ここで、前出のiCarBoxに話は戻るが、ユーザーにSMSを通じてキーを解除するためのリンク付きのウェブページの情報が送られる。オーナーが指定する車の駐車スペースに行き、リンクをクリックすることでロックが解除される。施錠も同様にクリックひとつ。スマートフォンで送られるSMSのメッセージがキーの代わりになるのだ。
車を借りるときに面倒なのがガソリンの補充だが、iCarsClubでも残量が4分の1以下になった場合には補充しなければならないルールがある。しかしユーザーは、ガソリンスタンドで料金を支払う必要はない。車に備え付けられたキットに装着されているiFuelCardを使ってその場で支払い、後日レンタル料金の請求時にまとめて支払うことができる。車の走行距離や燃費に応じてガソリンの料金は自動で計算される仕組みだ。
レンタル期間を延長したいときもiCarsClubのサイト上で申込める。しない場合は、車をピックアップした場所に駐車し、施錠すれば終了だ。またレンタルした車を運転できるのは、保険適用の観点から原則として申込をしたユーザーのみ。万が一、レンタルしている車で事故を起こしてしまった場合には、対人、対物向けの保険、オーナーへの補償が条件、また上限付きで適用される。個人間の契約がなされるカーシェアリングサービスの場合、こうした補償に関するルールを事務局が整備してくれるのは、サービス利用者の安心につながるだろう。
シンガポールには、iCarsClubの成長の下支えとなる大きく2つの社会的背景がある。1つは、車が高額であることだ。シンガポールでは、運転免許の取得と、車本体の購入以外に、COE(Certificate of Entitlement:車両購入権)、つまり車を購入するために必要な権利を購入しなければならない。これは国土の狭い同国において社会問題となっている交通渋滞を緩和するために、車の所有を制限しようとする政策である。
9月にChannel NewsAsiaが報じたところによると、COEの価格は小型車で8万3751シンガポールドル、大型車で8万6239シンガポールドル、車のサイズを問わないオープンな権利では8万7001シンガポールドルにもおよぶ。この価格はそのときの情勢に応じて変動するが、最近は上昇傾向にある。さらにこの価格に車本体の価格も上乗せされるため、一般的な家庭にとって車はそう簡単に買えるものではなくなりつつあるのだ。
もう1つはシンガポールに暮らす若者の価値観の変化である。前述の通り車は高額であるがゆえに、成長著しい同国で車を所有することはステータスになり得るが、一方で、iCarsClubのCountry ManagerであるClifford Teo氏によると、「環境やサステナビリティを重視する価値観を持つ若者も増え始めている」という。車を所有したいという旧来型の価値観はこのサービスにおけるオーナーを生み、レンタルで済ませることで環境などに配慮したいという新しい価値観がユーザーを生む。いずれもサービスのユーザーコミュニティを育てる重要なファクタと言えるだろう。
iCarsClubは、2013年末までに北京で、そして2014年には上海でローカライズしたサービスをローンチする予定だ。カーシェアリング市場の高度化において一歩先んじていると言われる米国企業による参入を先回りし、アジアの市場を開拓したい考えだ。
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