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「ジャンプLIVE」でウェブ漫画でも“定番”に--集英社のデジタル戦略

藤井涼 (編集部)2013年09月17日 11時00分
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 DRAGON BALL、キン肉マン、SLAM DUNK、ONE PIECE――誰もが知る数々の名作を生み出し、長年にわたり漫画雑誌の“定番”として不動の地位を築いている週刊少年ジャンプ。

  • iPhone版「ジャンプLIVE」のトップ画面

    (C)SHUEISHA Inc. All rights reserved.

 このジャンプの“アプリ増刊”という位置づけで、8月に集英社初のデジタル版マンガ誌「ジャンプLIVE」(iOS/Android)が公開された。ジャンプ連載作家の描き下ろし新連載のほか、オリジナル動画やミニゲーム、壁紙配信など、デジタルならではの実験的な試みを随所に取り入れたアプリで、同社の本気度を伺わせる充実した内容となっている。

 たとえば、「ピューと吹く!ジャガー」の作者・うすた京介氏が、数回にわたりマスコットキャラのアイデアを募集する「うすた先生の駄目なマスコットキャラをみんなで何とかしよう企画」(全5回)は、最終回で読者のアイデアを基にした描き下ろしキャラが登場する漫画を読めるユーザー参加型のコンテンツだ。また、「ジョジョの奇妙な冒険」の作者・荒木飛呂彦氏が、「暗殺教室」の作者・松井優征氏に手作りパスタを振舞う特別動画「JOJO's Kitchen 荒木飛呂彦パスタを作る」も、ファンならタイトルを見ただけで迷わず飛びついてしまう企画だろう。

  • 「うすた先生の駄目なマスコットキャラをみんなで何とかしよう企画」

    (C)うすた京介/集英社

 ジャンプLIVEは、8月1~31日の1カ月限定で提供し、毎日新しい漫画を更新(配信終了後もコンテンツは閲覧可能)。アプリ自体は無料でダウンロードでき、DRAGON BALLのカラー版など、無料で閲覧できるコンテンツも多数用意した。また、ジャンプLIVE独自のコンテンツは250円(8月7日までは100円に値下げ)の有料パスを購入することで、すべて閲覧できるようにした。

 集英社によれば、ジャンプLIVEは1カ月間で35万ダウンロードを超え、そのうち1割以上のユーザーが有料パスを購入したのだという。またアンケートによると、主なユーザー層はジャンプのターゲット層と一致する10代が中心で、特に15歳前後がボリュームゾーンとなった。年齢的にまだスマートフォンを購入できない読者も多いためか、全ユーザーの利用端末のうち約2割がiPod touchという意外な結果も得ることができたという。

 「ジャンプLIVEユーザーの多くが、紙のジャンプの読者であることも分かった。そこは我々の強みでもあるので、今後に生かしていきたい」――週刊少年ジャンプ副編集長の細野修平氏は、初のデジタル版マンガ誌への反響の大きさに手応えを感じている。すでに今冬には第2弾の配信が決まっており、ジャンプLIVE作品のコミック化も計画中だ。

デジタルな試みは「作家が提案してくれた」

 ジャンプLIVEの提供に至った背景には、2012年に公開した電子コミックアプリ「ジャンプBOOKストア!」 の予想を超えるヒットがある。「スマートフォンの普及などもあり昨年が本当の意味で電子書籍元年だったのかなと思う。(ジャンプBOOKストア!のヒットで)ここには読者がいると確信し、そこに対して新しい取り組みができないか模索していた中の1つがジャンプLIVEだった」(細野氏)。

  • 週刊少年ジャンプ副編集長の細野修平氏(左)と同社デジタル事業部の籾山悠太氏(右)

 ジャンプLIVEの企画が動き始めたのは2月。当初は発案者の役員社員と細野氏、デジタル事業部の籾山悠太氏の3人でプロジェクトが始動した。そこに、6月から複数の編集部のメンバーが新たに5人加わり、8人体制でアプリやコンテンツを制作した。「夏休みに間に合わせる」(細野氏)ために、公開時期は8月に決めた。

 先ほど少し紹介したが、ジャンプLIVEにはデジタル版マンガ誌ならではの、さまざまな仕掛けやコンテンツを盛り込んだ。たとえば、テニスの王子様の作者・許斐剛氏の新作「LADY COOL」(全8話)は、1話の終わりごとに2択の選択肢が登場し、読者の投票によって次回の展開が決定する意欲作だ。

 「むしろ作家さんから提案してくれた企画も多い。LADY COOLの選択方式は当初から案があったが、作家さんが大変だろうということで編集部でボツにしたところ、許斐先生の方からやりたいと言っていただいた」(細野氏)。

JOJO's Kitchenで荒木先生が手料理を披露

 特別動画「JOJO's Kitchen 荒木飛呂彦パスタを作る」も、荒木氏が自ら提案して実現したコンテンツだ。細野氏によれば「荒木先生にご相談に行ったところ、いろいろな企画が持ち上がったが、その中の1つとしてパスタ動画の案が出た」という。

 ジョジョの奇妙な冒険には、第2部の「イカスミスパゲティ」(ジョナサン・ジョースターとシーザー・A・ツェペリの出会いのシーン)や、第4部の「娼婦風スパゲティ」(料理人トニオ・トラサルディーが振る舞うパスタ)、第5部の名ゼリフ「こいつにスパゲティを食わしてやりたいんですが かまいませんね!!」(自分に運ばれたスパゲティをナランチャに差し出すフーゴ)など、パスタに縁のあるシーンが多い。

 また、荒木氏自身も過去に「好きな食べ物はスパゲティ」と語っており、講演会限定で荒木氏がパスタを作る映像が披露されたことはあったが、一部のファンの目にしか触れることはなかった。そのため、JOJO's Kitchenを目当てにジャンプLIVEをダウンロードしたという人も多いはずだ。さらに、荒木氏特製のパスタを試食した松井氏が後日、その時の心境を漫画で紹介するなど横展開にも広がりを見せた。

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