そうしたあらゆる歴史を、Nikeは認識している。
Nikeのデジタルスポーツ担当バイスプレジデントのStefan Olander氏は、「われわれはフィットネスにとって最も有意義なプラットフォームを作ろうとしている」と語った。
それこそがFitDeckのBlack氏を引きつけたものだ。FitDeckのアプリはFuelBandと連携して、アスリートが個人目標を達成するのに役立つ、独自のFuelポイントを生成するようになっている。確かに、フィットネスモニターにはほかにも、Jawboneの「Up」や、活動量計の「Fitbit」シリーズなどがある。しかしBlack氏は、Nikeの規模と、スポーツ業界における歴史を考えれば、FuelBand向けのアプリを開発するのは当然の選択だと述べた。
Black氏はエネルギーに満ちあふれたプレゼンテーションの後で、「われわれは確かにほかの企業とも話している。しかし、これほどぴったりくるものはない」と語った。
スポーツ業界におけるそうした実績は、開発者と消費者の役に立つ存在になるために、Nikeが頼りにしているものだ。この新興市場でのNikeのライバル企業は、スタートアップか、フィットネスではなくテクノロジの専門知識を活用して事業を始めた企業のどちらかだ。
NikeのOlander氏は、消費者は「アスリートが何を必要とするかを、Nikeは分かっていると考えている。センシングテクノロジを専門とする電子機器メーカーではそれは難しい。なぜなら、同じ信頼を得ていないからだ」と語る。
同時にNikeはテクノロジプラットフォームの構築から、新しいビジネスの開発について少し違った考え方を学んでいる。同社はシューズやアパレルの分野では大企業だが、FuelBandプラットフォームのすべての部分をコントロールすることはできないことを認識している。だからこそ、Nikeが深く関与しないプラットフォーム上にチャンスがあることが、開発者に伝わるようにしているのである。
「FuelBandをNikeとNike Fuelだけのものにすると、成長させるのが難しくなる。われわれは慎重に物事を進めていきたい。FuelBandはNikeに支配されていると人々が感じてしまうのは、もっと良くない話だ」(Olander氏)
さらに重要なのは、開発者が既に、Nikeが考えたこともなかったようなFuelBandの新しい使い方を生み出すアプリを考案していることだ。今度は開発者が、そうしたアプリがなければFuelBandを購入しなかったかもしれない消費者を引き寄せている。例えば、デモデーに参加した企業であるSproutは、企業向けのアプリを作成している。このアプリは、従業員に体を鍛えることを勧めるとともに、雇用主には、健康を推進し評価するためのツールを提供する。一方ゲーム開発企業のChromaは、プレーヤーの現実世界でのアクティビティと、バーチャル世界でのアバターとを結びつける、新しいゲームを開発している。
FitCauseも、Nikeが独自には決して取り組むことがなかった領域に挑戦し、ソーシャル募金アプリを開発している。ランナーが地元のイベントで5km走って、チャリティのための募金を集めるのと同じように、FitCauseではアスリートが一定のFuelスコアに達すると、グループが資金を獲得できるようにしている。このアプリがあれば、フィットネス活動を中心に募金集めをしている人たちは、個別のイベントや場所に束縛されずにすむ。
FitCauseの共同設立者兼チーフエグゼクティブのLaura Temel氏は、「募金用のデバイスを腕につけられるようになった」と語る。
それはNikeにとって、全く新しい種類のチャンスだ。このビジネスで重要なのは、FuelBandというよりFuelプラットフォームである。またNikeが長い間専門としてきた物理的な製品ではなく、Nikeがまだ学習段階にあるデジタル製品だ。しかし、かつて大手テクノロジ企業が構築してきたプラットフォームと同様に、非常に大きな可能性があることにOlander氏は気付いている。
Olander氏はこう言った。「われわれには素晴らしいランウェイがある」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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