○○というアプリにこの招待IDで登録すればポイントがもらえます――1年ほど前、App Storeに並ぶランキング上位アプリのレビューがこのような「ユーザー招待」のメッセージで埋め尽くされるという事態が起こった。
これらのメッセージの発端となったのは、いわゆる懸賞アプリやポイントアプリ。懸賞サイトやポイントサイトのリワード広告(広告費の一部をユーザーに還元する広告)と同様に、広告主のサービスに登録したり、商品を購入したりすることでポイントを獲得し、たまったポイントを商品券などと交換できる仕組みのアプリだ(なお、厳密には懸賞アプリはポイントをもとに抽選で商品券などが当たるもの、ポイントアプリは一定のポイントをためることで、必ず商品券などがもらえるものを指すが、本稿では懸賞アプリと統一している)。
そしてこれらの懸賞アプリが「友人をアプリに招待することでポイントを付与する」という施策を打っていたために、本来のレビューと関係のないユーザー招待メッセージがあふれかえったというわけだ。
しかしその騒動も、2012年末には一段落した。アップルは、「App Storeをはじめとして、アプリに関する質問には一切回答しない」(アップルジャパン)という姿勢を貫いているため、この騒動に対して、何らかの対応や措置をとったかどうかは正式にはわからない。だが複数の業界関係者が語ったところによると、アプリ提供会社は、招待IDによるポイント付与を中止したり、アプリのレビューへの投稿に関しても招待IDを書き込まないようにアナウンスしたりする施策をとったという。また、アップル側も招待IDによるポイント付与を続けていた一部アプリに関してはガイドラインに違反しているとして、アプリをリジェクト(削除)したとされている。
招待ID騒動でもっとも有名だった懸賞アプリの1つ「アドラッテ」(当時は韓国AppDiscoとハロが運営。現在はAppDisco Japanとグリーが運営)などは、現在App Store上でアプリの説明として、「他アプリのレビューにアドラッテのIDを記載し、招待を募る行為を禁止いたします。発見した場合は警告の上、IDを削除させていただく場合があります」と表記するに至っている。
実際にどういった規制を敷いたのかアップルは語らないが、こういった懸賞アプリがApp Storeに少なからず影響を与えているのは事実。それがアプリの「ブースト」だ。
懸賞サイトといえば、ウェブサービスの会員になったり、クレジットカードの申込みをしたりすればポイントを付与するというリワード広告が一般的だ。だが懸賞アプリとなると、「このアプリをダウンロードすればポイント付与」「このアプリについてレビューを書き込むとポイント付与」といった広告を出稿できる。これによって、新作アプリなどを一気に人気アプリランキングの上位に持ってくる(ブーストする)ことができるのだ。
リワード広告自体はウェブ広告として決して新しいものではない。だが、App Storeはウェブではなく、閉じた世界だ。使い方によってはリワード広告が与える影響は少なくない。こうした行為や手法でランキングに影響が出ることに違和感や不公平感を持つユーザーもいるだろう。ランキングやレビューに対する信頼感が低くなれば、アプリの普及や市場としての成長にも影響が出る可能性もある。
もちろん一気にランキング上位になったアプリが、継続的に上位をキープできるかはそのアプリ自体の魅力に依存するところだ。事実、懸賞アプリが続々と登場したことで、そのブースト効果は下がっており、「CPI(Cost per Install)も1年で三分の一程度になっている」(業界関係者)という声もある。
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