「iOS 7」がいつ登場するかは分からないが、1つ分かっていることがある。iOS 7がこの数年で最も大規模なiOSの刷新になるということだ。もしかすると過去最大の変更となるかもしれない。
iOSは初めからScott Forstall氏の担当だった。Forstall氏はスキュアモーフィズムの支持者だ。スキュアモーフィズムとは、現実世界の物体の外観と感触をソフトウェア設計に持ち込むデザイン哲学である。iOSのリネンのような背景、メモ、出来が悪いことで有名なポッドキャストアプリは、すべてこの哲学を具現化したものだ。
Forstall氏と、同じくこのアプローチを支持していたSteve Jobs氏のおかげで、スキュアモーフィズムは長年にわたってiOSを支配してきた。その影響によって、膨大な数のデザイナーが、ときに不合理で分かりにくく、非効率なiOSのユーザーインターフェースに苛立ちを覚えている。
しかし、そうした状況は変わりつつある。iOS担当シニアバイスプレジデントだったForstall氏は2012年、Appleの「Maps」の大失敗を受けて解任された。そして、Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏はすぐに、ハードウェアデザインの担当だったJony Ive氏をiOSとそのデザインの責任者に任命した。
Scott Forstall氏がスキュアモーフィズムの最大の支持者だったとすれば、Jony Ive氏は最大の反対者である。Ive氏はシンプルでフラットなデザインを好むことで有名だ。どちらもiOSの特徴ではない。しかし、昨今の報道が事実であるとすれば、Ive氏はiOSに自らの意向を大きく反映させようとしている。
iOS 7は、2013年6月に開催のWWDCで発表されると見られており、よりフラットで「けばけばしさを排除した」インターフェースが採用される見込みだ。非常に大規模な全面刷新となるため、AppleはiOS 7を予定通りに完成させるために、リソースを追加投入しているという。
iOS 7が「iPhone」を全く別の方向へ導くというのであれば、重要な疑問が浮上する。ユーザーはどのように反応するのだろうか。
Facebookが教えてくれたように、人気の高いユーザーインターフェースに大規模な変更を加えると、必ず論争と反対が巻き起こる。なじみのあるインターフェースを思い切って見慣れないものに変更するというIve氏の決断に、ユーザーが疑問を感じるのは間違いない。最初の反発は穏やかなものではないだろう。
だが、MySpaceはもっと重要な教訓を教えてくれた。進化しなければ死んでしまうという教訓だ。陳腐化する製品は、絶え間なく変化する製品よりも先にユーザーを失う。iOSにはさまざまな強みがあるが、陳腐化の兆しも見え始めている。Appleの株価の変動幅が縮小を続ける一方で、批判的な人の数は増加傾向にある。
Appleはメディアの評論家たちの意見に耳を貸さないし、その必要もないが、歴史には耳を傾けるべきだ。歴史は、今こそiOSを刷新して神秘性を取り戻せと告げている。幸い、AppleとJony Ive氏はそのことを分かっているようだ。
Ive氏によるiOSの再設計は、ぎりぎりのタイミングで実施されることになる。Appleが「Android」に立ち向かうためのインターフェースで、ユーザーにMapsの一件を忘れさせ、驚きを与えるチャンスは1度きりだろう。しかし、実現できる人物がいるとしたら、それはIve氏である。
iOS 7はAppleにとって転換点となるだろう。Appleは魔力を取り戻すことができるのか、それとも凋落する運命にあるのか、iOS 7によって明らかになる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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