ヤフーが2月に公開したiPhone向けの母子手帳アプリ「kazoc」が好調だ。2月21日にサービスを公開してすぐメディカル部門で1位を獲得。現在(4月19日時点)でも2位と、ランキング上位をキープしている。
サービス名に「Yahoo!」の名を付けることなくスタートしたkazoc。このサービスはソフトバンクがグループ社員を対象に実施している新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」から生まれたものだという。
「健康分野でログを取りたい。PHR(パーソナルヘルスレコード)の事業をやりたいと考えていた」――kazocを手掛けるヤフー メディアサービスカンパニー企画本部企画3部の太田智之氏はサービス提供の経緯についてこのように語る。もともと病院や健康の情報を提供する「Yahoo!ヘルスケア」のプロデューサーだった太田氏。PHR事業を検討する中で、ログ、記録を付け続けるのには「子を思う親心」に勝る動機はないと考え、子供に軸を置いたサービスを企画したという。
「自分の体重については、頑張って3カ月記録をつけて止まるかも知れないが、子供の記録は週1回ずつでもずっと残す。私も2人の子供がいるが、家族の会話は子供中心。子供が生まれたばかりの夫婦だけでなく、妊娠が分かった夫婦にとっても記録は最高のモノになるだろう」(太田氏)
そしてアイデアをソフトバンクイノベンチャーに提出。日本のアニメやフィギュアなどのジャパンカルチャーの画像を共有するサイト「WONDER!」に次ぐ、同制度2つめのサービスとしてリリースすることが決まった。「ソフトバンクには『情報革命で人々を幸せに』という理念がある。ではどこを、誰を幸せにするかと考えたとき、浮かんだのは『家族』だった」(太田氏)
kazocは、妊娠時には写真と母親の体重、腹囲などを、出産後には子供の写真や頭囲、胸囲などを記録し、タイムライン形式で家族と共有できる。また、予防接種のチェックリストも備えるほか、「首が据わる」「おもちゃ遊び」「はいはい」など、子供の“初めての○○”の瞬間を撮影し、一覧できる「はじめてアルバム」といった機能を提供する。
写真は子供の父親と母親、祖父母や親戚などとのみ共有できるようになっている。共有したい家族には、アプリ上からサービスの招待メールを送ることができる。「意識しているのはPathやBetweetといったサービス。だがコミュニケーション領域にはすでに大きなサービスが存在している。そこを『家族ならでは』という切り口で(勝負できるか)考えていく。ただ、現状は思い出と成長のログサービスだ」(太田氏)
アプリは公開から1.5カ月で約2万ダウンロード。ユーザーは30代の女性、20代の女性が中心だ。25%のユーザーが妊娠中からサービスを利用しているという。また、週間でのアクティブ率は50%になるという。「年間の出生数は約100万人。ニッチな層を囲い込むという意味では、サービスを開始したばかりではあるが、いい線をいっている」(太田氏)。また、これまでヤフーのサービスでは取れなかった0歳児からのユーザーを持っているため、「将来的にはID戦略に貢献できるのではないか」(太田氏)と期待を寄せる。
すでに写真容量の拡張については有料で提供しているが、本格的なマネタイズについては今後進めていく。属性情報を元にした広告をはじめ、ECとの連携、アップロードした写真をもとにしたフォトブック事業などを計画中だという。「現在提供している予防接種同様、出産準備のチェックリストを提供し、それをECとつなげるといったことも考えられる」(開発を担当するヤフー CMO室の須山温人氏)
また、今夏をめどにAndroid版アプリの提供も開始する予定。また、現在リンク集として提供しているYahoo!の育児関連サービスについても、連携を強化していくという。
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