14年愛されたゲームの秘密--PS Vita「俺の屍を越えてゆけ2」ゲームデザイナー桝田省治氏に聞く - (page 3)

 商売として見るなら、確かにプラットフォームがたくさんあるような状態ですし、ゲーム専用機での大きなヒットが出にくくなっていて作るのが大変だと思うところはあります。それはユーザーには関係のない話かなと。振り返ればそれこそファミコンからいろんなゲームハードが出て、それぞれに機能は違っていて、ユーザーも違ってる。だから作り手としてもあまり気にならないことです。ただ個人的には、射幸心をあおるような形でお金を投入させ続けるシステムのゲームは好きではないですね。

--基本無料のタイトルで、マネタイズをガチャにするというのも携帯電話やスマートデバイスでのゲームで主流になっています。また、売り上げと面白さの追求のはざまで揺れ動く作り手側の話も聞きます。

 会社は利益を確保しなければいけないし、商売として考えるべき人は必要ですよ。僕みたいなのに任せっぱなしで作らせてたらお金ばっかりつぎ込むし(笑)、それで一部の人には絶賛されても赤字が大きくて会社が傾いたら困るわけですから。でも、たとえば僕を含めてチームでゲームを作っていて、商売として成り立たせることについては、僕じゃない人が考えればいいだけの話です。クリエーターがお金周りまで意識して考えはじめると、ゲームが面白くなくなっちゃうでしょう。

 確かにたくさんゲームが売れてすごくもうかったほうがうれしいという気持ちはあるし、最終的には遊ぶ側が満足すればいいんだけど、それで7桁ものお金を使ったという話を聞くと、もっと違うことに使ったほうがいいんじゃないと思ってしまうんですよね。それにそんなゲームを自分で作りたいかというと、もっと別の、面白いことをやりたいなと思うんです。

 僕の趣味というか楽しみは、実験をすることなんです。「こういうことをしたら面白いと思うけど、本当に面白いかどうか試してみたいから、誰かお金をだしてください」という(笑)。面白かったのならそれはそれでいいし、仮に失敗しても、それはダメだったという実験としての結果が出るわけじゃないですか。そこで満足してしまうんです。その意味でいくとリメイクや続編を作ることは好きではないとまでは言わないですけど、経営的な面が強く見えてしまうところがあるんですよね。でも僕がやるからには、やはり新しい楽しさの提案はしていきます。

--「俺屍」を知らなかった方に向けた、「俺屍2」のアピールポイントはどこでしょうか。

 前作はもともと据え置きゲーム機向けでしたし、その後リメイク版ではPSPになりましたけど、通勤や通学向けに楽しむという観点でもかなり遊びやすくなっていると思います。1回の冒険の時間も短くしていますし、便利な機能も付けていますので、30分あればお昼休みでも楽しめると思います。

  • (C)Sony Computer Entertainment Inc.

 あと、日頃は考えないであろう、血のつながりを振り返るきっかけになってもらえたらいいかなと。あくまでシステムで遊ばせているゲームなのでストーリーや設定で見せていく内容ではありませんが、リアルな子供ができてから遊んでみると、感覚が全然違うという感想は結構いただいたんです。もともと僕の子供が生まれたときにおばあさんがまだ元気で、おばあさんからみたらひ孫になるんだけど、顔をみたらすごく泣いていたんですよ。それを見てて、もし僕がひ孫の顔を見るとしたらだいたい99歳ごろだと思ったら、それは無理だなと。誰だって長生きはしたいけどそうそう問屋はおろさないでしょうし、なりたいものになれるわけでもない。それが世代交代を題材にしよう思ったきっかけでもあるんです。

 その上で、ネットを介しての横のつながりをリアルタイムで感じられたら面白いと思います。もともと「俺屍」は、まだまだゲームは子供の遊びという考え方が強かった時代に、大人の人が楽しめるゲームとして作ったものです。「俺屍2」でも子供の遊びというものではなく、30代40代の大人が遊んで楽しいゲームになってます。いい大人が何年もかけて作っているので、つまらないものにはそうそうなりません。大丈夫です(笑)。

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