サーバやネットワークを意識させないクラウドをグローバルで推進--NTT Comの戦略と事例

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 ガートナージャパンは4月24日~26日に東京・港区で、「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2013」を開催した。4月25日には、NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部長の田中基夫氏が「SDNを利用したキャリア・クラウドとその活用事例」との表題で講演。キャリア・クラウドの特色、Software Defined Networking(SDN)を活用した同社のクラウド、クラウドを活用した経営改革の最新事例などについて解説した。

ネットワークの柔軟性高めるSDNをサービスの中核に


NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部長 田中基夫氏

 通信事業者によるクラウドであるキャリア・クラウドの利点として、田中氏は「SI事業者などと異なり、ネットワークをベースとしたグローバル展開ができ、ネットワークをできるだけ意識させないサービスや価格設定を志向している。オープン技術の採用を中心としており、ハードウェアやアプリケーションに対して中立だといえる。また、一元的なサポート力があり、24時間365日の多言語サポートを提供できる」と話す。

 SDNは、ソフトウェアによりネットワークを定義する手法であり、ネットワーク構成の変更などが容易で、稼働までに必要となる時間が短縮される。同社の基本的構想ではデータセンター内、あるいは相互間にSDN技術を導入、サーバ仮想化技術とも連携し、サーバとネットワークリソースを柔軟にコントロールする。ポータルを通じ、仮想サーバのほか、ファイアウォール、ロードバランサなどのICTリソースを柔軟にコントロールすることが可能になる。

 たとえば、国内のデータセンターに重要なデータを置き、海外のデータセンターでバックアップし、両者間のネットワーク帯域が通常は10Mbpsであるというような場合、通信量が突然、急激に大きく増大したときには、帯域幅を500Mbpsまで拡張することが可能だという。その分は、拡張する時間に応じ、追加料金が発生する。また、SDN技術により、既存システムのIPアドレスを変更せずに、クラウド環境へマイグレーションすることが可能な新サービスも提供される。オンプレミスサーバのIPアドレスと同一のアドレスのまま、クラウドへ移行できる。

SDNによるデータセンター間のネットワークリソース連携
SDNによるデータセンター間のネットワークリソース連携

 さらに今後、SDNによるクラウドとVPN連携ができるサービスも検討している。クラウドとVPNを自動的に接続し、SDNコントローラが、クラウドのテナントをVPNと対応付けることができる。サーバのネットワークだけでなく、WAN拠点間の設定も制御可能なサービスが想定されており「年内にも試験サービスができる」(田中氏)見通しだ。

SDNによるクラウド、VPN連携
SDNによるクラウド、VPN連携

オンプレミスからの転換でサーバと拠点を集約

 同社は、世界各地9カ国11カ所にグローバル拠点を設置しており、これを活かしたグローバルサービスを用意している。グローバルフェデレーション機能では、グローバルに分散したクラウド環境の一元管理が可能となり、「拠点のデータは各地でいわばバラバラになっているため、データベース間でリンクをとり連携させる」(同)。東京のデータセンターのバックアップが海外にある場合、これらのクラウドは、単一ポータル画面上で、異なるタブとして表示されるという。

 グローバルキャリア・クラウドの活用事例では、製造業の例が紹介された。A社の場合、1700台規模のサーバを原則としてクラウドに移行させ、CAD、制御系関連の約30%は移行せず、ネットワークはグローバルでサービスを1社に統合、クラウドへの全面移行で2016年までに年間ITコストの30%以上の削減を目指した。改革後、サーバ数は500台に、システム設置拠点数は180カ所から50カ所に統合された。

 B社の場合は、2018年までに情報システムの80%以上をクラウドに移行、第1段階の移行計画で、約16億円のコスト抑制を見込んでいた。ファイルサーバ、販売・物流、生産管理はクラウドへ移行させ、設計、制御・設備のサーバの一部はローカルに残し、ネットワークは、WAN回線は原則として増速を実施せず、WAN高速化装置の導入でレスポンスを確保するというもの。クラウドに移行後、サーバ数は1400台が約200~250台に、システムは各拠点に設置していたが、NTTコミュニケーションズのデータセンターへの集約を進め、8カ所になった。

 現在の海外売上比率がすでに90%を超えているC社の例では、グローバル事業をいっそう拡大するためにクラウドを活用することを考え、新興国など未開拓市場への進出、現地での開発を強化するなどした。グローバルでシームレスなBCPを強化し、2015年にグローバルシステム、2018年にすべてのシステムをクラウドに移行させることを目指した。ここでは、サーバ数は670台が10台になった。

経営層と各部門・現地の温度差を解消

 グローバルクラウドを導入する際の課題として、田中氏は「経営幹部と、事業部門、現地との温度差」を指摘、「幹部はクラウドに積極的だが、たとえばIT部門は自分たちの仕事がなくなるのではとの懸念から反発することがあり、現地の幹部もクラウドなど不要との態度を示すことがある。IT部門は実際のビジネスに結びつく仕事をするべきであり、そうでない仕事をクラウド化すればよいと当社では考えている。重要なのは、経営層と部門、現地が十分なコミュニケーションをとること」と語る。

 田中氏は「キャリア・クラウドはグローバルに面的な展開をしていけることが強みだ。経営のグローバル化をクラウドにより支援していきたい。ネットワークとデータセンターを一体化させ、SDNを活用し、サーバやネットワークを意識させないクラウドを推進する」としている。

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