「Yahoo!ショッピング」の革命に大きな期待--市場活性化と反撃

小笠原亮(ドコモ・ドットコム)2013年10月15日 12時14分

 ヤフーが10月7日、「Yahoo!ショッピング」の出店料及び売上ロイヤルティの無料化、加えて「ヤフオク!」のストア出店料、出品手数料の無料化を発表した。これにより、早くも2日後の9日には、「Yahoo!ショッピング」の出店希望数が通常の数百倍となる約1万件に達し、新たに受付を開始した個人の出店希望数も約16000件に達したとのことである。

  • EC領域の新戦略を10月7日に発表したヤフー

 正直、今回の「eコマースに革命を起こします」と銘打たれた、各種の無料化施策には驚いた。と同時に、どのように収益を確保するのか、という点が気になった。「革命」というキーワードを打ち出していることからもわかるように、大胆な施策であるのは間違いない。しかも開始直後に多くの出店希望を集めるなど、その反応の大きさと出店側の期待の大きさが窺える。

 弊社の独自調査として、2012年8月に実施した「ECサービス調査」では、スマートフォンで利用するECサイト/アプリについて質問しているが、ここにおいて「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」を利用しているという回答者数は、「楽天市場」「Amazon」に次いで3位という結果であった(全体の46.9%が利用していると回答)。「楽天市場」「Amazon」を利用しているという回答者は、それぞれ全体の約8割に達していることから、「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」は大きく水をあけられての3位という結果であった。

 こういった状況を打破すべく、今回の施策に至ったと推測されるが、開始早々売り手側である出店希望数が大きく増加したこと、また今後も出店数の増加が見込まれることから、商品の充実、マーケットの充実、そしてEC利用者にとって満足しうるマーケットの形成が期待される。注目の収益確保の手段としては、広告収益を主軸にしているということであるが、すぐにとはいかないまでも、マーケットの活性化によりアクセスが大きく伸び、結果、中長期的に大きな広告収益が見込めるという流れは期待できるのではないか。

 今や、ECサービスはPC、モバイル、タブレットなどマルチデバイス上で利用されているサービスである。利用の主流デバイスはいまだPCではあるが、最近はスマートフォンの普及に伴い、モバイル上での利用も高まっている。MCF(モバイル・コンテンツ・フォーラム)が2013年7月に発表した、モバイル上でのECサービス売上高の推移を見ると、スマートフォン端末の普及に伴い、物販系EC市場が2011年以降大きく伸びている。2012年には6878億円を記録しており、今後も大きく伸びることが予想される。

 前述の弊社「ECサービス調査」によると、特に10~30代といった若年層において、スマートフォンでのECサービス利用が高い。若年層のPC離れが感じられる結果だが、従来「Yahoo!ショッピング」では、スマートフォンやタブレットからの購入時に、より多くのポイントが付与される仕掛けをしており、買い物ポイントなどに敏感な若年層を中心に、スマートフォンやタブレットからの利用を促進している印象がある。

 これに加え、今回の無料化施策による効果は当然ながらスマートフォンからでも享受することが出来るため、スマートフォンユーザーによる「Yahoo!ショッピング」および「ヤフオク!」の利用が加速するのではと期待される。また、調査時に不満項目として挙がっていた、「ページの読み込み速度が遅い」などといった部分も、各キャリアがアピール合戦を繰り広げている通信環境整備により解消されると思われるため、スマートフォンでの利用がより促進されるのではないか。「リンクボタンが押しづらい」「商品の画像が見づらい」などといった、その他の不満項目も解消するなど、ビジネスモデルの革命に加え、ユーザーインターフェース面などの改革にも期待したいところである。

 出店料および売上ロイヤルティの無料化は、今後どの程度まで出店数を確保し、マーケット自体を活性化させることが出来るのか、そして楽天市場やAmazonといった競合他社に対してどの程度まで影響を与えることが出来るのか。競合他社も当然ながら黙って見ているとは思えず、事実Amazonはこの動きを受けたわけではないだろうが、メーカーとのコラボレーションで実現した商品を販売する「Amazon.co.jp 限定商品ストア」を10月10日にオープンし、新たな魅力、価値を生み出そうとしている。

 とはいえ、ECサービスのビジネスモデルに大きな一石を投じた今回の「Yahoo!ショッピング」の動きは、その影響も大きいと予想されることから、要注目である。そして携帯ビジネスにおいても大胆な施策を次々に展開してきた孫正義氏の改革力に改めて感服しつつ、本施策でも成功を収めるのか、期待と共に動向を見据えたい。

◇ドコモ・ドットコム
モバイル(スマートフォン・タブレット及びフィーチャーフォン)を活用したビジネスに関するコンサルティング事業を軸に、企業プロモーション・マーケティング企画をはじめとした新たなビジネス開発事業を展開。
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