「国内企業のグローバル展開をクラウドで支援する」。こうした方向性を示し、NTTコミュニケーションズは「グローバルクラウドビジョン」というクラウド戦略を掲げている。ユーザー企業側が期待する通信キャリアならではの強みは、同社のサービスに具体的にどう現れているのか。今後の事業展開の方向性とあわせて、NTTコミュニケーションズのクラウドサービス部 ホスティング&プラットフォームサービス部門 担当部長である和泉雅彦氏に聞いた。
グローバル展開する企業から聞かれるIT統制の課題として、海外現地法人のIT環境が国内とは異なるため、ガバナンスが効かない状態だったり、拠点ごとにばらばらに構築したシステムによって運用管理コストが積み上がったりといた声は少なくない。そうした課題を解決するのはクラウドなのだが、海外や国内拠点に分散したシステムをしっかりと統合できなければ、構築や管理、運用にかかる全体のコストは削減できないだろう。
こうした課題をクリアし、国境をまたいだITインフラの構築を成功に導くため、同社はどうようなクラウドサービスを展開しているのか。NTTコミュニケーションズの和泉雅彦氏は、「ネットワークやデータセンターなどのインフラから、サーバ、アプリケーションに至るまでのクラウドサービスを、エンド・ツー・エンドかつワンストップで、グローバルシームレスに提供している」と強調する。
同社のデータセンターは世界145拠点に散在し、今後も増強を続けていく予定だ。ネットワークの強みとしては、アジアで唯一、Tier1のISPであり、グローバル規模のIPバックボーン「NTTコミュニケーションズグローバルIPネットワーク」を運用する。その高品質な回線を利用したVPNサービス「Arcstar Universal One」は世界159カ国で提供中だ。海底ケーブルの拡充なども進めている。こうしたネットワークインフラ面の強みをいかし、2012年3月にパブリッククラウド「Bizホスティング Cloud n」の提供を開始。このサービスはAmazon Web Servicesの対抗として、Amazon互換APIを含む150以上のAPIを備えているのが特徴だ。
そして2012年6月に、企業向のプライベートクラウド構築を支援する柱となるサービス、「Bizホスティング Enterprise Cloud」(以下、BHEC)を開始した。BHECはフルレイヤに仮想化技術を採用し、仮想ネットワークを世界で始めて商用導入したことでも話題となった。このBHECの提供をグローバルで均質化していくのが、当面の大きな注力点の1つと和泉雅彦氏は説明する。
「現在は日本の他、米国(サンノゼ、スターリン)、英国(ロンドン)、香港(タイポ)、シンガポール(セラングーン)でサービスを提供しているが、2013年中にはオーストラリア(シドニー)、タイ(バンナー)、マレーシア(サイバージャヤ)にも拡大、合計8カ国9拠点での展開となる。顧客企業のグローバル展開に応じて、さらにきめ細かいグローバルフットプリントの拡大も計画している」(和泉氏)という。
このほか仮想ネットワークをベースにオンプレミスのシステムのクラウド化を支援する「クラウドマイグレーションサービス」で、プライベートクラウド活用をさらに推進する予定もある。BHECの仮想ネットワークをユーザー企業側のゲートウェイに張り出すことで、IPアドレスを変更せずに従来のアプリケーション体系のままクラウド環境にスムーズに移行できるようになる。
クラウドの適用領域を拡大するため、ミドルウェアのクラウド化も進めるという。その1つがビッグデータ分析基盤の提供だ。データ格納とデータ処理ソフトウェアを共有仮想基盤上で動作できるようにして、BIやHadoop関連のソフトウェアを自由にクラウド上に導入可能にするための技術検証を進める。もう1つはクリティカルシステム向けデータベースの提供だ。これは、企業の利用ニーズに適したクラスタ構成でOracleやMicrosoft SQL Serverをサービス化するものだ。
後編では、「BHECは法人ニーズに適したプライベートクラウド」と同社が強調する理由を、さらに詳しく聞いていく。
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