ガートナージャパンは、4月24日から26日、「テクノロジ革新のとき:備え、実践を開始せよ」をテーマに「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2013」を東京・港区で開催した。モバイル、クラウドコンピューティング、ビッグデータなどがもたらすイノベーションは、新しい価値を創造することが期待されており、このサミットでは、企業がこれらの新たな技術を活用するために必要となるインフラ戦略について、さまざまな論考が示された。
開会初日の講演には、NTTコミュニケーションズ 経営企画部 サービス戦略担当 担当部長の金井俊夫氏が登壇。「NTTコミュニケーションズのグローバルクラウドビジョン」との表題で、「グローバルトータルICTアウトソーシング」を実現する主なサービスの特長を具体例を交え紹介した。
バブル崩壊後長くに渡った厳しい経済環境の下、企業は市場環境の変化に直面し、様々な課題を抱えてきた。既存事業の見直しや新規事業拡大、M&Aなどを通じたグローバル展開、天災やサイバー攻撃など多様なリスクへの対応など、その範囲は多岐にわたる。金井氏は「これらの経営改革のためにはICT改革が不可欠であり、NTTコミュニケーションズは、グローバルトータルICTアウトソーシングの提供により、顧客の経営改革に貢献していきたい」と強調し、オンプレミスが中心である日本企業のシステム基盤を、クラウド中心へ移行する意義を説く。
クラウドを活用したアウトソーシングの一例としては、グローバルに事業を進めている、ある製造業の事例を紹介。1700台あったサーバを500台に、180カ所にあったシステム設置拠点を50カ所にまで統合、ICTコストは34%削減されたという。金井氏は「クラウド化を進展させれば、当然、ネットワークサービスが不可欠だが、当社は、ここで長い間培ったノウハウをもっており、これらを活用することで顧客が競争力を強化し、増収増益になるよう支援していきたい」と話す。
同社のクラウドサービスの中核となるデータセンターは2012年3月には、125拠点/13.6万平方メートルだったが、1年後には138拠点/15.8万平方メートルになっている。2013年4月以降はさらに増加し、拠点は144か所、面積は17.7万平方メートルを超える見通しだ。
データセンターの拡充はワールドワイドに進めている。国内には91拠点/49都市。アジア太平洋地域では19拠点/11都市、中国・香港では9拠点/4都市、米州では7拠点/6都市を数える。欧州は12拠点/8都市だ。2013年4月以降も東京、香港、英国、マレーシアなどに順次新設し、上海やタイにも計画中だ。香港ファイナンシャルデータセンターの場合、予約段階でほぼ完売したという。
クラウドサービスのグローバル化も進展中だ。拠点は欧州、米州に2カ所、アジア太平洋地域に7カ所を設けている。軸となるのは仮想化技術であり、仮想ネットワークでは、煩雑なネットワークの構成、機器設定、変更など作業が自動化され、迅速に使用できるほか、国内外データセンター間でのバックアップが実現できるなどの利点がある。
仮想ネットワークサービスの「Bizホスティング Enterprise Cloud」ではカスタマーポータルを用意しており、経営情報、設定情報、パフォーマンスなどが見える化されるとともに、仮想サーバ作成、リソースの割り当て、ネットワークアプライアンスや仮想ネットワークの設定・変更などがオンデマンドで実行できる。また、同社が160カ国/地域で展開する「Arcstar Universal One」では、各国のクラウドと無料で接続できるという。
この領域での技術はさらに進化しており、同社独自開発のネットワークコントローラなどにより、2013年第3四半期には、仮想ネットワーク技術でさらにクラウドとネットワークの接続までを含め、カスタマーポータル経由で自動化することを実現する見通しだ。
顧客のクラウド移行を支援する策として、同社は「クラウドマイグレーションサービス」を提供している。コンサルティングを通じ、移行計画を策定し、標準化された移行メニューが示される。また、SI事業者との連携で、個別的な移行にも対応できる。このサービスは約70人のクラウドマイグレーション専門チームが担っている。マイグレーションでは、仮想ネットワークを用いて、既存システムのIPアドレスを変更せずに、クラウドへのマイグレーションが可能となる新サービスを2013年夏頃に提供する予定だ。
セキュリティ面では、独自開発の新セキュリティ運用基盤を整えるとともに、専門分析官による運用監視体制を確立しており、サイバー攻撃などのリスクを最小化することを図っている。新セキュリティ運用基盤は2013年4月から運用開始されており、セキュリティについてのイベント、サーバ、パソコン、モバイル機器などから集められるログの自動分析と判定を高速で低コストに実施できるという。また、危機管理の拠点である「グローバルリスクオペレーションセンター」では、一次窓口対応(Level1)から、専門分析官によるセキュリティ運用監視(Level3)まで、約200人の体制でグローバルに展開している。
グローバル運用管理サービスでは、顧客のICT環境に対し、グローバルレベルで一元的に、ITIL準拠の運用管理を実現しており、顧客のICT部門の業務を一括でアウトソースすることが可能だ。同センターでは、近年のグローバル化による需要に応え、グローバルで標準化された、運用監視や自動化ツール類を用意し、24時間365日の運用・監視・保守の体制を整えている。
金井氏は、同社が擁する幅広いサービスを紹介したが「最適なサービスを提供するには、コンサルティング企業との連携、個別業務アプリケーションの開発ではSIerなど、多くのパートナーと連携することも必要になる。NTTグループ全体でいえば、すべて『自前』も可能だが、我々はできるだけ多様なパートナーと手を組んでいこうと考えている。グローバルトータルICTアウトソーシングで、顧客の経営改革に貢献していきたい」と述べ、講演を終えた。
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