NTTドコモは7月26日、2014年3月期第1四半期(4~6月期)の連結業績を発表した。同日の会見に出席したドコモ代表取締役社長の加藤薫氏は、増収減益となった決算内容に触れるとともに、大きな話題となった“ツートップ戦略”への評価や、ネットワークやコンテンツなどの競争力強化に向けた取り組みについて語った。
加藤氏によれば、ドコモのスマートフォン販売数は前年比34.4%増の335万台。総販売数の62.2%を占めるなど好調な伸びを示し、スマートフォン基盤は2050万、Xi対応スマートフォンの比率もその6割に達したという。一方で苦戦しているのが純増数の伸びだ。第1四半期は前年同期の26万6000契約から、8万7000契約と67.3%も大きく減少している。
そこで注目されるのが、夏モデル新機種のうち、「Xperia A」と「GALAXY S4」の2機種を積極的に販売する“ツートップ戦略”の成果だ。加藤氏は、Xperia Aの販売数が約110万台、GALAXY S4が約55万台に達したことを明かし、両機種ともに好調な売れ行きであると説明。また、Xperia Aはフィーチャーフォンからの乗り換えが約62%となる一方、GALAXY S4はスマートフォンからの乗り換えが約50%となっており、双方の製品の特長が出た結果と分析している。
さらに加藤氏は、ツートップ戦略がもたらした効果として、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行数が従来より23%増加したほか、フィーチャーフォンユーザーの番号ポータビリティ(MNP)によるポートアウト数が32%減少するなど、フィーチャーフォンユーザーの買い替え動向に大きな影響をもたらしたと語る。これに加えて、特定の機種をまとめて調達することによるコストの低減や、店頭でユーザーが機種を迷わず購入することによる待ち時間短縮などのメリットをもたらしたとのことだ。
一方で、期待したほどの成果につながらなかったのが、MNPによるポートアウト数の改善である。ツートップ端末の販売が本格化した6月以降、ポートアウト数は減少傾向にあるものの、ポートイン数の改善にはつながらず、流出傾向を変えるには至っていないようだ。その要因について加藤氏は「6月に入ってからポートインに対するキャッシュバックを控えたが、他社はツートップ戦略を受け、キャッシュバックを厚くしたため」と説明した。
各社がポートイン時のキャッシュバックを手厚くしたことにより、MNPで乗り換えする人ほど得になる現在の市場環境について、加藤氏は「ポートインにキャッシュバックを厚くしすぎると、市場が歪んでしまうので是正はしていきたい」と話すものの、「競争でもあるのでその時々の状況を見ながら判断するしかない」と、当面は競合他社に追従し、ポートイン施策を強化する考えだ。
ツートップ戦略がある程度の効果をもたらしたことから、加藤氏は冬商戦についても「ラインアップを20も揃えて、ということはない」と、機種数を絞る方針を示した。また、今回のツートップ戦略で大きな影響を受け、スマートフォンの開発を縮小すると報道されたメーカーが出ていることに対して、個別のメーカーについてのコメントは控えるとしながらも、「ツートップ戦略の影響だけでなく、ここ3~4年のスマートフォンシフトによる競争の結果だと考えている」と話した。
2013年度の成長戦略の進展状況についても語られた。ネットワーク面では、新たに1.7GHz帯を用いた、通信速度最大150MbpsのXiサービス提供に向けた試験運用を、7月30日から神奈川県の一部で開始することを発表。10月から東名阪で予定している、本サービス開始に向け準備を進めるとしている。
さらに6月までにXiの基地局を約3万局設置したほか、下り最大75Mbpsに対応した基地局を1万7300局設置。112.5Mbps対応のエリアも130都市に拡大している。2013年度末には、それぞれ5万局、2万5000局、150都市まで拡大する予定とのことだ。また7月11日から、世界遺産に登録された富士山でもXiのサービスを開始したことを改めて紹介。加藤氏は「山頂だけでなくすべての登山道でLTEが使えるのはドコモだけ」と強調した。
サービス面では、「dマーケット」が順調に拡大していると説明。dマーケット全体の取扱高が前年同期比3.1倍の127億円に達したほか、主要サービスの契約数も直近で「dビデオ」が455万、「dヒッツ」が140万、「dアニメストア」が92万に達するなど、高い伸びを示しているという。特にdアニメストアは、ここ最近で急速に伸びているという。
5月16日にサービスを開始した「ドコモサービスパック」は、約70日で「おすすめパック」の契約者数が110万、「安心パック」が180万に達したとしている。さらに「NOTTV」は130万契約、女性向けの健康管理サービス「カラダのキモチ」は開始50日で13万契約を獲得するなど、いずれも好調だという。これらのコンテンツやコマースなどを含めた、新たな事業領域を強化するスマートライフビジネス本部新領域事業の売上は、第1四半期で1500億円を達成。年間目標の7000億円に向け、順調に拡大を続けているとのことだ。
今後の取り組みとしては、経営体質を強化すべく構造改革をより一層推進するほか、事業改革室を経営企画室の中に発足して事業運営の抜本的な見直しを実施。営業力を強化して顧客フロントを充実させるとともに、戦略企画を本社に集結してスピードアップさせる。さらに新領域へ人材を大胆にシフトするなど、事業の整合性を取りながら時間をかけて体制を刷新していきたいとした。
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