この連載では、企業の技術者採用担当者とそこで活躍するウェブクリエイターへの取材を通じて、優秀なクリエイターを企業がどう惹きつけるか、またビジネスで必要とされるクリエイターとはどのような人物なのかを明らかにしていく。
第6回はメディアでその名前を聞かない日はないNHN Japan。今回は、執行役員 HR担当を務める落合紀貴氏と、執行役員ならびにCTOを務める池邉智洋氏、ゲーム開発を担当する2人のエンジニア、そしてLINEの開発を担当するエンジニアに話を聞いた。
NHN Japanは全社員約1000名のうち約4割がクリエイターとなっている。その採用プロセスはシンプルだ。ゲーム開発、ウェブサービス開発ともにエンジニアについては、書類選考を経て、開発の現場で働くエンジニアによる面接がある。面接では、アルゴリズムやデータ構造などの基礎的なプログラミング能力のテストを筆記で行うこともあるそう。その後、室長・マネジャークラスとの面接を通過すると、人事・社長面接というフローだ。
いずれの就職希望者もこのフローを通るが、社員紹介が採用選考受験のきっかけとなる場合が少なくなく、「いい人と巡り会えた経験も(一般応募よりも)多い」と落合氏はいう。これは決して社員紹介だから採用されやすいということではなく、開発言語に紐づくコミュニティなどで知り合うので、自然と技術力が高い人と出会いやすくなるということだ。
これまで本連載を通じて各企業の技術者採用担当者の話を聞いてきたが、このような技術系コミュニティを通じて巡り合うという話が頻出する。たしかに採用する側からすると、コミュニティに関与することで、クリエイターのアウトプットを通じてスキルレベルも測りやすいという面があるのかもしれない。
ハンゲームをメインに運営するゲーム本部の松本カルロス健司氏、小林将樹氏も社員紹介がきっかけでNHN Japanの採用選考を受験した。松本氏は元々フリーランスのエンジニアとして活動していた。そのころ同社に勤めていた友人が、オープンソースのプログラミング言語Pythonを使いこなせるエンジニアを探しており、松本氏に声がかかったという経緯だ。
松本氏はその2~3カ月後に正社員になり、Facebookゲームアプリのハンゲームプラットフォームへの移植に携わった。現在は主にハンゲームサービスのバックエンドの開発をメインで担当している。一方の小林氏は、そんな松本氏からの紹介で同社の採用選考を受験することになった。
職場の雰囲気について「下から上に提案をあげることがよくある」と松本氏。たとえば「モンスターをコレクションするのではなく、カードをコレクションするほうがいいんじゃないですか」など、ゲームの企画部分に関しても、組織内でフラットな議論がなされているそうだ。「年代が若い方が多いので、仕事中もオフも交流がある」と小林氏。2人の明るい表情から、開発現場の自由闊達な雰囲気が伝わってきた。
一方、LINEを含むウェブサービス系のエンジニアに求められるのは「わりと基本のスキル」(池邉氏)だという。規模は大きいが、特別難しい課題があるわけではないため、堅実に規模の大きさに対応できるスキルが求められる。採用時のペーパーテストや面接でも基本を重視するそうだ。
また、LINEチャンネルは少人数のチームで開発を進めており、開発と企画との間で調整に立つメンバーがひとりいる。この担当者は、サービスローンチまでのスケジュールや事業計画を設計しなければならない。開発者については、プログラムを書き続ければよいというわけではなく、事業として見た場合に求められる開発速度とクオリティの設定を適切に理解できることが求められるという。
さらに等級がミドルより上になると、自身の仕事の課題をどこに置いているのか、ということが重要になってくるそうだ。新卒の場合、問題なく動くプログラムを書くことがまず課題となる。これが、ある程度等級が上がるとプログラミングは目的ではなくなる。
サービスを提供するということは、ユーザーを集めて収益化することがゴール。そのことを認識し開発できるようになると、おのずと優先すべきこと、すべきでないことが理解できるようになる。そういった要件定義について、企画側と一緒に考えられる人を池邉氏は求めているという。
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