NTTコミュニケーションズが、10月24、25日に開催した、同社のサービス、ソリューション、最新技術動向などを広く紹介する「NTT Communications Forum 2013」の特別講演では、ガートナー ジャパン リサーチ部門 バイスプレジデント田崎堅志氏が「キャリアのクラウド・サービス:企業が見落としてはいけないプロバイダーの特性」と題し、キャリア系IaaSの特徴や課題などを通じ、企業がキャリアクラウドを選択する際の要点などについて解説した。
クラウドサービスを提供する事業者には、いくつかの類型がある。田崎氏によれば、「国内のクラウドプレーヤーは大別して、4つに分類できる」という。
(1)クラウドネイティブ:AmazonやGoogleなどに代表される、規模の経済による優位性をもち、技術の先進性に伴う先行者利益などが特徴だ。
(2)テクノロジープロバイダー:富士通、IBM、マイクロソフトなど、これまで、ICT産業を先導してきたベンダーであり、先端的な技術を保有しており、厚い顧客基盤を活かしているが、クラウドの隆盛は、これら各社の既存事業を破壊しかねない可能性がある。
(3)データセンター事業者:ビットアイル、Equinixなど、データセンターを施設として提供し、他のさまざまな事業者がこれを活用する、という形態が中心となる。
(4)キャリア:NTTグループ、KDDI、Verizon、BTなどのような通信事業者だ。これらの企業は、広域ネットワークを擁し、やはり規模の経済の強みがあり、財務面が安定しており、人的資源も充実している。分類により「プレーヤーごとの差異が徐々に見えてくる」(田崎氏)のだという。
田崎氏は、キャリアクラウドに注目する理由を3点挙げた。まず「スケール・ビジネス」という観点だ。これは、いうなれば薄利多売の形式となる。「これまでのITビジネスは、企業ごとに個別のシステムを構築する、さながら熟練大工による注文建築のようなものだった。一方、クラウドはいわばマンション。標準化された要素、サービスにより構築される。標準化されているものだから、安く早期に利用できる」(田崎氏)。キャリアの事業は、やはり、標準化サービスを提供し、従量課金であるなど、スケールビジネスとの類似点があるという。
2つ目は、「ユーティリティーサービスの提供能力」だ。これは、電力、ガス、水道などのように、24時間365日止めることができないものなのだが、「クラウドの本質は、ユーティリティサービスと同様に、多数のユーザーに、標準化されたサービスを従量課金で提供する。通信事業者もまさにユーティリティサービスであり、このサービスの提供能力を培ってきた。また、クラウドにとって重要な要素であるネットワークのインフラをもっている」と田崎氏は指摘、「ユーザーは、高い性能やコスト効果を享受できる可能性がある」とする。
3つ目は、「新たな成長へのフォーカス」であるという。電話を扱う事業者は、音声サービスについて、無料のインターネット電話などに市場を侵食され、縮小している。とはいえ、データ通信サービスの価格を大幅に上昇させるわけにはいかない。既存の領域だけでは、成長を期待することは難しくなる。クラウドは、新しい市場であり、皆がスタートラインについたところであり、参入へのハードルが低い。田崎氏は「テクノロジプロバイダーは、クラウドが、既存のビジネスをつぶしかねないことから、思いきれないジレンマがある。しかし、キャリアには、そのような状況にはなく、本来あるべき、クラウドIaaSを提供できる可能性がある」と語る。
一方、田崎氏は、キャリアクラウドへの懸念にも言及した。「クラウド自体が発展途上で、IaaSの技術も、従来とは異なった領域であり、キャリアもアプリケーションやITインフラ開発では経験を積まなければならない」と指摘する。ネットワーク技術が強みだが、それが活かされるのはこれから先であり、過度に期待することには注意が必要だ。継続的にみることが重要」(田崎氏)と述べた。
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