アップルが示した価値観--WWDCで披露した2本のビデオとそのメッセージ

Dan Farber (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2013年06月17日 07時30分

 製品発表というのは、大抵は予測通りのおぜん立てされたイベントだ。ジーンズ姿の企業幹部が、アメリカンフットボールスタジアムくらいの広さのステージを大またで歩き回り、自分たちの製品について話をする。「これはわれわれの素晴らしい新製品で、スペックはこうなっていて、今からその機能の一部をお見せしよう。市場に出ているどんな製品よりも優れていて、この価格で、こういった構成で、すぐに発売される。本当に驚くべきものだ」というように。

 Appleの幹部たちは米国時間6月10日、ステージ上を大またで歩き回る部分において、その役割をきちんとこなした。同社のWWDCに登場した幹部たちは、十分なリハーサルを積み、Steve Jobs氏のような堂々とした態度で製品紹介をし、「信じられない」とか「素晴らしい」などと自ら表現する製品を代わる代わる発表した。それは見事な出来栄えで、いくつかの素晴らしい改善が加えられた「OS X」と「iOS」、バッテリ持続時間が長くなった「MacBook Air」、そして、再設計された「Mac Pro」が登場した。

ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのCraig Federighi氏は、iOS 7をWWDC 2013で披露した。
ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントのCraig Federighi氏は、iOS 7をWWDC 2013で披露した。
提供:James Martin/CNET

 しかし、6000人以上の開発者、従業員、特別ゲスト、メディアが出席した2時間にわたる基調講演の冒頭と終わりは、慣習を破るものだった。和気あいあいとした雰囲気のイベントを前後から挟むように2本のビデオが流された。これらのビデオは、Appleの悩み多き並外れた魂をあらわにするように思えるものであり、また、同社が失速して市場シェアを失いつつあると主張する競合他社や評論家に対して、暗にメッセージを送っていたのかもしれない。

 Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏が登壇する直前には、サンフランシスコにあるモスコーンセンターウェストのホールの巨大なスクリーン上に、幾何学パターンのアニメーションや球体による心地よい音、禅の公案のようなフレーズが登場する、ミニマリズム的な白黒のビデオが流れた。このビデオで流れたのは次のようなメッセージだ。

 みんながあらゆるものを作ろうと忙しかったら...どうやって何かを完成させることができるだろうか。便利さと喜び、潤沢さと選択が混同されるようになってきた。デザインに必要なもの、それはフォーカスだ。われわれがまず問いかけるのは、人々に何を感じてほしいか、ということ。楽しみ...驚き...愛情...そしてつながり。そこからわれわれは、その思いを中心としたものづくりを始める。それには時間がかかる。1つの「イエス」が生まれるまでには、1000の「ノー」がある。われわれは完全なものを作る。われわれは何度もやり直す。われわれが手がけたもののすべてが、あらゆるユーザーの生活をよくするまで。そうして初めて、われわれは製品に署名する。「Designed by Apple in California」と。

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