KDDIと幻冬舎は10月16日、スマートデバイス向けの電子書籍ストア「ブックパス」において、人気作家のオリジナル小説などを独占配信することを発表した。第1弾として作家・三崎亜記氏の最新小説「イマジナリー・ライフレポート」を読み放題プランで提供する。
ブックパスは、月額590円で7000冊以上の小説、コミック、写真集などが読み放題となる「読み放題プラン」と、好きなタイトルだけを選んで購入できる「アラカルト購入」によって構成されている。ユーザー数は非公開だが、現在はコミックの利用者が全体の約7割を占めていることから、今回の取り組みを通じて、小説など他のジャンルの読者も増やしていきたい狙いがあるという。
KDDI 新規事業統括本部の繁田光平氏は「auスマートパスには800万のユーザーがいる。スマートパスのタイムラインの中で(ブックパスの)三崎先生の作品が表示され、気がついたらタップして読み進めている──。そのように、これまで我々がアプローチしづらかった方々にも、改めて電子書籍を含めた書籍というものに向き合っていただきたい」と、新施策への期待を語る。
三崎氏の最新作であるイマジナリー・ライフレポートは10月16日から配信を開始。全6話(12回)となっており、第3話以降はブックパスのみで独占配信する。毎月上旬に続きを配信し、2014年12月に連載が終了する予定。連載終了後には、通常の書籍としても販売するという。また、これまでアラカルト購入でしか読めなかった同氏の作品「玉磨き」を読み放題プランで配信する。
三崎氏は、ブックパスへの独占配信を決めた理由について「新聞とスマホのそれぞれでニュースを見るというのはまったくの別物として考えられているが、小説や本を(電子書籍として)読むことについては、紙媒体と比べてどうかというイメージがまだまだ強い。そうではなく『スマホで本を読むのは普通のこと』、と思ってもらえる、その一助に自分の小説がなれればいいと思った」と語る。
また書籍の未来について尋ねられると、当面は紙と電子の書籍が併存し、どちらかがすぐに淘汰されることはないだろうという見解を示す一方で、作家はどちらに重点を置いて書籍を執筆していくのかを考えていく必要があると話す。ただし、電子書籍だからといって特別な表現などにこだわるべきではないとの持論を展開した。
「いまの消費者はすごく感度が高く、こちらから『こういう人にはこういうものがウケるでしょ』と提示するとかえって引かれてしまうのかなと思っている。それだったら、自分が面白いと思うものを突き詰めて、こんな形でどうですかと毎回提示した方が、ある意味惨敗してしまったとしても自分としては納得できると思っている」(三崎氏)。
さらにブックパスでは今後、有名作家8人(三崎氏は不参加)が執筆したオリジナルの恋愛アンソロジーを、2014年1~8月にかけて毎月1話ずつ読み放題プランで配信する。アンソロジー(作品集)のテーマは、10月16日~11月6日にかけて「au スマパス総会」でのユーザー投票によって決めるという。今後発表される作家や小説の内容、執筆状況などは「ブックパス幻冬舎企画特設サイト」で確認できる。
幻冬舎 常務執行役員の永島賞二氏は「活字離れと言われているが、スマホが普及して実は昔よりも活字は読まれている。それなのに本の売上げが上がらないのは、ネットにいる方に『書籍の世界ってこんなに面白いんだ』と気づいてもらえていないから。『本です』というとハードルが上がってしまうかもしれないので、何となく読んでいて気づいたら実は本だったというアプローチでも全然構わないと思っている」と、ブックパスでのコンテンツ配信に対する意気込みを語った。
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