ベンチャーキャピタルのB Dash Venturesは4月22日から23日にかけて、福岡にて招待制イベント「B Dash Camp 2013 Spring in Fukuoka」を開催している。国内外約350人の起業家、投資家が集まる会場で最初のセッションに登壇したのは、LINE 代表取締役社長の森川亮氏だ。
LINEでは、LINEのほか、検索や各種サービスを提供するNAVER、ポータルサイトのliverdoorの3つの事業を展開している。LINEのユーザーは現在日本で4500万人、タイで1700万人、台湾で1500万人、スペインでも1000万人となっている。「地域によって異なるが、日本以外でも伸びている。世界のインフラになりたいというのが僕らのビジョンだ」(森川氏)
4月に公開されたばかりの電子書籍サービス「LINEマンガ」も好調。日本のみのサービス展開だが、「ある程度の規模で伸びてきている」(森川氏)という。またゲームに関しては月に4タイトル程度を公開。現時点で一気にリリースし、売上を拡大を図るのではなく、まずはユーザーの裾野を広げるという戦略をとっているという。ゲームはすでに累計1億ダウンロードされている。
また世界では、韓国NHNと合弁会社LINE PLUSを設立。そのほかスペインでテレビCMも展開しユーザー数を伸ばしている。さらにノキアとの提携で新興国へのリーチも進めている。
その後森川氏は、B Dash Ventures シニアインベストメントマネージャーの西田隆一氏の質問に回答する形でLINEの今後について語った。ここからは質疑形式でその内容を紹介する。
西田氏:もともとLINEは韓国の子会社としてスタートした。LINEは日本主導だと思うが、日本でLINE株式会社を作った意味について教えて欲しい。韓国との違いをどう出すのか。
森川氏:もともと国ごとにサービスをローカライズしていく戦略。サービスレイヤーではもともと別だった。欧米の会社と戦って勝つには、より地域にフォーカスしないといけない。ただ、(これまでの)NHN Japanという社名からはサービスをイメージしにくい。LINEがグローバルに出る中で埋もれてしまう。
それとは別でプラットフォームとゲームを分割するということがあって名前を変えた。マネジメント面では大きく変わりないが、そのあたりを明確化した。
西田氏:「日本でLINEのサービスが始まった」とうたってきたが、一部ではディシジョンしているのは韓国側とも聞いた。実際のオペレーション体制はどうなっているのか。
森川氏:何を持って韓国、日本というのかは難しい。(日本法人には)日本人もいれば韓国人もいるが、所属は日本だ。また最近では、中国人も米国人もいる。「日本人」が、というと語弊があるかもしれないが、「日本法人」として意思決定している。
西田氏:グローバル戦略ではLINE PLUSを設立した。台湾、タイ、スペインなどでもユーザーが伸びているが、各国に現地法人を作るといったことは考えているのか。
森川氏:(Kakao Corporationの)Sirgooさんも(イベントに)参加しているし詳細は話せないが、オフィスは具体的には設けておらず、国境をまたいで臨機応変に対応している。今はそれでいいのかな、と思っている。あえて法人やオフィスを置くより、火がついた場所にパッと行く、という柔軟性を持たせている。
西田氏:北米やアジアで(提供するサービスで)ヒットを飛ばした人は居ると思うが、それ以降スケールできている人が見当たらない。一方でLINEは成功した。具体的に何をしたからヒットしたのか。
森川氏:運も良かったと思う。結果論になるが、「考えすぎなかった」と言うことが良かったのではないか。日本人はどうしても工夫する。工夫すればするほど複雑になるのでないか。
僕らは最初スタンプや通話もなくメッセンジャーとしてリリースして、それで一気に伸びた。それはおそらく「分かりやすかった」から。あとはサービスを使うためのプロセス。早く登録できる、メッセージ送るまで3ステップでいいといったことなど。それは世界で普遍性のあるものだ。
スマートフォンってごちゃごちゃするより単機能の方が、一般的なリテラシーの人には使いやすいと思う。
西田氏:2012年7月にオープン化すると発表したが、ふたを開けてみるとかなり慎重にやっている。ゲームのラインアップも一気に増やすのではないし、付随のサービスも自前が多い。これはどういうポリシーのもとに運営しているのか。
森川氏:LINEみたいなシンプルなサービスは比較的簡単に作れる。ありふれているからこそブランドを作るのが大事。ではブランドって何かというと、「ユーザーとの約束」だ。
約束というのは、便利で楽しいコミュニケーションができる、リッチなサービス体験ができる、ということ。
そうなると、僕らが選別した——セレクトショップのような——ものがある意味ブランド作りになる。「何でも自由に使って下さい」ではなく、「選ばれたものを使って下さい」というのが1つのブランド。僕たちらしさという意味でそこにこだわるべき。
僕たちが考えるいいもの、ユーザーの方が求めるものであれば(歓迎する)。女性が多いと複雑なものはダメだし、ゲームでは難しすぎる、お金がものすごくかかる、他者と差がつきすぎるというのはみんながいいと言わない。
西田氏:ゲーム、コミックなどのサービスをやっているが、今後やりたいのはどんなものか。
森川氏:今はコンテンツ、サービスに加えてマーケティングも強化している。「LINE@」は中小向けの集客ツール。Googleの検索連動広告などのように、新しいプラットフォームになる。
ここで、西田氏は会場から質問を求め、それに森川氏が回答した。
会場:プラットフォームのドキュメントは英語になっているのか。
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