クリエイターの才覚

「ユーザーとの距離感を楽しめる人」--ドワンゴのクリエイター採用基準

 この連載では、企業の技術者採用担当者とそこで活躍するウェブクリエイターへの取材を通じて、優秀なクリエイターを企業がどう惹きつけるか、またビジネスで必要とされるクリエイターとはどのような人物なのかを明らかにしていく。

 第7回は動画コミュニケーションサービス「ニコニコ動画」でおなじみのドワンゴ。今回は、ニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部 第三企画開発部部長の溝口浩二氏、ニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部 第三企画開発部の松前健太郎氏、コーポレート本部 人事部 人材開発セクションマネージャの井元翔大氏の3名に話を聞いた。


左から、ドワンゴ ニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部 第三企画開発部部長の溝口浩二氏、ニコニコ事業統括本部 プラットフォーム事業本部 第三企画開発部の松前健太郎氏、コーポレート本部 人事部 人材開発セクションマネージャの井元翔大氏

新しいもの好きなユーザーに対応すべく採用を強化

 ドワンゴの従業員数は約1000名。このうちの約3割がエンジニアやデザイナーなどのクリエイター職だ。同社のクリエイター採用ペースはここ数年で倍以上に伸びているという。


「注力している事業はブロマガ」と溝口氏

 その背景にはサービスの拡大がある。10月24日には集英社など出版社124社と提携し、電子書籍の有料配信を開始した。集英社の「ONE PIECE」や小学館の「名探偵コナン」など、人気の漫画や写真集など3万冊以上を提供している。

 もうひとつが、ブログやメルマガなどの記事コンテンツを配信するニコニコチャンネルの新機能「ブロマガ」だ。「まだユーザーは少ないにもかかわらず、すでに収益が成り立っている。また、趣味や片手間で動画を作っているクリエイターの支援もできている」と溝口氏が語るように、同社がいま注力しているプロジェクトだ。

 デバイスの多様性もクリエイター採用の強化につながっているという。「niconico」には新しいもの好きのユーザーが多いため、Windows 8搭載PCやタブレット端末など、最新のデバイスなどにはいち早く対応する必要があるそうだ。

SIerから転身したクリエイターが語る開発現場


ニコニコ動画のiPhoneアプリを担当した松前氏

 松前氏は2009年6月にドワンゴに入社した。前職は大手SIerで技術支援・研究開発の業務に携わり、プログラミング言語はJAVAを使用していた。当時は趣味でiPhoneアプリを開発しており、本職では作れないような音楽系アプリやお絵かきアプリ、ネタアプリなどをリリースしていたという。

 そのうち、アプリ開発の趣味が高じて「仕事でBtoCのサービスを開発してみたい」と思うようになった。またSIerの仕事内容との相性に疑問を感じはじめていたこともあり、自身もユーザーだったニコニコ動画を運営するドワンゴに転職。ニコニコ動画のiPhoneアプリ開発を担当することになった。

 入社後の印象について松前氏は「研究室みたい」と表現する。分からないことがあれば他のメンバーに聞いたり、作ったデモをお互いに見せ合ったり、とにかく作ることが好きな人が多いそうだ。また、社内のクリエイターの技術レベルについては「ウェブ業界で有名な人が多く、レベルは高い」(松前氏)という。

優秀な人は「最終面接からスタート」

 現在では技術の会社というイメージのあるドワンゴだが、創業当時は着メロサイトの運営などが中心だったことから「他社など技術系のコミュニティとの付き合いはほとんどなかった」と溝口氏は振り返る。状況が変化したのは2007年にニコニコ動画を開始してから。ドワンゴの社員が技術系のコミュニティに参加するようになり、同社を志望するエンジニアも増えていった。


ドワンゴならではの採用フローについて語る井元氏

 ドワンゴのクリエイター採用プロセスは、書類選考と面接という一般的な内容なのだが、井元氏によると新卒採用では「技術アピール枠」という特別枠を設けているという。「プログラミングの課題を提出してもらって、優秀だった人は最終面接スタートということもある」(井元氏)そうだが、2013年の新卒採用では、なんと内定者の3分の1がいきなり最終面接だったそうだ。

 これから採用していきたいクリエイター像について、井元氏は「自分で作ることが好きな人を採っていきたい。変化が激しい会社なのでそれを楽しめることも大切。またニコニコ動画は、ユーザーからたくさん辛辣なコメントをもらうこともあれば、良い機能が追加されたときには嬉しい声をかけてもらえることもある。そんなユーザーとの距離の近さを楽しめる人がいい」と語る。

 また溝口氏は「ポテンシャルが大事。3年後も常にキャッチアップして、走り続けているかどうかを想像する」と語り、成長の見込みがあると判断すれば、たとえ開発が未経験でも積極的に採用していきたいとした。

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