Tim Cook氏はなかなかのものだ。同氏は甘い言葉を駆使してヒョウの斑点をうまく変え(「ヒョウは自分の斑点を変えられない(自分の本質や性格を変えることはできない)」ということわざがある)、ヒョウの方は、思いがけなく与えられた新しい黄金色の毛皮が素晴らしいことをとても誇らしく感じているというのだから。
それはつまり、米国時間4月23日の第2四半期決算報告直後にAppleはアナリストとの電話会議を行い、そこでCook氏は、何の悩みもない最高経営責任者(CEO)であることを印象付けたということだ。Cook氏は「自信にあふれて」いたし、「喜んで」いた。そしてもちろん「興奮して」いた。
Cook氏は、Appleの業績について一生懸命に話し続けていた。
「われわれはもっと速く成長したいと思っている。しかし、それがわれわれの状態を示す唯一の指標だとは思っていない」(Cook氏)
Cook氏はよくやったと思う。筆者がCook氏の立場だったら、話題を変えたくなっただろう。なぜなら、世界のほかの人々は、第2四半期にAppleの純利益は18%減少し、粗利益率は4期連続で減少したことを知っているからだ。売り上げは11%増加したが、それはAppleの成長の鈍化を示す証拠がすっかりそろっていることに比べれば重要ではない。さらには、Appleの第3四半期売上予測はがっかりさせられるものだったが、経営陣は「素晴らしい新機能とパイプラインの能力」について、あいまいな約束をするばかりだ。
明るい展望とは到底言えない状況ではあるが、こうしたことの一部は、Cook氏のコントロールがまったく及ばないところにある。2010年と2011年にさかのぼると、Appleは常に業績予測を上回っていた。同社には、驚くべき製品を生み出す素晴らしいパイプラインもあった。しかし、出力全開で成長してきた年月が終わった今、Appleはもはや特別なケースではないし、その製品のリズムは、より職人的ではあるが、驚くべきものとはいえない。
では、何が起こっているのだろうか。深刻な競争が新たに生じるなかで、Appleは、自らが受け継いできた驚くべきイノベーションの遺産には打ち勝つことができない。Felix Salmon氏は優れた記事を投稿し、Appleが大数の法則の新たな犠牲者になった理由について、そして今回の決算報告が示すAppleの変化、つまり「モンスター級の将来性が評価できる高成長ハイテク株」から、単なる「株主のポケットに大金を注ぎ込むことのできる、もうかるビジネス」への本格的な移行について説明している。
それが悪いわけではないが(テレビ番組「となりのサインフェルド」で有名な台詞だ)、時計の針を戻す唯一の方法は、世界をもう一度再発明することだ。では「iPhone」「iPod」「iMac」「iPad」の次には何が来るのだろうか。「iTV」だろうか、それとも「iWatch」だろうか。Appleがあらゆる驚きのもととなる製品を秘密にしているのでない限り、同社の製品が競争の上で優れていることを消費者に納得させるには、マーケティングに頼らないわけにはいかない。そして、それこそCook氏が質疑応答の際にしたことだ。
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