012年末で終了すると発表し、2013年から電子版のみの発行体制へ移行したのだが、わずか約1年で電子版と紙媒体が共存する形に戻ることになる。正直かなり驚いたと共に、電子版だけではかなり厳しかったのだろう、という印象を抱いた。

 以前当コラムにおいて記載したとおり、海外においては新聞や経済誌などの電子化が進んできた。英国の「Financial Times」や米国の「Wall Street Journal」など、電子版へ完全移行し、多くの有料会員を保有するケースも存在している。海外におけるタブレット所有率の高さもあってか、日本以上に電子新聞・書籍の普及が進んでいると感じていたのだが、全てがうまくいっているわけではない模様だ。

 復活するニューズウィーク紙媒体は、初年度で10万部の発行、広告収入よりも定期購読からの売上を見込んでいるとのことだが、あまりに早いこの方針変換には、正直戸惑いを覚える人も多いだろう。電子版移行前には紙媒体で年間100万部を超える発行数を記録していたとのことだが、数字面でみても迷走感は否めないところだ。

 一方、日本における新聞・電子書籍媒体の利用傾向に変化はあるのか。弊社が2013年10月に独自調査した結果から見ると、依然として無料にてニュース媒体を読む傾向が高く示されている。スマートフォンで利用するコンテンツジャンルとして、「ニュース」はウェブサイトで2番目に高い利用率を示し(無料で56.2%、有料で10.1%)、アプリでも5番目に高い利用率(無料で31.1%、有料で1.4%)を示している。ただし、「電子書籍」となると、ウェブサイト、アプリ共に無料でも約6%の利用にとどまり、「ビジネス・金融」ジャンルとなると、約5%までその利用率は下がる。

 国内ではニューズウィークを含むさまざまなニュース・ビジネス誌が誌面と電子版のどちらもリリースしていることからも、まだまだ電子版への移行は進んでいないと感じられる。ニーズ・利用共に高いものの、ポータルサイトなどで無料閲覧できるニュースコーナー利用などにとどまっている模様だ。

 また書籍の購読に最適と思われるタブレット端末についても、昨年末の盛り上がり以降、日本国内ではあまり大きな話題にならなかった感がある。その所有率は弊社独自調査から見ても、ここ1年間で倍増してはいるものの、2013年10月時点で16.6%の所有率にとどまっている状況をみると、なかなか普及していないといわざるを得ないだろう。

 ニューズウィークに話を戻すと、今回の紙媒体はプレミアム版、特化型商品と位置づけている模様で、高価格にて一部の熱い支持層を狙うとのことである。日本においても、アニメ、ゲーム、音楽などさまざまなジャンルにおいて、ニッチ層、コア層に対して高い顧客単価を狙ったビジネスモデルが存在しているが、そのモデルに近い形なのではないかと感じられた。ただしその場合、当然ながら通常版との明確な差別化が必要となる。ニューズウィーク電子版と紙媒体との間で、どのような差別化が図られるかが注目である。他誌では読むことの出来ない、オリジナルで興味をそそる独自取材記事に満ち溢れていれば非常に面白そうである。

 以前当欄にて、アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏による「ワシントン・ポスト買収」について書かせて頂き、今後の展開についての期待感を述べたが、電子化への移行が進む出版業界において、逆行するような動きが出現したのは興味深い。今回のニューズウィーク誌の動きが吉と出るか、今後の動向に注目である。

◇ドコモ・ドットコム
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