では、ユーザーとしての企業はどうするべきか。田崎氏は「キャリア各社の展開するサービスはIaaSが中核で、ホスティング、マネージドサービス、データセンター、ネットワークなど、いくつかのコンポーネントを組み合わせており、この点はどのキャリアも同様だ。注力している分野、技術に、それぞれ相違点があり、そこが差別化ポイント」とする。
差別化の争点として、中心となるのは、クラウドへのネットワーク接続コストだが、WANや複合環境も守備範囲とするようなセルフサービスポータルを提供したり、運用管理サービスを付加価値として訴求したりする場合などもある。だが、運用管理サービスは、とにかくカスタマイズを勧められたり、標準サービスが使いづらいものであったり、サービス、メニューの間に一貫性がなかったり、といった場合もあることが考えられるという。田崎氏は「同じようなサービスであっても、キャリアごとに考え方が異なり、力の入れ方には差があるため、慎重に見極めるべき」としている。
実際のキャリアクラウドの例として、田崎氏はNTTコミュニケーションズ、KDDI、IIJを挙げて解説した。
「NTTコミュニケーションズは一言でいえば、グローバルだ。世界各地に拠点網を広げ、グローバル展開をしている日本企業を支援できる企業。資金力、技術力を集中してグローバル展開に取り組んでおり、セルフサービスポータルやセキュリティサービスなども充実しているが、NTTグループ内部での調整が今後の課題だ」(田崎氏)という。
KDDIは「デバイス、モバイル、クラウドの3つを統合的に提供している」(田崎氏)ことが特徴であるとともに、プライベートクラウドにも強みがあり、個別ニーズに応えているが、田崎氏は「テクノロジーにおいて外部ベンダーへの依存度が高いほか、サービスポートフォリオや、地域間での一貫性に欠ける点もある」とみている。
IIJは、スモールスタートから、高度なシステムまでをカバーし、コンテナ型データセンターの活用、オンデマンドサービスを2000年から展開しているなど実績がある。田崎氏は「高い技術力を有している」と評価する一方「業務システムユーザーの取り込みに注力腐心するあまり、新規性や革新性のアピールがそれほど見えなくなっている」と指摘した。
これら各社は、技術のどのような分野に焦点を当てるか、戦略が異なる。ユーザー企業はどこに注意するべきか。キャリアそれぞれの強い点を見極め「それらが自社の要件に適合しているかどうか把握する」(田崎氏)ことがまず前提となる。クラウドは市場全体が発展途上であるため、「キャリアの立ち位置は変化しやすい。ユーザー企業は、キャリアがユニークな立場を維持できているか、継続的に状況を観察していく必要」(同)がある。
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田崎氏は最後に、ガートナーの提言として「IaaSを検討する際、キャリアを候補に加える」、「キャリアに限らず、プレイヤーの特性を理解し、クラウド市場との親和性、従来環境からの移行戦略、取り組みを把握・評価する」、「各プレイヤーのビジョン、サービス、技術への投資姿勢を評価基準に加える」の3点を挙げ、ユーザー企業がキャリアクラウドを選ぶ場合の指標を示した。
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