率直に言って、自分の頭に穴があくことを望んでいないのと同じくらい、われわれは新しいバージョンのAndroidを望んではいない。それはなぜか。既に十分な数のAndroidバージョンがあるからだ。サムスンは同社のAndroid携帯電話に「TouchWiz」を搭載し、HTCは「Sense」(ほぼ間違いなく、同種のものの中で最もできがいい)を採用し、Motorolaは現在、不快さがはるかに軽減されたバージョンの「MOTOBLUR」を採用している。われわれはこれらのバージョンを全面的に好んでいるわけではないが、それらを受け入れるようになった。少なくとも、それぞれのバージョンはハードウェアメーカー独自のものだ。もしTouchWizが搭載されていれば、それはHTCやソニーが製造したデバイスではなく、サムスンのデバイスだということが分かる。
しかしFacebook固有のAndroidバージョンが登場したら、事態はいっそう複雑になるだろう。現在のAndroid市場において、そのバージョンがうまく溶け込める場所はどこにあるのだろうか。謎に包まれたそのHTC携帯電話には、FacebookのソフトウェアとSenseの両方が搭載されるのだろうか。それともSenseは完全に置き換えられてしまうのだろうか。正直なところ、筆者はそれを考えるだけで頭痛がする。われわれは標準のAndroidしか存在しない、ミニマリストのMies van der Rohe氏の世界に住んでいる、と筆者は主張しているのではない(実際のところ、Androidをすべて同じにすることは同OSの真の精神に反する)。しかし、選択肢が多すぎるのは必ずしも良いことではない。
筆者は、FacebookのAndroidバージョンが同OSのアップデートサイクルに影響を及ぼすのではないかという懸念も抱いている(心配しないでほしい、Android断片化の議論を新たに始めようとしているわけではない)。Androidのカスタムバージョンがアップデートプロセスを大幅に遅らせているかどうかについては、さまざまな議論が交わされているが、それらがアップデートプロセスに影響を及ぼしていることについては反論の余地はないだろう。例えば開発コード名「Jelly Bean」のバージョンのAndroidが公開された後、メーカー各社はそれが自分たちのデバイスで適切に動作することを確認しなければならなかった。Facebookバージョンが登場したら、同様に複雑さが増すのではないかと筆者は考えている。そして、もし携帯電話にFacebookのAndroidとTouchWizの両方が搭載されたら、大変な混乱状態が発生するかもしれない。
より多くのことをより効率的に実行できるようにすることがテクノロジの本質だというのは、筆者も理解している。だがわれわれは本当に、Facebookが今よりもさらに中心に来ることを必要とするほど、同ソーシャルネットワークのコンテンツを強く求めるようになってしまったのだろうか。それは違う。われわれは既にAndroidアプリで、ウォールへの投稿、コメント、イベントへの招待などのプッシュ通知を受け取っている。ときにはうまく機能しないこともあるかもしれないが、そのオプションは存在する。それを考えると、これ以上に何が必要なのだろうか。あなたの気の利いた近況アップデートにコメントが付いたときに電気ショックで知らせてくれる携帯電話だろうか。われわれの自己肯定感はFacebook上での生活とそれほど強固に結びつけられてしまったのだろうか。それともわれわれが怠け者だというだけのことだろうか。
チャットやメッセージング、イベントなどのFacebook製品へのアクセスをなぜ改善する必要があるのかも筆者には分からない。これは筆者だけなのかもしれないが、筆者は携帯電話では今後もFacebookチャットではなく、テキストメッセージを送信するだろう。また、ほかに選択肢がない場合を除いて、今後もFacebookメッセージではなく、電子メールを利用するだろう。Facebookのイベントへの招待についてはどうだろうか。勘弁してほしい。それらの招待は忘れ去られる定めにある。しかし何よりも、ホーム画面を見るたびに携帯電話から「今どんな気持ち?」と尋ねられたら、ひどく腹立たしいことだろう。
筆者はBilton氏とRaphel氏が正しいと考えているが、今週、筆者の携帯電話でFacebookの存在感が増すのではなく、改善されたAndroidアプリが発表されることを期待している。シンプルなAndroidウィジェットだけで素晴らしい。完全なAndroidバージョンは過剰だろう。Facebookと同社のサービスは既に十分に多くの方法で提供されている。Facebookは筆者の携帯電話の大きな部分を占めている。筆者のPCにも存在し、タブレットにも埋め込まれている。本当にこれ以上、何が必要なのだろうか。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス