一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は5月22日、2013年度定例記者会見を開催し、2012年度の著作物使用料などを報告した。それによると昨年度の徴収額は、前年度比105.6%の1118億4000万円で、2007年から5年ぶりに増加に転じた。
ジャンル別にみると、演奏関連では東日本大震災の影響で2011年度に中止・延期が相次いだコンサートなどが一転して多数開催されたことから「演奏等」が195億円(同108.3%)に増加。また、フィットネスクラブやカルチャーセンターの徴収が順調に増加したことから「BGM」が4億2000万円(同101.6%)に増えた。
録音関連では、「オーディオディスク」がシングル・アルバムともヒット作に恵まれたことで155億5300万円(同108.7%)。「ビデオグラム」はアニメやテレビドラマが伸び悩む一方で、音楽ビデオが好調だったことから215億8000万円(同119.9%)と大幅に徴収額を伸ばした。
そのほか、携帯電話向けの音楽配信市場の縮小の影響や、スマートフォンユーザー向けビジネスモデルの構築が遅れた影響から「インタラクティブ配信」は77億5000万円(同88.1%)と不振に終わった。
デジタル時代における対象機器の取り扱いをめぐり最高裁から厳しい判決を下された私的録音録画補償金については、録音で7800万円(同111.8%)と数字を伸ばしたものの、裁判の争点となった録画については8200万円(同26.7%)と大幅に下落。完全地上デジタル放送化の影響を大きく受ける形となった。
JASRACの都倉俊一会長は「就任後、著作権保護期間延長と戦時加算問題、そして私的録音録画補償金という3点を大きな課題として取り組んできたが、いまのところ残念ながら大きな進展はない。しかし、アベノミクスで日本の経済がいい流れに向かう中、少しずつ動きが生まれつつある」と今後の展望を述べた。
特にTPP参加をめぐり米国から要請があった著作権保護期間延長については「(TPPに含まれることで)我々の手からは離れるが、交渉のテーブルに乗るのはありがたいこと」とした。
権利者にとって厳しい決定が下された私的録音録画補償金について、菅原瑞夫理事長は「決定を受けた上で次の展開をどうするか考えることが求められる」とコメント。その上で「補償金制度そのものが否定されているのではなく、あくまで現在の仕組みにおいて(デジタル放送専用録画機が)対象にならないということ。これまでの制度が誤っていたわけではないが、それを解消して次の展開を目指す必要があると考える」とした。
同日には、JASRACの著作権使用料の分配額が多かった作品を表彰する「JASRAC賞」も発表され、秋元康氏作詞の3作品「ヘビーローテーション」「フライングゲット」「Everyday、カチューシャ」(すべてAKB48)が金・銀・銅を独占した。秋元氏作詞作品による金・銀・銅独占は2年連続。また「ヘビーローテーション」の2年連続金賞受賞は「命くれない」(1988~1989年)、「世界に一つだけの花」(2004~2005年)に次いで3度目となる。
海外著作権管理団体からの入金が最も多かった「国際賞」は、アニメ作品「NARUTO -ナルト 疾風伝BGM」が受賞。分配額第1位の外国作品におくられる「外国作品賞」は、EXILEが中心となって進められた東日本大震災復興支援プロジェクトのテーマソング「Rising Sun」が受賞した(作曲者が外国人であったため)。
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