3月に「ソーシャルゲームの利用環境向上楼に関する連絡協議会(6社連絡協議会)」を設置したNHN Japan、グリー、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー(DeNA)、ドワンゴ、ミクシィのソーシャルゲームプラットフォーム事業者6社。
5月、6月にかけてコンプリートガチャやリアルマネートレード(RMT)に関するガイドラインを策定したのち、新団体の設立に向けて7月より9月末まで一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)や有識者らを含めて会合を続けてきた。そして11月8日には「一般社団法人ソーシャルゲーム協会(JASGA)」を発足。同日に第1回の理事会を開催したのち、記者発表会を開催した。だがその発表会は、具体的な取り組みをアピールする一方で、参加者間の関係に疑問を覚えるものとなった。
JASGAには6社協議会のメンバーのほか、CESA,一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)、ソーシャルゲーム提供会社やソーシャルゲーム関連事業者46社が参加する。グリー代表取締役社長の田中良和氏とDeNA代表取締役社長の守安功氏がそれぞれ共同会長・代表理事に就任した。これまでJASGA設立に向けた準備委員会で座長を務めた一橋大学名誉教授の堀部政男氏が諮問委員会の委員長を務める。団体予算は年間1億円程度を見込む。
今後は、JASGA内に委員会を設置し、(1)ソーシャルゲームに関する自主規制、(2)青少年等に対する啓発活動、(3)カスタマーサポート(CS)品質向上のための活動――を進める。委員会の事務局長には慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の中村伊知哉氏が就任する。同協会ではソーシャルゲームについて厳密な定義をしていないが「いわゆるSNS上のゲームというとらえ方」(中村氏)とのことで、その定義の必要性についても今後議論していくという。
自主規制については、JASGAに参加するプラットフォーム事業者が中心となり、自社プラットフォームに提供されるソーシャルゲームの審査やパトロールを実施するほか、ユーザーからの情報提供を元に調査や対応などを実施する。さらにランダムにサンプルを取ってパトロールなども行っていく。各種ガイドラインに関しても、6社連絡協議会で策定したものをベースにして、あらたに12月にも策定、発表していくという。RMTに関しては、「命令する立場ではないので、要請や相談になるがアクションを取っていく」(中村氏)という。
また啓発活動では、ホームページやリーフレットを通じての情報発信からイベントへの参加、有識者によるシンポジウムの開催などを予定する。CS品質向上に向けては、相談や情報を共有するほか、総務省や経産省をはじめとした官庁や関連団体とも連絡していく。
発表会では、ソーシャルゲームで収益性を追うことと自主規制は相反するのではないかとの質問が挙がったが、中村氏は「相反するように見えて一体なモノではないか。さまざまなエンターテインメント業界が歩んできた道。国際的に活躍するためにきちんとしなければならないことの基盤固めをしていく」と反論。田中氏も「より分かりやすく健全にすることで、最終的には業界が大きくなってくる」とした。
今後は11月中にも事務所やウェブサイトを立ち上げ、12月中には前述のガイドラインの策定などを実施。2013年1~2月には審査やパトロールを開始し、リーフレットを作成。さらに3月以降には情報提供の受付業務を開始する。将来的にはAppleやGoogleといった海外の事業者を含めた話し合いも検討している。
ここ数カ月にわたって、業界内ではソーシャルゲーム開発会社が独自に業界団体を作る、もしくは既存の業界団体に参画するのではないかという話題もあったが、最終的に開発会社、プラットフォーマー、他のゲーム関連団体がそろった形での船出を迎えた。業界健全化に向けて積極的な姿勢が語られた発表会となったが、一方では参加者の間に溝があるのではないかと疑わざるを得ない場面もあった。
発表会に登壇したのはグリーの田中氏のほか、中村氏、堀部氏の3名。当初登壇を予定しており、会場で配布された資料にも名前のあったDeNAの守安氏は「諸事情により欠席」とのアナウンスがあった。
また、グリーは会見が始まる16時直前にヤフーとの提携を発表している。通常企業の各種発表は10時、15時といったきりのよいタイミングで行われるのが一般的であり、15時45分頃の発表ということ自体が珍しい。業界内の足並みをそろえる発表会とほぼ同時刻に自社案件を発表したことに違和感を覚える業界関係者の声もある。
グリーとDeNAがライバル関係で争う中で足並みがそろうのかといった質問が挙がった際には、中村氏が「事務局が汗をかいていかないといけないところ。有識者の諮問委員会を作ってそこでも相談していく。ただ、数十分前まで理事会で議論をしていたが、普段のビジネスの場面で競合、切磋琢磨があっても具体的な連携策を採っていこうとしている」と取り組みに対する積極な姿勢を語った。しかし、その“数十分前の理事会”まで出席していたはずの守安氏が発表会に出席できなかった具体的な理由について、ついに説明がなかった。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」