さまざまな実験的なコンテンツが人気を博したジャンプLIVEだが、その中でもやはり支持されたのは漫画コンテンツだったという。雑誌のように1話ごとのページ制限がないため、作家もストーリーに合わせて好みのページ数で描くことができた。たとえば「エルドライブ【ēlDLIVE】」は、「家庭教師ヒットマン REBORN!」の作者・天野明氏が手がけるオールカラー新作だが、全3話(Season1)にも関わらず180ページを超える大作となっている。
また、石田スイ氏作の「東京喰種トーキョーグール[JACK]」は、週刊ヤングジャンプで連載中の人気漫画「東京喰種トーキョーグール」の番外編で、作中ではあまり触れられていないエース捜査官・有馬の過去を知ることができる。「石田さんはもともとウェブ漫画出身の作家さんだったこともあり、余白を上手く生かすなど、デジタルならではの表現をされていた」(籾山氏)。なお、アプリの本更新は終わっているが、同作のみ9月中旬まで連載していた。
当初から“毎日更新”をサービスコンセプトにしていたジャンプLIVEだが「やはり進行管理は一番大変だった」と細野氏は当時の苦労を振り返る。「どの作品がいつ上がってきて、いつ更新できるのか、我々もまだ感覚として掴めていない。漫画だけでなく動画やゲームなどもあり、それぞれの配信のタイミングも異なるので最初は少しパニックになった(笑)」。
集英社にとっては実験的な側面も強かったジャンプLIVEであるが、累計35万ダウンロード、課金率1割というのは同社にとって予想外な数字だったようだ。「ダウンロード数も課金者数も正直もっと少ないと思っていて、想定していたよりも遥かに多くの人に利用していただけて良かった」(細野氏)。
現時点では、アプリ内課金での収益化は考えておらず、まずは多くの人にデジタル漫画を読んでもらう習慣をつけていきたいという。また、第2号以降の課金状況や、紙と電子書籍でそれぞれ販売する予定の第1弾のコミックの売上げなどを加味しながら「デジタルだけで採算がとれるのかどうかを見ていきたい」(細野氏)としている。
ところで、デジタルコンテンツについて回るのが違法コピーの問題だ。スマートフォンやタブレットには、ボタンを押すだけで画面のスクリーンショットを撮ることができる機種も少なくない。この点については「コピーガードを強固にすることに労力を費やすのではなく、より面白いコンテンツを提供することに注力したい」(細野氏)と、厳しい規制などはしない方針だ。
冬に配信する予定の第2弾には、第1号の読者からのアンケートやフィードバックを反映し「さらに楽しんでもらえるコンテンツを充実させたい」と細野氏は意気込む。そのアイデアのひとつがリアルとの連動だ。たとえば、集英社が毎年開催している「ジャンプフェスタ」のようなイベントなどと連動する企画ができないか検討中だという。
また、籾山氏は「まだスマートフォン向けでは、みんなが定期的に漫画を読みにくるようなサービスがない」と指摘。ジャンプLIVEを紙のジャンプと同様に“定番”の漫画サービスへと成長させていきたいと力を込めた。
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