「Fab」「Make」--デジタルが加速するものづくりムーブメント - (page 2)

 ものづくりのプロセスがデジタル化されたことで、オンラインのものづくり系サービスが次々に生まれている。その1つ「instructables」は、ものづくりの“レシピ共有サイト”だ。ユーザーが自由にアップロードしたレシピの内容は、靴のソールの貼り替え方法から、電動式の乗り物の作り方までさまざま。ユーザーは、ものづくりプロジェクトのリーダーとなり、他のユーザーから寄せられた質問に答えたり、改良のためのアイデアをもらったりする。レシピを共有するだけでなく、ものづくりに関する巨大なオンラインコミュニティの役割も果たしているのだ。

 デジタル工作機械が使える場所も続々と生まれてきている。会員制ジムのようなワークショップスペース「TechShop」や、オンライン出力サービスとして「東京リスマチック」や「Inter Culture」など、多様なサービスが登場している。

  • 東京・渋谷にあるデジタルものづくりカフェ「FabCafe」。レーザーカッターの周りには、今日も多くの人が集まる

 もしあなたが気軽に新しいものづくりムーブメントを体験してみたいと思うのならば、東京:渋谷の「FabCafe」を訪れてみるといい。筆者も設立から関わっているが、Fabの面白さを楽しく、分かりやすく体験してもらうために毎週イベントを開催している。たとえば2月のバレンタインデーに向けては、マカロンにレーザーカッターでデザインをする自分の顔型のチョコレートを作るといったイベントも開催した。ここでプロジェクトを一緒にはじめる仲間に出会えるかもしれない。

「誰もがMakerに」デザイナーが生産手段を手にすることで拡がるビジネス機会

  • 「ものづくり革命」は中小工場とのコラボレーションの可能性を秘めている。(写真はFabCafeやケイズデザインラボに技術協力した食品容器試作工場のWorkCAM)

 ものづくりのアイデアがオンラインとオフラインコミュニティの中で揉まれ、洗練された先には「プロダクトビジネス」が展開できる可能性がある。自宅のデスクトップや街中のスペースで手軽に利用できるデジタル工作機械と、より高精度の工業用途のデジタル工作機械は仕様的にもシームレスに繋がっているからだ。

 「ケイズデザインラボ」のような、デジタルものづくり支援サービスを提供しているプロフェッショナルの存在も大きい。これからは、デザイナーが自ら実験や試作をして、プロフェッショナルのアドバイスを受け、日本各地の都市に存在する中小工場のネットワークをプロダクトの生産拠点として活用していくこともできるだろう。生産手段を手にした若手デザイナーたちが、Makerとなって次のイノベーションを生み出していくことが期待される。

◇筆者紹介
岩岡孝太郎(いわおか こうたろう)
千葉大学卒業後、建築設計事務所に入社し個人住宅や集合住宅の設計を担当。その後、慶應義塾大学大学院に進学しデジタルものづくりの研究制作に従事。FabLab Japanの活動に創設メンバーとして参加。2011年、クリエイティブな制作環境とカフェをひとつにする"FabCafe"構想を持ってロフトワークに入社。FabCafeではディレクターとしてクリエイティブなアイデアを形にするサービスや企画を担当している。その他に、東京芸術大学芸術情報センターにて非常勤講師を担当。

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