LINEは8月21日、イベントホール「舞浜アンフィシアター」で、1年ぶりにビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2013」を開催した。来場者数は1200人を超え、多数の海外メディアも会場に駆けつけるなど、LINEへの注目度の高さを感じさせるイベントとなった。
前回のプラットフォーム構想発表から1年、LINEはどのように進化を遂げたのか。新サービスや、世界展開、株式の公開・上場など幅広いトピックについて、LINE代表取締役社長の森川亮氏と、同社執行役員の舛田淳氏に聞いた。
森川氏:予定通り進んでいるというところです。サービスによっては当初あまりうまくいっていないものもありましたが、結果的にはLINEのコミュニケーションと結びつく価値を作ることで成長につなげることができました。やはり、どれだけ多くのユーザーがいても、単にサービスを乗せただけではうまくいかなくて、LINEならではの視点でかなり改善をしました。これは、コンテンツに関してもマーケティングに関してもそうですね。ですので、今後提供していくものに関しても、ある程度方向はみえたのかなと思います。
森川氏:天気(「LINE 天気」)やセキュリティ(「LINE アンチウイルス」)といったサービスは、正直そこまで結果は出ていないですね。やはりコミュニケーションとそこまで関わりがありませんので。もちろんいろいろとやり方はあると思うのですが、そこに注力するというよりも、今はより新しいことにチャレンジしているという状況です。
森川氏:ゲーム(分社化したNHN PlayArt)についての数字は分かりませんが、会社が別れたからといって、まだ何かが生まれたわけではないので、すぐに結果に結びつくということではないですね。ただ、やはり会社名が(NHN Japanから)LINEに変わって分かりやすくなったことは大きいですね。
森川氏:そこまで驚いてはいないですね。単純な売上げの話だと、いまは日本が圧倒的に多いので、もっと海外で使ってもらえるように改善するべきだと思っています。最近は海外でウケるスタンプや現地向けのローカライズなどを進めています。
舛田氏:ニーズについてはずっと検討していまして、このタイミングでやろうと決めたのは音声通話の成長が非常に高くなってきたということですね。テキストは十分に満足していただいていて、一時は繋がりにくいと言われていた音声通話の品質も改善して、グローバルで900%を超える成長率になりました。次のステップとして、動画にチャレンジできるタイミングがきたということですね。また、グローバルでみると国を越えた動画のコミュニケーションへのニーズが非常に高いことも、いろいろな国をまわって感じまして、このタイミングで提供するに至りました。
舛田氏:複数人で利用できるものではなく1対1ですので、離れている恋人同士や家族などさまざまなシーンでお使いいただけると思います。また、我々はユーザーに「こう使ってください」と言うことはしませんので、スタンプやメッセージのように新しい使い方が生まれてくると思います。たとえば複数人で使えなくても、ビジネスミーティングで活用される可能性もあるわけです。
舛田氏:実は最初からいなかったわけではなく、皆さんが思っている以上に多くのユーザーにご利用いただいていました(笑)。また、どこかで急速に伸びたのではなく、段階的に成長していきました。
舛田氏:ユーザーへの調査結果やフィードバックをみると、日記のような使い方をしているユーザーが多いですね。自分が何をしていて、何を食べていてとか。あとは詩を書いたりしている人もいますね。
舛田氏:そうかもしれませんね。Facebookのように「いいニュースを見つけたよ」みたいな話ではないんです。どちらかというと自分事を書いている。LINEのタイムラインは狭いので、自分の知っている人たちに日記を読んでもらうといった方向性が強いですね。あとはLINE GAMEやLINE マンガのフィードなどが流れたりしています。
舛田氏:“雛鳥が最初にみたものを親だと思う”ではないですけど、最初にみたタイムラインがLINEだったというユーザーも若い方には多いので、そうすると意識することなく「これがタイムラインなんだ」ということで使っていただいている方もいます。それに、Facebookを使われている方もLINEと使い分けをしていますね。Facebookはどちらかというとオフィシャルなコメントや情報だったり、インフォメーション的なリアクションが欲しい時に。一方でLINEはプライベートな子供の写真や、飲みの誘いなどに使っているという感じですね。
舛田氏:昨年のカンファレンスで発表した際には、正直まだゲームの方向性については悩んでいました。他のプラットフォームと同じようにたくさんのゲームを出してその中で楽しんでもらう。また、開発はパートナーにすべてお任せして、そのなかでLINEのリアルグラフを使ってもらえたらいいな、くらいに考えていました。
ただ、いろいろなサービスを作る中で、LINEにとってのいいサービスと悪いサービスが分かるようになりまして、他社でやれることはいくらユーザーが多かろうとLINEではやらないことに決めました。やはりLINEの価値はコミュニケーションだよねと。ひとつのゲームをとってもそれはコミュニケーションアイテムでなければいけない。そして、ゲーム単体でもネイティブアプリとしてクオリティが高く、かつコアゲーマーだけではなく誰でも簡単に遊べなければならない。そこで、カンファレンス後に方向転換をして、「LINE POP」や「LINE バブル」を一度ロールモデルとしてグループ内で作ることにしました。それによって、我々自身もLINE GAMEの価値が分かりますし、パートナーにもこういうものをLINEが求めているんだと分かっていただけると思いました。
おかげさまで、いろいろなところで「POP、バブル」と言って遊んでいただけるようになったのですが、一部では両タイトルがヒットしたのは「LINEのキャラがいるからだよね」と言われました。キャラクタースタンプの延長線上にゲームがあるので、他のパートナーにとってはあまり可能性がないプラットフォームだと見られていたのです。しかし、スタンプのキャラクターが登場しない「LINE ウインドランナー」が1000万ダウンロードを越えて、そこから業界の見る目が変わりました。
ただ、ウィンドランナーはカカオトークでも提供されているので、今度は「そりゃ成功タイトルを持ってきたからそうだよね」と言われました。そこで出したのが「LINE ポコパン」です。無名のIPですし開発会社も大きくはありません。また、一度ポコパンのキャラクターを使ったゲームを出したのですが、正直あまりヒットはしませんでした。そこで弊社でもいろいろと反省してディスカッションして仕上げたのが(1000万ダウンロードを超えた)この第2弾です。オリジナルゲームでこの数字なので、もうあまり言い訳もないかなと(笑)。
舛田氏:いわゆる国内の有力なメーカーにも参加していただきます。また、いまは海外のデベロッパーの強化にも入っていまして、次のステージに進もうというところです。
舛田氏:今のところはありませんね。
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