Imagine Cup日本大会、4年以上かけて開発したゲームのフレームワークが優勝

 日本マイクロソフトは4月7日、学生技術コンテスト「Imagine Cup 2013」の日本大会を開催した。Imagine Cupは、2003年より毎年開催されている世界規模の技術大会。7月には、ロシアのサンクトペテルブルグにて第11回目の世界大会が開催される。

 これまでのImagine Cupでは、「ソフトウェアデザイン」や「ゲームデザイン」、そして過去には「組み込み開発」といった競技部門が存在していたが、長年に渡って同大会で最も注目されていたソフトウェアデザイン部門の名称は消え、カテゴリーがすべて刷新された。新たなカテゴリーとして設けられたのは、「Game」「Innovation」「World Citizenship」の3つだ。ただし、世界大会ではそれぞれのカテゴリーごとに優勝チームが決まるものの、日本大会ではすべてのカテゴリーの中から1チームのみ選出され世界大会に挑むことになる。

長年の開発期間と実績のある作品が日本代表に

 日本大会の競技部門ファイナリスト6チームの中からサンクトペテルブルグ行きのチケットを勝ち取ったのは、京都コンピュータ学院のチーム「Project N」だ。

 Project Nは、Innovationカテゴリーの作品として、汎用ゲームフレームワークおよびライブラリの「Knowall Library 5.0」を発表した。「5.0」というバージョンがついていることからもわかるように、この作品はリーダーの米山哲平さんが4年以上かけて開発、バージョンアップを重ねてきたものだ。米山さんがこの作品のために書いたコードは7万行以上。すでにいくつかのゲーム開発プロジェクトのベースとして稼働させた経験もあるという。

 Knowall Libraryは、2Dおよび3Dゲームのいずれにも対応するゲームエンジンだ。「ゲームエンジンを使えば、誰でもゲームが作れるようになる。デザイナーが実際のゲーム画面でどのように見えるのか確認することも容易だ」と米山さんは話す。「多くの人にゲーム作りの楽しさを伝えたい」という米山さんは、Knowall Libraryでの起業も視野に入れているという。

 プレゼンテーションを担当したのは、マレーシア出身のChester Lee Chin Zhenさん。世界大会でも英語のプレゼンテーションを担当する。トロフィーを手にし、「マレーシア出身で日本代表になるのは不思議な気分だが、日本のためにがんばりたい」と笑顔を見せた。

  • Project Nの作品Knowall Library 5.0

 米山さんによると、同作品の技術力の高さはこれまでにも認められており、2012年のImagine Cupへの出場も勧められたという。しかし、「その段階で作っていたものはImagine Cupの競技部門には合わず、出場を見送った」と米山さん。今回新設されたInnovationカテゴリーは作品に合致するとして、出場を決めたとしている。

 審査員を務めたマイクロソフトデベロップメントの代表取締役社長、加治佐俊一氏は、「Project Nの作品は抜き出でていた。開発期間やアイデア、これまでの蓄積、そして起業したいという考えまで含め、すでに別の次元にいる。Imagine Cupのこれまでの世界大会では見たことのないようなツールだが、理解してもらえると良い結果が出るのではないか」と絶賛した。

 米山さんは、世界大会までの数カ月の間に「Knowall Libraryをベースとした作品を作ることでプレゼンテーションをより良くしたい」と、世界大会に向けた意気込みを語った。

Gameカテゴリーが中心となった日本大会

 競技部門のファイナリストとして戦った他の5チームは、専門学校HAL東京の「NFKey」、トライデントコンピュータ専門学校の「Clear Voice」、太田情報商科専門学校の「KRAD」、専門学校HAL大阪の「チームでやんぞ」、専門学校HAL名古屋の「flower_shooter」だ。このうちNFKeyはInnovationカテゴリーに、残り4チームはGameカテゴリーにエントリーした。

 NFKeyは、NFC端末とWindows8タブレットを活用し、車のドアを開閉するとともに、ログや現在位置を管理するソリューション「NFKey」を提案した。緊急災害時に被災車両を移動する際や、カーシェアリングで車両を管理する際に活用できるという。

 Clear Voiceは、母親とはぐれてしまったキャラクターPafffyを母親の元に連れて行くゲーム「Pafffy」を披露。Pafffyは、音声とタッチ操作に反応して動くようになっており、声を出すことでスッキリした気分になれるゲームだという。

 KRADの作品は、Kinectを使ったレースゲーム「トイチェッカー」だ。おもちゃを車に見立てたカーレースで、ひよこ、ハムスター、列車、車の4台を用意。それぞれのおもちゃの特性によってスピードや機能が異なり、プレーヤーは体を動かしながらおもちゃを前に進めていく。

 チームでやんぞの作品も同じくKinectを使ったゲームで、その名は「ぬけがみ」だ。陰の世界で道に迷う天使を救うというシナリオになっており、プレーヤーは自分の体を動かすことで陰の世界と光の世界をつなぐ道を作り出し、天使を導いていく。

 flower_shooterは、枯れ果てた大地に草花を敷き詰めていくゲーム「EnchantFlower」を披露した。妖精が空を飛び回ることで、草花が次々と誕生する。制限時間内にできるだけたくさんの草花を咲かせるというシンプルなゲームだが、グラフィックとデザインに力を入れている。

 これら5チームは、日本大会では敗れたものの、オンラインで直接世界大会の予選に応募することも可能なため、まだ世界大会に参戦するチャンスがなくなったわけではない。2012年にゲームデザイン部門の世界大会に出場したバンタンゲームアカデミーのチーム「Esperanza」も、日本大会では惜しくも敗れたが、オンライン選考で予選を勝ち抜き、世界大会に出場している。

日本独自の「Windows 8チャレンジ部門」も開催

 今回の日本大会では、日本独自の部門として「Windows 8チャレンジ部門」が設けられた。これは日本でのみ開催される競技部門で、優勝チームが世界大会に出場するわけではないが、Windowsプラットフォームの開発者を育成する目的で設けられた。

 同部門のファイナリストとして選ばれたのは4チーム。木更津工業高等専門学校の「青リンゴ」、文教大学の「k.shima07」、長野工業高等専門学校の「Cheer Group for OSS」、鳥羽商船高等専門学校の「BOTEKO」だ。この中から、「New War's」というタッチ操作による対戦ゲームを披露した青リンゴが最優秀賞に選ばれた。


日本代表として世界大会に出場する京都コンピュータ学院のチームProject N。写真中央が米山哲平さん、右側がChester Lee Chin Zhenさん。左側は審査員の加治佐俊一氏

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