対談の多くは、エンタープライズへの拡大に割かれた。「(Dropboxは)コンシューマーからエンタープライズに拡大している」というRooney氏の言葉に対し、Houston氏は「あまり理解されていないが、Dropboxは最初から個人利用と企業の両方を狙っていた。自分自身が仕事をする上で感じた問題を解決することが起業のきっかけ――つまり、仕事に使えるサービスとしてスタートした」と返す。
「エンタープライズはDNA」と述べるHouston氏に対し、「金融や政府など機密性の高いところでのDropboxの利用が深刻な問題になっている」とRooney氏。Houston氏によると、Dropboxの戦略は“(組織の)ITに受け入れられるようにする”ことだ。「コンシューマーと同じように、ITが使って楽しいと思えるサービスにする」とHouston氏。具体的には、Dropboxのシンプルさ、使いやすさなどの体験を維持しつつ、シングルサインオン、共有設定などの機能を構築しているという。
同時に、ITが抱える問題を次のように指摘した。「ITは(1)スタッフの生産性を上げる、(2)ロックアウトして企業の情報を保護する――という2つの任務がある。この2つの間で衝突があり、現在はどちらかを選ばなければならない。だが、われわれは両立可能だと考える」(Houston氏)。
安全性については、「常に改善に向けて強化、開発している」と述べる。インターネットショッピングが登場した当初、クレジットカード入力に抵抗があったが少しずつ緩和されていったように、オンラインでファイルを保存することについても懸念や不安が少しずつ解消されるだろうと展望した。
なお、米国の国家安全保障局(NSA)のPRISM監視プログラムについては、「Dropboxは参加していない」と断言した。信頼性は創業時からの目標であり、政府からの要請があったときは内容を調べてポリシーに基づき対応しているという。また、透明性改善のためにGoogleらと協力して戦っていくとも述べた。
別のセッションではDropboxの欧州担当トップのJohann Butting氏が、エンタープライズ戦略について説明した。Butting氏によると、Dropboxはすでに200万社で利用されており、Fortune500社の95%がユーザーという。これらの企業から最も多く寄せられる意見が「もっと管理機能が欲しい」というもので、可視性、制御や管理などにフォーカスして機能開発を進めていると述べた。セキュリティについては、単一の企業では難しい規模での大型投資をしており「オンプレミスよりも安全でない、とは思わない」とした。
Butting氏が強調するのは、「ファイル共有」ではなく「ファイル同期」だ。「われわれは自社のことを“なにかを保存するサービス”というより、“デバイス間で同期するサービス”と見ている」とButting氏。先のAPI公開もこの考えを土台にしているという。
同期や共有の対象についても、「ファイルやフォルダを超えたところを考えている」と述べ、ToDoリスト、コンタクトリスト、最後のセッションを他の端末でスムーズに連携するなどのことを実現していきたいと続けた。「アプリケーションはすべて、デバイスを超えて利用されるようになる。データをどうやってある端末から次の端末にシームレスに利用できるようにするのかが大切だ」と今後の方向性を伺わせた。
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