ヤフーは11月29日、ネットにおける優れたクリエイティブ作品や広告作品を表彰する「Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード2012」の受賞作品を発表した。
2012年は初めてスマートデバイス(スマートフォン、タブレット)に特化したアワードとなっており、多数の応募作品の中から、一般の部では声と文字によって色の名前を覚えられる子供向けの知育アプリ「いろぴこ」が、企業の部ではTVCMとスマートフォンを連動させた「mixi XmasインタラクティブCM ~ 小さなサンタクロース」が、それぞれグランプリを受賞した。
イベント後、ヤフーの執行役員でYahoo! JAPANクリエイティブアワードの主幹・マーケティングソリューションカンパニー カンパニー長を務める志立正嗣氏と、アイデア部門を審査したヤフー CMOの村上臣氏に、アワードの感想やスマホでのクリエイティブ表現の可能性について聞いた。
村上氏:今回は完全にスマートデバイスに絞ったので、応募者が集まるのか不安でしたが、予想以上にいい作品がたくさん集まって、なかなか面白いイベントになったと思います。
志立氏:「mixi XmasインタラクティブCM」(TVCMの最後にオブジェクトを引っ張る小人が登場し、モバイル端末上で小人を手伝うとスペシャルアイテムがもらえるCM連動企画)ですね。テクノロジーもさることながら、とにかくアイデアがすばらしかった。ああいうものをヤフーでもやりたいですし、僕らの媒体を使っていただきながら顧客に提供できるような、(クリエイティブアワードを)チャレンジの場にもっとしたいと刺激を受けました。
村上氏:僕は「KiSS」(スマホを重ね合わせた時間を記録することで、2人だけの時間を大切にしてもらうことを目的にしたカップル向けアプリ)ですね。スマートフォンはいろいろなコミュニケーションを可能にしましたが、その反面、誰かと一緒にいてもお互いスマホの画面ばかり見てしまうような、ある種の寂しさみたいなものを感じるというのは課題だと思うんです。
そこをうまくポジティブな方向に持っていった課題への取り組み方もいいですし、やはり何かが伸びるタイミングにはカウンターカルチャーが盛り上がると思うんです。そういう意味で、あえてスマートフォンを使わないという点に着眼したことを高く評価したいですね。
志立氏:PCだとマウスでクリックしたりキーボードで打ったりと、非常にロジカルなインターフェースだったのが、スマートフォンになって一気に触り心地や気持ちよさという表現に代わりました。単純に綺麗とか使い勝手がいいという話ではなく、ものすごく感覚や感性に近いというか、クリエイティブの深さや、可能性を秘めているんだなと。まだまだ創世記ですから、よりビッグなアイデアを持っている方がどんどん出てくるんだろうなと感じます。PCではこの興奮はありませんでしたね。
村上氏:たくさんの応募がありましたが、「これはもっとやれるだろう」というアイデアが結構ありました。志立が言ったような感覚的なものを実装に落とすというのは、ものすごく難しいんですよ。裏付けとして、凄いテクノロジーやコーディング、デザインが三位一体になっていないとその気持ちよさは生まれない。
なのでスマートデバイスになって、クリエイターのハードルはとても上がったと思います。昔みたいにFlashでリッチにして派手な音を出すみたいな世界ではなく、本当にすべてを作り込んでいかなくてはいけなくなった。今回の応募作品を見ると、そのあたりの完成度がまだまだ低い作品も多かったので、これからが楽しみですし課題でもあると思います。
志立氏:今回スマートデバイスにフォーカスしようと思ったのは、現在のスマートフォン広告がとても気持ちいいとは思えなかったからなんです。やはりスマートフォンが持っているポテンシャルからしたら、もっと面白いことができると感じていました。またPCについても、ダウンサイジングになるのではなくて、まったく違う表現としての広告はどうあるべきか、媒体側の意識をガラっと変えなければいけないと思っていて、ヤフーとしてもぜひチャレンジしていきたいですね。
村上氏:すでにiPhoneが発売されてから4年が経つのですが、いまだにHTMLの枠から抜け出せない部分があります。アプリは結構いいものも出てきているのですが、やはりまだまだ感性に訴えかけるものは少ないかなと。私たちは「広告はコンテンツ」だといつも言っているのですが、そのコンテンツと一体化した高いクリエイティブの広告を、ユーザーの感覚が満足するレベルにできるかが、まさに2013年のテーマなのではないかと思います。
そして、スマートデバイスではタッチ画面になるので、キーボードやマウスだった世界から、みんな「ぬるぬる」(より滑らかな動きや表現)しはじめる、いわゆる“擬音”の世界ですよね。「ぺろん」とめくれたり、「ぬるん」と動いたり、広告全体をコンテンツにすることで、気持ちよさを体験させるというビッグチャレンジが来年のテーマになると思います。
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