現在のライフログデバイスのビジネスの中心は、デバイスそのものの売上が中心だ。これらの種類のデバイスの価格を見ると、100ドルから200ドルのものが多く、デバイスそのものでのビジネスを展開しようとしていることがわかる。
確かに、バッテリやディスプレイ、加速度センサ、無線機能などを防水デバイスに収めるとなると、コストがかかることは明らかで、市場の立ち上がりでこれを無料で大量に配布する企業が出てこないことも頷ける。慎重にエンジニアリングをしても、例えばUPを開発したJawboneは、2011年発売の初期バージョンを動作不良から返金として、デバイス製造の大規模な見直しを余儀なくされるなど、難しさを垣間見せた。
一方でデバイスの汎用化や皆が持っているデバイス上でアプリによって同等の機能を実現するサービスの登場は、こうしたデバイス販売によるビジネスが長くは続かないことを示唆する。そこで考えられるのが月額課金のサービスだ。
生活習慣や行動に関する様々なデータを加速度センサで認識してアプリ等で可視化してくれるが、こうしたデータを元にしたエクササイズや生活改善のアドバイスを個別に行うサービスや、より詳細なデータを自分のデータに取り込むためのサービスなどを提供し、毎月のサービス使用料を課金するというモデルである。
fitbitは年額4980円で「Fitbitプレミアム」を提供しており、12週間のフィットネスプランをトレーナーが作ってくれたり、データの詳細分析や血糖データの入力などを提供している。プレミアムサービスとしてfitbitが提供するもののなかにはUPがアプリで無料で提供するものもあるが、こうしたサービス競争とブランド独自の価値の模索が今後も続いていくことになるだろう。
またデバイスでのビジネスを行っている企業にとっては、汎用ウェアラブルデバイスの登場や普及までに、こうした分析やサービスでのビジネス成立を目指すという時間の制限がついている。サービスの統廃合や買収などが2013年後半から活発化するのではないだろうか。
fitbitプレミアムのウェブページには、取得・採集したデータがユーザーのものであることが明記され、プレミアムサービスの機能として、データのダウンロードが利用できるようになる。
UPでも、非公式ながらデータのダウンロードの方法がウェブサイトで紹介されており、NikeはAPIを公開して、Fuelbandが取得するデータなどを活用したアプリ開発が可能になっている。「取得したデータ」の活用方法の一部がユーザーやサードパーティーのアプリによって行えるようになっている点は注目すべきだ。
行動全てをトラッキングしているため、プライバシーをどのように守るか、と言う問題は当然議論の対象になっていくことになる。しかし生のデータを受け取ったところで、たいした活用ができないのも事実だ。どんな目的で、どんなデータ分析をかけるのか。こういったデータ活用のアイデアは、デバイス販売の企業が他の開発者やユーザーを巻き込みながら、量産されていくことになるだろう。
またユーザーも、これまで目にすることがなかったデータを閲覧できるようになるという面白さが一段落して、このデータをどの様に活用し、対話していくのかを位置づけていかなければならない。まずは1カ月間、睡眠や1日の歩数などの目標を決めて、それを達成できる生活を手に入れ、継続するというサイクルを1度経験してみると良いだろう。
もちろんこうしたデータは、天気予報の降水確率を見て傘を持つ、持たないと同じように、普段の行動を変化させる材料になる。変化前、変化後にどうなったかを意識することはもちろんだが、あまりデータにこだわってストレスを感じないような、上手いつきあい方を模索していく必要があるだろう。
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