KDDI研究所は5月23日、『「使いこなす」を実現するKDDIの技術開発』をテーマにした研究発表会を開催した。研究所の設備などは、写真でも紹介している。
当日はKDDI研究所代表取締役所長の中島康之氏によるKDDI研究所の紹介からスタートした。KDDIグループの研究・開発部門として各分野の研究を行い、KDDI各事業部および社外へ展開しているという。
同日に発表されたAdvanced MIMO技術の詳細や実現に向けた実験環境、現在実用化に向けて動いている各種技術について解説した。
次世代のより高速なLTE「LTE-Advanced」の実現に向けて、実験が進められているのがAdvanced MIMO技術だ。周波数利用効率を現在のLTEの約3倍にする技術という。現在KDDI研究所では、実際の電波を利用せず有線接続で実験している状況だ。
基地局側のアンテナを増やしても、受信する端末側に同じだけのアンテナがなければデータの送受信量は伸びない。基地局のアンテナは2015年頃に4本、2018年頃には8本と増える予定だが、従来は基地局にアンテナが8本あっても端末側に2本しかアンテナがないため、従来技術では2ストリームしか有効活用できない。これを、2アンテナ搭載の4端末に同時送信できるようにすることで効率化を図るのがAdvanced MIMO技術だ。
同周波数帯で異なる端末との通信を行うと、伝搬に干渉が起こる。それによって、データの一部欠落や混信等が考えられるという。これを防ぐために端末側から受信状態のフィードバックを基地局に向けて行い、端末の受信状況に合わせて送信データを分離する必要がある。このフィードバックする情報をKDDI圧縮方式により、多くの情報をコンパクトに送れる状態にしているのが特徴だという。
もう1つ、LTE-Advancedに向けた技術として紹介されたのが無線機内蔵型アンテナだ。現在はアンテナ部と無線機部が分離しており別々に設置する必要があるが、アンテナ内部に無線機の機能を収めることで設置スペースをコンパクトにし、設備費や工事費、消費電力を抑えるものだ。
従来アンテナでは一体化されている送信用と受信用のアンテナ素子を分離し、携帯電話向けの既存部品を流用することでコンパクト化に成功。従来のアンテナと同サイズに無線機の機能も集約した。省スペースに設置できることで設備費は50%、工事費は67%減。消費電力も50%減になるという。またアンテナ製造コストも従来アンテナよりは多くなるが、無線機と合わせた製造コストと考えると従来よりも抑えられるということだ。
技術的には現在のアンテナでも利用可能だが、アンテナを大量敷設することになるLTE-Advanced実用化時に生かせるものとして開発中だという。
あらゆる電波状況を再現し、実際の端末による受信状況などを確認するための施設として電波無響室も公開された。カーボンを含むウレタン製の四角錐が壁、天井、床にびっしりと張り巡らされており、内部での電波の反射を防ぐ。また外部からの電波侵入や外部への電波漏洩を防ぎ、影響の少ない環境での実験が可能だ。
中央に設置された人体ボディ「ファントム」は電波的に人間と同じ特性が持たされており、それを囲む棒の内部が実験用のエリアとなる。棒で囲まれたエリア内に屋内の電波状況などが再現される仕組みだ。
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